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トランプでアメリカは大丈夫か9 G7の破壊者

2018年06月11日 | トランプでアメリカは大丈夫か?

  G7 に対してすでに合意された「首脳宣言を承認しない」・・・かわいいトランプちゃん、おバカな本性を現しました。

  さっきまで合意していたのに、いつものちゃぶ台返しをしました。

  今回のG7主催者カナダのトルドー首相とのののしり合いをしていますが、その顛末は、以下のブルームバーグの記事によくまとまって書かれていますので、引用します。

「承認済みとのマークが付いたG7首脳宣言のコピーはトランプ大統領がツイッターで米代表団への指示を公表する前に、ケベックシティーのG7メディアセンターで配布されていた。トランプ大統領は2つめのツイートで、「トルドー首相はG7の間は非常に柔和に穏やかに振る舞っていたが、私が去った後の記者会見で『米国の関税は屈辱的だ』が、『振り回されることはない』と語った。非常に不誠実で意気地がない。米国の関税はカナダの乳製品への270%関税に対応するものだ」と述べた。」

  『米国の関税は屈辱的だ』が、『振り回されることはない』という言葉のどこが「非常に不誠実で意気地がない」のでしょうか。意気地おおありだと思います。

  カナダはアメリカが一方的に課してきた不当な関税に対抗措置をとることを宣言しています。そもそも貿易戦争はトランプが「貿易戦争はいいことだ。必ず勝利する」として仕掛けたもので、対抗措置は当然の反応ですが、トランプは一方的に相手が悪いことをしていると言いがかりをつけています。

  「アメリカは長年にわたりつけこまれ、してやられてきた。しかし俺様は赤字をもう許さない」というのが彼の頭の中の図柄です。しかしこれは全くの間違いです。解説します。

  そもそもアメリカが貿易で赤字なのは、自国の製品に競争力がないからですが、そのかわり消費者は貿易により他国から「高性能で耐久力のある、しかも安い商品」を買い、とてつもないメリットを受けてきました。

  それを否定して高関税を掛ければ、アメリカの消費者は「低性能で耐久力のないジャンク商品を高く」買わされることになります。

  トランプの横暴なる貿易戦争に対して、座したまま甘んじて耐えるしかないのでしょうか。トランプの様々な横暴に対して、確かに安全保障問題では簡単に対抗措置は取れません。しかし貿易は別です。カナダをはじめ反抗を始めています。私は不当な高関税を課された世界の国々がもっとまとまって徹底抗戦をしてもよいのではないか、と思っています。

  トランプが一番怖いのはアメリカの選挙民です。その彼らに「高性能で耐久力のあるしかも安い商品」を輸出せずに、各国は輸出企業を支援し、対抗してみてはどうか。しばらく利益の額が落ちることくらいたいしたことじゃない。その間にトランプの支持率が落ちて再選されなければ、世界は再びまともな世界に戻れます。もし再選されれば悪夢が続きます。

  よりよいシナリオは中間選挙で共和党が大敗し、共和党がトランプを引きずり下ろす以外ないと判断すれば、弾劾もあるかもしれません。弾劾されなくとも、アメリカの消費者やすでに被害を受けているアメリカの生産者が損をする無茶な政策の発動はきわめてやりにくくなります。

  それに対してよいニュースが出ました。それはバンク・オブ・イングランドを破った男として有名な世界的投資家、ジョージ・ソロス氏が、11月の中間選挙に向けて民主党に15ミリオンドル、16億円の寄付をするというのです。しかも彼は「この世界はトランプによって破壊された」それを阻止するために働くというのです。実は彼はソ連と東欧を崩壊させるために、当時毎年数十億円、累計数百億円を反政府運動に投じ、崩壊の影の立役者といわれています。本気になれば影響力ありの政治的投資家なのです。

  一方で次の大統領選挙には二つの明るい可能性が出てきています。一つは共和党若手ナンバーワンの下院議長ポール・ライアンが早々と引退を表明。理由はトランプ嫌いで次の大統領選挙出馬だといわれています。

  そしてさらにグッドニュースは、ハワード・シュルツ氏です。と言っても日本で名前はあまり知られていませんが、たった数軒だったスターバックを世界のスターバックスにした男で、トランプなど物の数ではない大富豪です。

  彼は貧困家庭から苦学して様々な仕事をしながら大成功の道を歩みました。私は彼の著書「スターバックス成功物語」が97年に出て日本語訳されたものをすぐに読みましたが、ビジネスに対する思考法、実践法が、ほかでもない80年代ニューヨークにいたときに読んだトランプの「アート・オブ・ザ・ディール」に書かれていたトランプにそっくりだと思ったのです。なんという皮肉でしょう。

  最近のスタバの大ニュースは、黒人差別でした。何も飲まずに席に居続けた黒人2人を警官に排除させたことが、人種差別だとして非難されました。そこで取った彼のリスク管理は実に見事でした。全米8000店舗以上のスタバを5月29日に一時閉鎖し、従業員17万人に人権教育を行ったのです。その模様は全米で大きく報道され、むしろ称賛される結果に終わっています。

コーヒー党の私はアメリカのまずいコーヒーがおいしくなっただけでも彼を評価しますし、50セントのコーヒーを2ドルに値上げして成功した経営手腕を高く評価していましたが、今回のリスク管理も見事でした。その彼が先日リタイアを発表しました。先週のBBCニュースを引用します。

米スターバックスは4日、同社を世界的なコーヒーチェーンに育て上げたハワード・シュルツ会長(64)が6月26日に退任すると発表した。ニューヨークタイムズとのインタビューで同氏は、大統領選出馬の可能性を否定しなかった。」

  彼なら勝てる! 

早くから人種差別主義のトランプを非難し、難民をスタバで雇用するという反トランプ的な動きも見せていました。

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