ストレスフリーの資産運用 by 林敬一(債券投資の専門家)

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ニセコの賑わい

2015年02月19日 | 旅行

  ニセコのスキーツアーから戻りました。子なし爺さん、ご心配いただきありがとうございます。幸い強風豪雪は去り、快晴にも恵まれるラッキーなツアーでした。今年これで5回目のスキーといつもより回数が多くなっています。雪の多さにつられたのかもしれません(笑)。ニセコはオーストラリア人スキーヤーのメッカとして有名ですが、この春節の時期に限っては「熱烈歓迎中国人スキーヤー御一行様」でした。

 

  大きめのホテルに3泊し4日間滑ったのですが、朝夕の食事時や大浴場で出合う海外旅行客の3分の2は中国人客でした。ほとんどは家族連れで、おじいちゃん・おばあちゃんからお孫さん達までみんなで春節ツアーを楽しんでいる様子でした。もっともおじいちゃん・おばあちゃん達は麓のカフェでおしゃべりし、両親と子供たちがスキーにでかけます。ホテルやスキー場の案内表示やアナウンスは英語・中国語・韓国語でされていて、海外からの旅行客招致の力の入れ方には本当に驚きました。

   我々グループは東京からですが、現地で友人が一人ジョインしてくれました。昨年我々がフランスのバルディゼールのスキーツアーで出合ってガイドをしてもらって以来の友人です。旦那さまが近くのスキー・リゾートで働いているため現地の事情に明るく、さまざまな話をしてくれました。彼女によりますと、ニセコはバブル崩壊以降スキー客が激減し、街全体が沈み込んでいたのですが、90年代の終わりころからオーストラリア人スキーヤーが増え始め、この数年は彼らのお蔭でかつての賑わいを取り戻しているそうです。

   彼らはスキーヤー用ロッジに泊ってスキーをするだけではなく、アフター・スキーの楽しみを求めるため、それが街のにぎわいにつながっているようです。そして泊るだけでなくコンドミニアムを買い、新たにスキー客用のロッジを建て、レストランやバーを作り経営しています。ゴンドラで一緒になったオーストラリア人の話を聞くと、彼はシンガポールに住みニセコに3,700万円で新しいコンドミニアムを買い、冬場は1ヶ月以上を家族とニセコで過ごすとのこと。LCCのお蔭で航空運賃が安いので、シーズン中3~4回の往復も苦にならないそうです。そして夏には避暑で使いたいとも言っていました。投資というより、本当にファミリーで使うための別荘のようです。

  こうした傾向は今年私がスキーで行った白馬や野沢温泉などでも同じ様なことがあるのですが、ニセコではもう豪州租界地と言って過言ではないほどになっています。

  「何故ニセコなの?」という私の問いに

「バックカントリーの広さと雪質だよ」という答えが返ってきました。

  彼らはニセコのスキー場が日本ではありがちなゲレンデ限定スキー場でないことが気に入っているのです。ニセコでは標高500mを超えると森林限界を超えてしまうので、どこでも伸び伸びと滑れるのです。最近遭難が相次ぐバックカントリー・スキーですが、長野や新潟と違いニセコではバックカントリーの遭難ニュースを聞きません。それはいわゆる整備のよいゲレンデ以外での滑走も登録制で許していて、ガイドツアーが充実しているからだそうです。オーストラリア人のほとんどはゲレンデ外滑走がメインで、新雪用スキー板やボードを履いています。ちなみにバルディゼールでも、我々日本人だけがゲレンデ用カービングスキーを履いてゲレンデを滑っていて、逆に目立ちました。ニセコ人気の秘密はバックカントリーにあるようです。

   では今回目立った中国人はどうか。彼らとはホテルの食堂や温泉では会うのですが、ゴンドラやリフトではなかなか一緒にならないため話をする機会があまりありません。何故か?理由は簡単で、ほとんどの人達がスキー初心者のため、麓の初心者用ゲレンデで滑り、ゴンドラで高いところまで上がって来ないのです。ほとんどはかなり大勢のグループで来ていて団体行動なので、動きはとても目立ちます。オーストラリア人と比べてもちろん短期滞在で、たまたまゴンドラで一緒になった人に聞いた話では、東京や京都などを回るとともにニセコまで来て2・3日スキーを体験するのだそうです。先々週に行った白馬八方尾根で出合った中国人グループも同じようなツアー・パターンでした。

