前回のシリーズ記事で私は、「金利高は商品相場から見ると、溜まっていたマグマが噴出した分もありそうだ」と申し上げました。一方で今回の金利高はドル高、中でも円安を誘発しています。ということは、実はこの円安も米国金利を媒介にして、同様なマグマだまりがあったため、大きく噴出した面があるかもしれません。
では、そもそもこの大きな動きを誘発したトランプラリーが、いったいいつまで、あるいは相場で言えばどのくらいのレベルまで続くのかを、当たるも八卦でトランプ占いしてみましょう。
先週、大学時代のクラス会がありました。一人ずつ近況報告をするのですが、私は今年の春、チャリティー・イベントで来日したゲーリー・プレーヤーの通訳をしたことを報告しました。するとある同級生がわざわざ私の隣に席を移してきて、ゴルフで私にからんできました。春になったら「オマエと勝負しよう」というのです。
クラス会ではゴルフの会も春と秋に行っているのですが、平日のため現役の彼は参加したことがなく、私は一緒にプレーをしたことがありません。ゴルフ好きの彼は、私のゴルフが気になってしかたないらしいのです。彼からの挑戦に私は「喜んで受けて立つよ」と応えたら、彼は臆面もなく「ハンディを10よこせ」とくるではありませんか。しかも「オレは負ける勝負はしない。お互いのオフィシャル・ハンディ差どおりで勝負しよう」言うのです。
通常はハンディ差を7掛けして勝負するのですが、それじゃ負けそうだからヤダとごねるので、しぶしぶ承諾。決闘はなんと来年4月29日(土)、場所は利根の河原、ではなく、大利根カントリークラブに決まりました。相手も場所も申し分ありません。
しかし何故そんなに先なのか。私が冬の間ゴルフをしないこともあるのですが、いまだに現役の彼は接待ゴルフが多く年中ゴルフをやりっぱなしで、なんと手帳を見るとそこまでの週末はすべてゴルフで埋まっているのです。そこでしかたなく連休になったのです。
そして何故名門大利根カントリークラブなのかと申しますと、決闘の立会人を申し出たクラスメートが、折角なのでいいところを取るよ、とアレンジしてくれることになり、彼の知り合いのクラブになったのです。そうしているうちに立会人の数がどんどん増えて、遂に2組でやろうということになってしまいました。しかし来年の連休までゴルフが毎週入っているとは、さすが巨大金融機関の現役会長さんです。来年の連休には決闘の結果をみなさんに報告いたします(笑)。
話を戻します。ゴルフの話が終わると会長さんとの話は、「トランプ大統領でいったいアメリカはどうなるか」の話に移りました。その中で特に真剣に議論したのが「トランプラリーはいつまで続くか」だったのです。私と彼とは、春頃には終わるだろうとの見通しで一致しました。一般に言われているとおりですが、なにせ影響力のあるお方の発言なので、あまり深くはご披露できませんが、私の意見とおよそのところで一致した部分をご紹介します。
株価はざっくりとダウ2万ドル前後、金利は3%程度、ドル円は120円程度。これらは当然オーバーシュートもあるでしょうが、行き過ぎたら戻る。そして彼はドル円レートについては、戻りがあっても115円を大きく下回ることはないだろうとも言っていました。
トランプラリーの大元であるアメリカの株価を数字で見ておきましょう。どう見てもスピード違反には違いないので、どこかでスローダウンするとみています。S&P500社の予想PERを指標として見ると、現状で17倍を超えています。過去にさかのぼるとITバブル時代、例外的に20倍台後半にまで達してはいますが、今回のラリーは政策期待ラリーであり、ITバブルのように将来の業績期待が著しく上向いたものでないため、そこまではいかないだろうと思われます。
では、ここからあとどのくらい上昇を見ておくのか。
実は16年のアメリカ企業の業績はおしなべて利益成長がスローダウンしています。それもあって17年は予想収益が上向きやすく、2桁増益になるというのがコンセンサス予想です。原油高や賃金上昇・減税による消費増期待が企業収益を押し上げます。しかし金利上昇が住宅投資と自動車販売の頭を抑えるとみています。
先ほど予想PERが17倍を超えていると申し上げましたが、それはこの2ケタ増益をすでに織り込んでいます。そしてついでにトランプ期待も織り込んだとみられます。
トランプ政策で直接企業収益にメリットがあるのは、法人税減税です。現状35%の税率を15%にしようというのがトランプですが、今後議会との駆け引きの中でとてもそこまではいかないだろうというのがコンセンサス見通しです。しかも減税は一気にではなく段階を踏む可能性が大きいのです。そこで減税率は10%ずつ2回、最終的には25%まで下げるとして、収益はどの程度押し上げられるかを計算します。すると約15%の増益要因になると計算できます。(35マイナス25の10%ではありません。)そしてその半分の7.5%が来年実現するとした株価が、現在の株価だという見方です。
ではこのシミュレーションと現実の株価を比較します。トランプ当選前の11月7日の株価と、昨日の株価を比較します。比較のためダウものせます。
11月7日 12月22日 上昇率
S&P500 2,131 2,265 6.3%
DOW 18,260 19,942 9.2%
より広い株をカバーしているS&P500 では、7.5%まであと一歩。NYダウはすでに2ポイント近く超過しています。トランプ効果の最重要点についてはかなりの程度カバーされたとみることができます。
今後さらに10%の減税を来年中に織り込むとすると、ここまでの上昇にさらに7.5%を加えてもよいことになります。
しかし、政策期待だけだと少しくらいオーバーシュートしても、それはいずれ巻戻される可能性が強い。その時期は春先だろうという見立てです。あいまいな時期予想ですが、要はトランプの大統領就任後に出される政策が見える時期ということで、「期待で買われ、事実で売られる」ことになるのでしょう。
以上がトランプラリーがどこまで、そしていつまで続くのかの私と友人のラフな見通しです。
次回は少し長期視点に戻って、シリーズ本題の「トランプのアメリカに投資しても大丈夫か」をしっかりとみることにします。
つづく