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トランプのアメリカに投資しても大丈夫か その8 トランプ劇場、はじまり、はじまりーー

2017年01月28日 | トランプのアメリカ

  トランプの理不尽な政策や矛盾に満ちた政策にいちいち腹を立てたり、理不尽ぶりを指摘したりしても意味はない、と私は思っています。メディアにはそうした批判があふれています。

  これまで「NATOは時代遅れだ」とさんざん言っていたにもかかわらず、メイ首相ときのう「両国はNATOへの確固たる関与を再確認した」そうです。こんなことをいちいち目くじら立ててフォローするより、我々はトランプ劇場を徹底的に楽しもうではありませんか。面白いですよ、そういう目で見ると。

  私の注目点は、今後いったい彼は「何につまずくか」そして、「いつつまずくか」です。この観点から観劇すると、これぞ本場のブロードウェイ、いや影響力から言えばワールドワイド・トランプ大劇場です。

  言いたい放題を言っていると、必ずいつかは彼を支える支持者を失うことになります。ただしこの場合の支持者から、トランプのツイッターに酔いしれている一般大衆を除きます。そうした人々のマインドコントロールは簡単には解けませんので。


  そのトランプ大劇場ですが、特に最近はメディアとの対決が面白い。第一幕は首席報道官スパイサーでした。彼は最初の出番であまりにもあからさまなウソをついたためメディアから批判され、次の出番であっさりと「今後はウソを申しません」とトランプのスタッフとしては珍しくも謝罪しました。もっともその後はまた強気に戻り、メディアと対決姿勢を強めています。

第二幕は、スティーブン・バノン首席戦略官です。そんな役職あったっけ、ですって。トランプが彼のために設けた特別席です。

彼のこと、みなさん覚えていますか。もう一人の隠れゴールドマンです。トランプの当選後、11月の中旬に「オルト・ライト」の旗手として非常に危険な思想の持ち主がトランプの首席戦略官・上級顧問に就任した、と私はみなさんに紹介しました。

  その彼が初めて公に発言しました。その内容は、

「メディアは黙ってろ!」

英語では、 MEDIA SHOULD “KEEP ITS MOUTH SHUT”

    大統領の首席戦略官がメディアに発言をやめろと暴言を吐いたのです。

   この男に関して11月に私が引用したロイター記事を、再度引用します。

「次期米大統領が首席戦略官・上級顧問に選挙戦で最高責任者を務めたスティーブンバノン氏を起用したことをめぐり、民主党だけでなく身内の共和党からも右翼扇動者の政権幹部入りだとして非難する声が相次いだ。バノン氏は過去にゴールドマン・サックスに勤務、保守派ニュースサイトを立ち上げた経歴を持つ。同サイトをめぐってはバノン氏が先陣を切って「白人至上主義」、「反ユダヤ主義」、「緩い新ナチズム主義的なグループ」へと導いたといった批判が挙がっている」。

  さすが危険人物。遂に本性を現しました。メディアがこの発言にどう対抗するか。また民主党議員や心ある共和党議員が、どう始末をつけるのか、高みの見物といきましょう。

  トランプ大劇場の第三幕は対メキシコ戦争です。「壁を作り、払いはメキシコだ」と言い続けるトランプに、メキシコ大統領は「会談はキャンセルする」と通告しました。

  それに対してトランプは「会合はやめると合意された」と、事実を曲げてアナウンス。CNNが言うには、人からキャンセルされる屈辱に耐えられないトランプらしい苦しい表現、です。そして昨日電話会談が行われましたが、「今後は非公開で話し合う」とのみ発表があり、どんな話し合いだったかも明かされていません。明かさないということは、相当激烈な議論があったと想像されます。

  方や壁を作られた上にコストを払えと言われ、怒り心頭。方や選挙運動の最初の公約で、お互い引くに引けない。合意などできるとは全く思えません。

  一方、相変わらず日本への非難も続いています。昨年11月のサンケイニュースから、古くからのトランプと日本のかかわりに関する部分を引用します。

引用

トランプ米次期大統領が、最も日本と関わりが深かった時期は、1980年代後半から90年代初めだ。トランプ氏は実業家として事業を拡大する一方、投資の失敗などで多額な負債を抱え、バブル活況に沸いた日本に対し、敵対心をあらわにしていた。

 「何十年にもわたって日本や他の国々は、米国を利用してきた。日本は、巨額の防衛費支出という障害を負うことなく、活気ある経済をつくった」。トランプ氏が87年9月にニューヨーク・タイムズなど有力3紙に出した意見広告。約30年後の大統領選でも同様の主張を繰り返し、トランプ氏の「日本たたき」の原点ともいえる。

引用終わり

  これがトランプの日本叩きの原点ですが、なぜそこまで叩くのか。それが恨みを晴らさないと気が済まない、サイコパスのサイコパスたるゆえんです。80年代後半、バブル絶頂期の日本はトランプの地元ニューヨークの不動産を泥足で踏み荒らしていたのです。それが本当の恨みの原点で、なんとしても徹底的にリベンジしないと気が済まない。

  前回「彼の政策はオバマへの意趣返しだ」というのと同じで、日本たたきとは日本への意趣返しです。そして80年代は日本車がアメリカ市場を席巻したため、日本車を叩き潰した、あの時代ですから、日本車叩きも意趣返しです。

  トランプに日米の自動車輸出入の真の姿、つまり「日本はアメリカ車の関税はゼロなのに、アメリカは日本の普通車に2.5%、ピックアップトラックには25%も関税をかけている」というようなことを、いくら説明しても無駄です。意趣返しだけが彼の目的なのですから。

  彼は憎たらしい日本車メーカーが、アメリカの誇るビッグスリーにいつのまにか匹敵、あるいは凌駕するほどにまで成長したのがどうしても許せません。そして日本でアメリカ車が売れないのは邪魔しているからだといちゃもんをつける。そのうち「日本の狭い道をアメリカ車が通れるように広くしないのは、非関税障壁だ」と言うでしょう(笑)。

   こうしたことはTPPのメリット・デメリットの説明も同じ。いくら安倍首相が説明しようが、サイコパスのトランプにとって、「そんなのかんけーねー」のです。日米の貿易額をバランスさせるか、あるいはアメリカの輸出額が大きくなるまで、つまり意趣返しを完膚なきまでに遂行しない限り、終わらないのです。

   なので、「彼の政策の矛盾を突け」とか、「そのうち彼の周りの歴代IQ最高値の閣僚連中が説得するだろう」とか期待しても無駄です。

   ヒラリーの得票数が自分への得票数を上回っていたことがどうしても許せない。「インチキだ!」。それもまた討論会でヒラリーに徹底的に負けまくった意趣返しです。自分が討論で負けたのは、きっと生まれてこの方初めてで、しかも3連敗ですから。

  そうしてみていると、本当に可愛いトランプちゃんに見えてきませんか(笑)。

  

  なのでひたすら「何につまずくか」、「いつつまずくか」を当てっこして楽しみましょう。

  みなさんも当てっこに参加して楽しみませんか。毎日あの苦虫をかみつぶしたような顔を見せられ、彼の言うことにいちいち腹を立てるより、よほどストレス解消になりますよ!

  トランプバロメーター;支持する 36%  前回比▲4%

以上

  私は明日から3度目のスキーで八方尾根に行きます。きまぐれな天気が心配ですが、「寒くなれ」などと言うと、ひんしゅくを買いそうなので、黙って出かけることにします(笑)。そう、スキーヤーには暖かさが敵なのです。すみません。

コメント (10)
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