   私は海外からの旅行客や海外からの日本への投資は常に大歓迎です。特に中国人はかつての日本人を彷彿とさせる爆買いをしてくれるし、好きなゴルフでいえば日本のゴルフ場はアコーディアやPGMなど海外投資家のお蔭ですっかり再生を果たしています。東京の不動産も海外投資家により活発に取引されています。そしてスキー場も今年行ったうち海外客の多い白馬八方尾根や野沢温泉はとても元気になり、ニセコは聞きしに勝る賑わいでした。もし少なくなる一方の日本人スキー客だけだとするとこうはいかないと思います。

  昨日のニュースでは14年に日本のゴルフ場は30 カ所が閉鎖されたとのこと。ゴルフ場への投資だけでなく、是非プレーヤーも海外から招致を計ってゴルフ場を閉鎖の危機から救って欲しいと思います。

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戦後70年、第2の敗戦に向かう日本  その7 原油価格の下落について

2015年02月14日 | 戦後70年、第2の敗戦に向かう日本

  国際収支についての続きです。

  直近の12月貿易収支の赤字額はピークよりは少なくなっています。原油価格の低下に大きな影響を受けているためです。その原油価格も40ドル台とそろそろいいところにきているので、さらに低下していくことは考えづらい。需給関係をみているとアメリカのシェールオイルのリグ(掘削機)の稼働数が減少し、産油国でも在庫とにらめっこをしながら産出量を実質的に削減しているようです。このため原油価格もいずれは反転してそこそこのレベルに落ち着くと思われます。

  しかし価格が落ち着く時期だとかレベルについての予測は私にはとても無理です。願わくは安い原油価格がすこしでも長く続くことを祈っています。理由は個人的にはガソリン価格が安い方が助かるからです。

  私の車はスキーにいくために4輪駆動でガソリンを喰うため、家内からは早くハイブリッド車にしろと言われているのですが、どこも故障がないので買い替えは当分するつもりはありません。3月には丸10年になりますが、走行距離は12万km。月に丁度1千kmぴったりです。私の車の乗り方はスキー、ゴルフがメインで、あと一週間に一度程度葉山にある家内の実家を訪問します。私は世田谷区の用賀インターのそばに住んでいるため、走行は8割方高速道路です。そして運転の仕方は極めて省エネで、一定の速度で走り続けます。ということは実はブレーキを踏まないし、エンジンブレーキもあまり使いません。街中でも赤字信号に向かってはギアをニュートラルにして惰性で走りますし、ETCゲートでも1kmくらい手前からスピードを緩めはじめて、最後の500mくらいは惰性です。その上渋滞中でも一定のスピードで走るトラック走行で、ブレーキを使わないのです。ということは、実はハイブリッドの特徴である回生ブレーキによるエネルギーの補充はほとんどありませんので、ハイブリッドにしてもリッター当たりの走行距離はほとんど伸びないと思うのです。世界の全運転手がこうした走り方をすれば、ガソリン消費量は10-20%はセーブできると思います。そして高速道路の渋滞はブレーキランプを点灯させないので、かなり緩和されるはずです。

  車の話のせいかだいぶ横道に逸れました(笑)。

  原油価格のことに戻します。

  1月22日の日経新聞にレオナルド・マウジェリというハーバードで教える先生の分析が出ていました。私は実証と数字で説得されるたちなので、12年の原油価格の大崩壊を当てたこの先生の分析はかなり信用できると思っています。その記事を要約します。

要約

今回の原油価格の暴落は明らかにOPECの盟主サウジの政治的意図を反映している。サウジの目標は二つ

  • 核開発をするイランとその後ろ盾のロシアの力を弱めるため
  • アメリカのシェールオイル産業をくじくため

特に大きいのは対シェールで、サウジは2つのシナリオを検討した。一つは1バーレル60ドル。これだとサウジは自国の外貨準備9千億ドルを使わずに済む。もう一つは45ドル。これだと年に1,200億ドルの取り崩しが必要だが、数年なら耐えられる。

