ストレスフリーの資産運用 by 林敬一(債券投資の専門家)

新刊「投資は米国債が一番」幻冬舎刊
「証券会社が売りたがらない米国債を買え」ダイヤモンド社刊
電子版も販売中

大統領選ディベートと独裁への道

2024年07月03日 | アメリカ大統領選挙 24年

 バイデンの自滅でしたね。終わったあとの世論調査では、おおむねトランプの勝利が3分の2、バイデンの勝利が3分の1。さらにその後の調査で、例えばCBSニュースは、「バイデンは認知に問題があり、撤退すべきだ」という意見が72%を占めたとのこと。

  では、単なる印象による世論調査とは別に専門家のコメントを紹介します。上智大学で米国政治を専門にしている前島和弘教授によりますと、見た目の強弱は大きな差が出た。しかし政策論争ではほぼ互角。トランプにはウソが多く、それによる減点があるためだ、としています。

 ところが民主党寄りであると言われるニューヨーク・タイムズですら「バイデンは国のためにも撤退すべきだ。より強力な候補を立てるべきだ」と社説で述べるに至っています。

 今後の焦点がディベートの勝敗からすでにバイデンが撤退するか否か、また次の候補は誰かに移ってしまっているので、人気回復は難しいと思われます。

 

 私の最大の心配事はアメリカ大統領選挙にとどまらず、世界的な政治の右傾化です。イタリアではすでに極右思想を抱くと言われるメローニが首相を務めています。NHKニュースによれば、「彼女は首都ローマ出身の46歳。15歳のときにイタリアの独裁者ムッソリーニが結成した『ファシスト』を原点とする政党「イタリア社会運動」の青年組織に加わっていた」という生粋の右翼です。

 フランスでもマリーヌ・ルペンが率いる極右政党とそれに連携する勢力が33%余りの票を得て首位に立ち、マクロン大統領率いる与党連合は21%で3位にとどまっています。
 過半数を取れた候補がいなかった多くの選挙区では7日に決選投票が行われる予定で、1位の極右政党に対抗して2位以下が選挙協力する動きがすでに出ています。反極右政党のうち2位になれなかった候補は続々と撤退を表明、その動きがどこまで奏功するかが焦点です。

 一方イギリスでは逆に右寄りの保守党が劣勢に立たされ、勝負に出たスナク首相の負けが濃厚です。

 もう少し視点を拡げますと、先日ロシアのプーチンと北朝鮮の金正恩が会談し、同盟関係を文書で確認するというところにまで至っています。この2カ国は極右と言うよりさらに踏み込んだ「独裁という病」に犯されていて、トップ同士が同病相哀れむという様相に至っていると思います。

 大国を自認するロシアが小国ウクライナを5日で占領するはずが、2年半を経ても占領できず、世界最貧国の一つである北朝鮮に武器弾薬の供給を仰ぐという情けない状態が続いています。

 独裁と言えば中国もしかり。むしろ独裁国家の先頭を突っ走っています。

 

 では、アメリカは独裁とは無縁かといいますと、そうでもありません。オレ様トランプを再びトップにいただくことに恐ろしさを感じます。その最も危険な兆候が、7月1日の最高裁による評決です。

 ことの発端は、今年2月のワシントン州の判決でした。2月6日のロイター電を引用します。

「米ワシントン連邦高裁は6日、2020年大統領選の敗北を覆そうとしたとして起訴されたトランプ前大統領について、免責特権は適用されないという判断を下した。

高裁は「トランプ前大統領は『市民トランプ』になった」と指摘。大統領の任期終了後も「常に法を超越することは受け入れられない」として、大統領の免責特権が適用されるというトランプ氏の主張を退けた。」

引用終わり

 その高裁判決を今回は最高裁が差し戻したのです。ロイター7月1日のニュースから引用します。

「米連邦最高裁は1日、トランプ前大統領が2020年米大統領選の敗北を覆そうとした罪で起訴されている裁判を巡り、在職中の公的な行為について「免責特権」を認める判断を下した。最高裁が大統領経験者に何らかの刑事免責を認めるのは初めて。

ただ、私的な行為については免責特権は適用されないとし、トランプ氏の行為の免責が適用される範囲を審理するよう下級審に差し戻した。判決は6対3で、保守派判事全員が支持、リベラル派3人が反対した。

トランプ氏は20年の大統領選の結果を覆そうと企てたとして起訴され、21年1月6日の米国議会議事堂襲撃に関連した行為もこれに含まれる。」

引用終わり

 この差し戻しという判決では、まだトランプが勝ったわけではありませんが、今後アメリカがトランプと言う独裁的怪物に支配されるか否かの大事な瀬戸際にいることを示しています。

 もし次の大統領選に勝利し今後最高裁でも勝利した場合、彼はやることなすことすべて免責特権の範囲となるため、誰も彼に逆らえなくなる可能性が出ます。つまり民主国家にもかかわらず、独裁体制の確立になるのです。

 それに加えて彼が大統領に返り咲けば、ポルノ女優との不倫裁判をはじめ、彼が抱える数々の過去の訴追を自身が恩赦してしまい、今後のことはすべて免責にしてしまう暴挙にも出かねません。トランプにより選ばれた最高裁判事たちは、独裁国家を作る手助けをしようとしているのです。

 

 私は「独裁と言う病」は隣国に伝染すると思っています。そしてより大きな不幸を招きます。過去を見ればそれは明らか。次回はそれについて述べたいと思います。

 

 

コメント (1)    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 「円が安全通貨は誤解だった... | トップ | 緊急提言、トランプを倒す秘策 »

1 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
Unknown (Jake Jack)
2024-07-06 20:35:31
米国の利下げが見えて来たのに円安が止まらないのは、危険な兆候に思えます。
日本がハイパーインフレになって大混乱になれば、独裁国家に近づくことになりますね...
返信する

コメントを投稿

アメリカ大統領選挙 24年」カテゴリの最新記事