米朝会談が無事成功裏に終わりましたね。いろいろ批判はあるでしょうが、ひとまず成功です。「完全な非核化への取り組み」と「体制の保証」という2つの重要点に包括的な合意が成立しました。と言っても、トランプは途中で席を立たない限り合意内容に多少の不備や不満が残っても、「大成功だ」と言うに違いないので、トランプの言葉だけでは信用ならないのは事実です。細かなことは報道にまかせ、非核化と体制問題に集中します。
今回の結果について早くから私は成功を予想しましたが、多くの専門家は懐疑的でした。それは会談が行われること自体に懐疑的だったり、行われても核廃棄の合意に懐疑的、そして合意に至ってもその後の順守に懐疑的というような予想を持つ人が多かったと思います。
では私は何故成功に対して楽観的だったのか。将来の見通しにもかかわるので、詳しく説明します。これにはきちんとした根拠があります。重要な根拠はたった一つ、「体制の保証」です。
大方の議論は「これまで北朝鮮核に関する合意事項を何度も破ってきた。だから信用ならない」というもので、今でも毎日その言葉が聞こえます。しかし今回は違います。体制の保証とのディールだからです。
過去にも核放棄の合意はありました。いわゆる6か国協議によるものです。6か国協議は2003年に開始され、2005年9月に、北朝鮮の核放棄などを盛り込んだ共同声明を採択しました。この内容を見ると、そこには「体制の保証」などという言葉は一言も書かれていません。
多くの専門家、マスコミは6か国協議の合意内容を読んでいないのでしょうか。だからまた同じように裏切るに違いないという間違った予想をしてしまうのでしょう。特に「あれだけ時間をかけて開発したのだから北が核の放棄など絶対にするわけない」と言っていた人たちの予想はくつがえったとみていいでしょう。
私はこれまで何度も金正恩の求めるものはたった一つ「命の保証」、つまり体制の保証だと言ってきました。カダフィのようにハチの巣にされることをひたすら恐れ、ちょっとでも怪しいと側近や親戚・兄弟すら殺しまくり、自身の身の安全の確保に全力を注いできました。その一点だけ安堵させてやれば、今後も裏切りはできなくなります。
今回の米朝会談のニュースは、北朝鮮でもすでにあのオバチャンが力みかえりながら全国に流しています。それを「ごめん、だめだった」などとは金正恩でも言えません。彼は神様なので、失敗などありえないのです。失敗すれば神様信仰が崩壊し、人民の信認を失います。
一方のトランプも同じように選挙民に対して成功宣伝をしまくっているので、簡単に失敗できません。
ただし「体制の保証」という言葉について私自身は違和感を持っています。何故なら体制の保証とは一国内の問題であって、外国が保証できるものではないからです。これもまた、まともに指摘している論調を私は見ることはありませんでした。
つまりアメリカが体制を保証したところで、国内で国民が反金正恩でまとまって反乱を起こしたり、親衛隊が反乱を起こして暗殺したりするのをアメリカは防げません。できるのは、米韓演習で行われるような外からの「斬首作戦」はしない、という程度の体制保証であることを忘れないようにしましょう。
それはそれとしても、アメリカによる体制保証は金正恩にとって非常に大事なことで、だから大筋での合意に至ったのだと思います。
では今後をどう見るか?一番重要なのはもちろん完全な非核化です。これはトランプもやっと理解したように、非常に長い時間がかかります。
完全な非核化が実現できるか否かについては、今後の推移を見守るしかないとしか言えません。しかし大事なのは、「非核化への歩みを巻き戻すことはないだろう」という点です。徐々にであろうがスピード感をもってであろうが、大事なのは巻き戻しがあるかないかです。金正恩は巻き戻して自分の命を危険にさらすかと言えば、彼の行動原理からみてそれはありえません。
ということで、この会談の成功は「双方とも巻き戻しはできない」という点で非常に重要なのです。アメリカにとっても、北朝鮮にとっても、周辺国である日中韓にとっても。
トランプと金正恩にエールを送りましょう。
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