シェール大手の優良な油井は採算ラインが30-40ドルで、うち大きな割合を占める頁岩層では8割が42ドル以下で、28ドルの油井も3割ある。今倒産し始めたのは中小だが、開発会社は15年の生産量の半分を90ドル程度でヘッジしているため、減産していない。(このヘッジの話は先月私が引用したブルームバーグの分析記事と符合します)。50ドルが2-3年続いてもシェールの生産はそう減らない。40ドルを割ればさすがにサウジも価格の維持に動くだろう。ただサウジにとって収入のドルの購買力が上がっているので、45ドルの価格の耐久力は増した。

 要約終わり


  彼の分析はいつも大量のデータの集積を使った実証的分析のため、かなり信頼性が高いと思われます。12年の時もそうでした。彼は下値の目途とサウジの時間的耐久力に言及していますので、それを重要情報として頭に留めておきましょう。ただここでは述べられていませんが、サウジ以外の産油国にさほどの耐久力はありませんので、サウジの思惑だけでは事は進まないと思います。

  ここまで原油価格の暴落と今後をどう見るかについて書いてきました。日本は圧倒的な原油輸入国ですから、こうした価格の下落は経済全体に大きなメリットになります。原油輸入額の減少は経常収支にはよい影響を与えますが、物価上昇を目論む日銀には強い逆風です。「2・2・2」の日銀クロちゃんの公約はどうするつもりでしょう。絶対にしてはならないのは、日銀がトチ狂ってさらなる無茶を始めることです。

  日本企業の生産活動がどんどん国内に回帰することなどなく、貿易収支が劇的に改善、あるいは反転し黒字が定着することはないと思われます。

  では今後の日本の経常収支はどうなるのか、まずここまでをまとめ、今後を私なりに見通しますと、

1. 生産の海外移転は円高対策でもあるが、むしろ需要のある地区で生産することが合理的だから。為替に振られる状況から脱出するためなので、大きく回帰することはない

2.貿易収支は短期的に大きく変動するが、海外投資からの収益は振れの少ないコンスタントな数字で、今後も増加を続ける。経常収支の黒字を支える主役が輸出から海外投資収益に交代し、今後の日本の生命線になる

3.原油価格下落は市場に政治問題がからみ、サウジとシェールの我慢比べが続く。日本にとって価格低下は大きなメリットで、貿易収支の悪化を防いでいる

   しかし将来的に原油価格が落ち着くと、貿易赤字は再び拡大する可能性が強く、経常収支が赤字に向かうことになりそうです。

   それにプラスして重要なことがあります。それは日本の法人・個人の投資行動です。

次回はそれを見ることにします。

   なお私は明日からニセコに4日間スキーにでかけますので、しばしお休みさせていただきます。

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戦後70年、第2の敗戦に向かう日本  その6 経常収支の変調

2015年02月12日 | 戦後70年、第2の敗戦に向かう日本

  戦後70年を経た日本に大きな変化をもたらしつつあるもう一つの要素が経常収支の変調です。2014年の日本の国際収支が財務省から発表されました。結果のサマリーは、

・14年の経常収支は2.6兆円の黒字

・貿易・サービス収支が過去最大の13.5兆円の赤字

・経常黒字額は前年比マイナス19%

・黒字額は統計の始まった1985年以来最小

  そして様々な報道やエコノミストから様々なコメントが付けられています。その代表的な項目を上げますと、

・経常黒字の主役が輸出から海外投資収益に交代した

・輸出が前年比でプラス9.3%と上向き始めた

・円安により海外生産が日本に戻りつつある

・旅行収支は黒字が近づく

  こうしたコメントを受けると為替相場は円高に振れてしかるべきなのですが、このニュース直後は1円以上の円安に振れています。もちろん為替はその他の要素に影響されますので、経常収支だけに影響されることはないと思いますが、1円以上の円安に振れる決定的ニュースがありませんでした。ということはやはり経常黒字が最小値に終わったことに素直に反応したとみるべきなのでしょう。

  今後のドル円相場に影響のありそうなニュースですので、私なりに上のコメントに解説を付けてみます。

 私は11年の秋から12年にかけて、つまり3年ほど前になりますが、このブログで「円高デフレのトラップに嵌まり込む日本」というシリーズを掲載しました。その中で、およそ以下のようなことを書いています。

1. 生産の海外移転は着実に進展しつつある。これは円高対策でもあるが、むしろ需要のある地区で生産することが合理的だからで、為替に振られる状況から脱出するためである。

  この推論が正しいとすれば、為替変動により現地生産と日本からの輸出をいったりきたりすることは考えづらいことになります。アベチャンは昨年末、ホンダが一部生産を国内に戻したことを「ベノミクスの成果だ」誇らしげに語っていました。しかしホンダが海外でも生産を増やしていることは黙殺し、いかにも大本営らしいお上手な発表でした(笑)。

  自動車産業で言えばアメリカのGMやフォードが数十年にわたりドル安が続いたからといって海外生産をやめてアメリカで生産を増やし、デトロイトが復活したなんていうことはありませんでした。フォルクスワーゲンやメルセデスもユーロの上下変動で海外生産と本国生産をいったりきたりすることなどありません。今後そんなことはどの自動車会社もしないでしょう。日本の自動車生産も同じです。生産拠点を移すことは簡単ではないし、円高反転にも備えるためには、国内に戻すのは非合理的だからです。それでなくとも日本は人手不足が深刻なため、生産を増したくても大きな増加は望めません。

2.貿易収支は短期的に大きく変動するが、海外投資の収益は振れの少ないコンスタントな数字で、今後も増加を続ける

  どうやらこの予想は正しかったようです。これが「主役が輸出から海外投資収益に交代」したと言われる原因になりました。海外からの収益は外貨建てですから、外貨建ての収入がコンスタントに増えるとともに、為替の変動でも収入額が増幅しています。これは今後の日本の経常収支の生命線になります。

  旅行収支については以前のシリーズでは特に触れていませんでした。一つには数字が小さいためです。それとここまでの急速な円安を予想していなかったし、海外旅行客が為替相場にこれだけ鋭く反応するとは予想できなかったからです。特に中国人旅行客のブランド品爆買いは、本当に驚かされます。先週銀座を歩いたのですが、彼らはまずカバン屋さんでキャスター付きのバッグを買って、それが一杯になるまでブランド品を買いまくっていました。必ずしもバーゲンハンターではありません。バーゲンなどしていないデパートも海外旅行客でいっぱいです。何故なら円安だけで実質大バーゲンになっているからです。長期の不況にあえいでいた小売業にとっても救世主ですね。

  私は個人的にも海外から日本への投資や旅行客はいつも大歓迎です。いくら不動産を買われたからといって持って帰ることなどできないし、経営がヤバくなっている地方のスキー場やその他の観光地の救世主だからです。東京の銀座や浅草ばかりではありません。

  そして面白いのは宿泊業です。東京には超高級ブランドの外資系ホテルがどんどん進出していますが、一番活性化しているのは古くからある旅館やユースホステル程度の安宿です。理由は単純。欧米からの旅行客は古い日本の伝統や庶民のオモテナシに触れたがるからで、世界のどこに行っても同じである豪華なホテルより、日本独特のシェアーハウスのような安宿を好むのです。もちろん彼らの滞在日数がスキーの話でも触れたように2週間、3週間と長いことにもよります。それでコストを抑えることとオモテナシの一挙両得を狙っているからです。

  話が横道に逸れました。

  では今後この経常収支はどうなっていくのでしょうか。次回はそれについて書きます。

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アップルのスイスフラン建て社債発行

2015年02月10日 | ニュース・コメント

  アップルがスイスフラン建て社債発行をするとのニュースが欧米の金融市場で駆け巡っています。アップルは業績も好調で、とてもキャッシュリッチな会社ですが、今月初めの65億ドルの社債発行に続き、スイスフラン建て社債の発行を予定しているそうです。加えて言えば、28億ユーロの社債も昨年11月に発行しています。いったい何故?

   日本のニュースを見ていると、「スイスフランには投資家が集まっていて、安い金利で発行できるからこの機を逃さずに発行するのだろう」と言っています。でもこれはおかしいと私は思います。何故ならアップルがスイスフランを必要としているとは思えないからです。

   需要が多いのでスイスフラン債を発行したとして、そのオカネを例えばドルに替えて使う。するとあとで債券を償還する時にはスイスフランを調達して償還することになり、もしその時にスイスフランが今より高いと為替差損が出てしまいます。むしろアップルユーザーが多くてオカネもある日本で、やはり金利の低い円建て債を発行し、あとで円安を見込むほうが合理的です。もしかすると円が半分になっているかもしれませんから。

   実は社債の発行体が発行通貨を選択する際、目の前の金利にはあまり影響されません。そしてその発行する通貨を企業が必要としているかもあまり関係がありません。ただし、その通貨に対する投資家需要のあるなしは重要な要素です。発行体にとって最大の関心事は通貨スワップ後の出来上がりコストです。ちょっと難しいので解説します。

   スイスフランに対して投資家の需要はかなりありそうなのはみなさんも理解できると思います。国債がマイナス金利になっているくらいですから。アップルはスイスフランで調達するとその場で他の通貨、例えば米ドルにスワップ(交換)します。そしてそのスワップの契約は、発行時点(フラン⇒ドル)、金利支払い時点(ドル⇒フラン)、償還時点(ドル⇒フラン)、すべてに対応する通貨交換契約をして支払いに備えるのです。スワップには独自の市場があって、それを使ってドルとスイスフランのスワップをした結果、彼らの判断基準であるドル建ての仕上がりコストがなんぼになるかで発行するか否かの判断をするのです。

 

  ここからは面倒であれば読み飛ばしてください。

例えばアップルのドル10年債の金利コストが米国債(1.8%)に比べて0.5%(50bp)上の2.3%だとしましょう。スイスフラン債のドルコストがスワップ後で2.2%であれば、スイスフラン建てのほうがコストは安い、となるのです。

事がさらに複雑になりますが、実はコスト比較は固定金利でするのではなく、短期の変動金利であるライボー金利(銀行間金利)にいくら上乗せされるかというベースに引き直して判断します。最近のスイスフラン債の事例では、ノバルティス・ファーマの15年債はライボープラス31bpだったそうです。アップルのレーティングはAa1/AA+.で、ノバルティスのAa3/AA-より2つ上のため、例えばライボープラス20bpで済むかもしれません。それがドル建てコストより安く済むとなれば発行に踏み切るかもしれません。

 複雑な話はこれくらいにします。

 

  ところで問題の核心は、「アップルは何故資金調達をするのか」です。彼らはこの2年でかなり長期の社債を大量に発行しています。儲かっていてキャッシュリッチなのに何故か。設備投資資金でしょうか。いいえ、彼らは設備はほとんど持たないファブレス企業です。買収資金でしょうか。兆円単位のキャッシュリッチなので、よほどの巨大買収でなければ、テガネで済みそうです。そして企業のあり方として巨大な買収をしません。

   一つの回答は配当と自社株買いです。配当は2012年くらいから金額がそれまでとは1ケタ違う大きな金額となりました。そして同じ時期に自社株買いを始めています。2013年ころからはモノ言う株主であるカール・アイカーンが、もっと自社株買いをしろ言い続けていますが、彼と論争しながらも配当と自社株買いを続けています。

   社債を発行して配当や自社株買いをするのはアメリカではよく行われますが、果たして妥当なのでしょうか。どこぞの国の「自国債」買いと似た構造になっていないでしょうか。

   その他にアップルの社債発行の理由ではっきりとしたものは私には見当たりません。これまでも26年償還の14億ドルや43年償還の30億ドルというかなりの長期かつ巨額な社債を発行しています。

    私は長く債券の世界にいたので、こうした資金調達をする優良企業として思い立つのはGEです。彼らはGECCという金融子会社を作りAAAの格付けを得て、そこが超優良子会社として長くGEの業績に貢献しました。本業が傾いた時でも金融子会社がバランスを取る役割を果たしていました。アップルも将来を見据えて金融子会社でもはじめるのでしょうか。

   別の観点からこう考えることも可能かもしれません。優良企業の資金調達の理由が、債券相場のピーク、つまり金利のボトムを狙う賢い資金調達であるなら、金利の反転は近いと言えるのかもしれません。

   アップルの債券による資金調達が果たしてどういう理由によるのか、私のは推論にすぎません。どなたかご存知でしたら是非教えてください。

 

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八方尾根スキー・ツアー

2015年02月09日 | 旅行

  今年4回目のスキーは八方尾根スキー場でした。4日間の滞在中3日間も晴れていたので、ちょっと滑り過ぎました。泊ったロッジの方の話ですと、八方でも積雪が3mを超えるのは20年ぶりくらいだとのこと。スキーヤーは喜んでいますが、商売・生活をしている方にはかなりの負担になっています。

   まずいくら雪かきをしたくても、雪を捨てる場所がなくなってしまいます。家やロッジの周りは屋根から下ろした雪で5mくらいの小山が取り囲み、道の脇にもどけた雪が高くなりすぎ雪庇となっていて、その横を歩くのが怖いほどになっています。スキー場でもリフトの下の雪かきが追い付かなくなると、リフトを止める事態になりかねないこと。

   白馬村は年末に起こった地震のため多少の影響は受けたようですが、海外からの旅行客の増加で賑わっていました。私は10分ほどの時間ですが、ゴンドラで出会った人達と会話を交すのが楽しみです。今回会話を交わしたスキーヤーはどんな人達か例を上げますと、

 ・カナダのカルガリーから来た中年の夫婦

日本での滞在は3週間。最初は沖縄の宮古島からスタート。シュノーケリングを楽しみ、その後関西地区に移動して京都・奈良を巡り1週間。白馬地区で1週間ほどスキー。最後は東京に移動して1週間の滞在を楽しむとのこと。なんともダイナミックなカップルです。そう、日本はマリンスポーツとウィンタースポーツが同時に楽しめる国なんですね。

 ・ニュージーランドから一人で来た男性、ITエンジニア

日本での滞在は2週間で、スキーが1週間、あとは東京でシェアーハウス旅館での滞在をエンジョイするそうです。東京のシェアーハウスは友人に聞き、ネットで調べたとのこと。そしてトータルの旅行費用はニュージーランドで1週間スキーをするのと変わりないので安さに惹かれたとのことでした。

 ・オーストラリアから来た中高年グループ7人組

国別ではやはりオーストラリア人が圧倒的です。日本での滞在は長野だけですが、3週間ほど。志賀高原、野沢温泉、白馬地区のスキー場をそれぞれ1週間ずつとのこと。温泉大好きなリピーター・グループでした。八方での彼らはオーストラリア人の経営するスキー・ロッジに泊り、スーパーで買い物して自炊するのが楽しみだそうです。得意料理はと聞くと、「毎日バーベキューさ」とのこと。食材がおいしので、焼けばいいのだそうです(笑)。


   こうしたみなさんに共通していることは、日本語は全くダメ。そして「日本は安い!」でした。カナダもニュージーランドもスキーはできるのに、日本のスキー場の雪質のよさとサービスの評判を聞いて、円が安い時に観光とスキーを一緒に楽しもうという旅行客です。

   そう言えば2000年代前半の数年間、私はゴルフ仲間と毎年オーストラリアでゴルフ合宿をしていたのですが、コンドを借りて自炊しながらゴルフを楽しむと、往復の飛行機代まで入れても、同じ回数のゴルフを日本でやるのと同じコストでした。今や攻守、所を替えたということですね。

   中国からの旅行客もたくさんみかけるのですが、ほとんどは団体旅行の短期滞在。スキーは初心者なのでふもとのスクールに入り、あとは山頂までゴンドラやリフトで登って景色を楽しんで写真を撮り、帰りもゴンドラで帰るというパターンです。若い人だと英語も通じるので話しかけてみるのですが、スキーは体験をするのが目的。本当の目的は東京や大阪での買い物だとはっきり言っていました。でもよくまあ短い日本旅行のあいだに八方まで来るものですね。観光産業には大変ありがたいお客様です。

   八方尾根スキー場ではアナウンスも英語があり、ロッジではメニューも英語・中国語・韓国語もあって、外貨の両替所まであります。そしてなんと一杯のコーヒーだけでもクレジット・カードを受け付けるようになったのにはビックリでした。外人客の受け入れにはどこのスキー場も本当に熱心です。

  でも去年さんざん出合ったロシアからの旅行客は皆無で、スキー場にも国際情勢が色濃く反映されているのがとても印象的でした。

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