このところアベノミクスの進展具合に関してアップデートしていませんでしたので、政府から「成長戦略」が出されたのを機会にアップデートしておきます。
一昨日6月24日の夕刻、政府はアベノミクス3本目の矢となる「新成長戦略」を閣議決定しました。翌日の日経平均株価はそれを歓迎するはずなのが109円安で引けました。すでに戦略が小出しにされていたため、材料の出尽くしで下げたのかもしれません。日本の市場関係者のコメントは「昨年5月の成長戦略の安倍発言後にはマイナス700円だったので、それよりははるかにマシ」とのこと。
成長戦略の前にアベノミクス3本の矢について、若干のレビューをしておきましょう。まず今年になっての「アベチャン指数」を見ておきます。
昨年末 6月25日 対比%
日経平均株価 16,291 15,266 ▲6%
円ドルレート 105円 101年 4%の円高
昨年1年は株高・円安でアベチャン指数は順風満帆だったのですが、今年の株価はちょっと停滞気味です。円ドルレートもこう着感を強め、ほとんど動いていません。
ではまず「第一の矢金融政策」ですが、異次元緩和の名のもとにデフレ脱却を目指し1年以上が経過しました。これまでその目標である消費者物価は順調に上昇しています。私は昨年から「賃金上昇の前に物価が上昇してしまうのは『不幸の連鎖』の始まりだ」と申し上げていました。それが実際にはどうなのか、検証します。
・大企業正社員中心の春闘の平均賃金上昇率は、政府の要請を受けたこともあって、2.09%のプラスとなった
・中小を含めたすべての事業所を対象とする毎月勤労統計の給与総額の前年比は1・2月まではマイナス圏だったが、 3月には+0.7%と水面上に浮上した。しかし4月は春闘の妥結額よりはるかに低い+0.9%しか上昇しなかった
・年金生活者の年金支給額は今年度を通じて0.7%のマイナスとなる
・消費者物価は対前年比で昨年以来プラスを続けていて3月に+1.6%だったが、消費税値上げ後の4月は+3.4%と急上昇した。
要するに無理やり物価を先行上昇させ、その上消費税を増税した結果、昨年来国民全体は物価上昇により実質所得が減っているのです。今年の4月にはベースアップなどを含めてリカバーされるはずだったがそうとはいかず、どうやら懸念された不幸の連鎖は継続したままとなっているのです。
「物価上昇で企業収益が大幅に上昇すれば、賃金も上昇し好循環が始まる」というのがシナリオだったはずですが、一部の大企業を除くといまのところシナリオどおりには進んでいません。
「第二の矢、機動的な財政出動」はどうか。こればかりは機動的に実行されればされるほど累積財政赤字が悪化する一方なので、素直には喜べません。それでも政府は自画自賛しています。財政出動先は相も変わらず公共投資のため、民間との人材の奪い合いになっていて、何もしないほうが財政赤字もその分増えないのでよかったのかもしれません。
そして期待された「第三の矢、成長戦略」の概要が出そろいました。あまりにも多くの項目が並んでいて焦点はぼやけているようです。そして項目だけはいつものように上出来です。問題は実行できるかですが、この段階で評価するのは早すぎて意味がないと思いますので、今回は標語のチェックにとどめましょう。
これまでも成長戦略は「岩盤規制撤廃」「構造改革」「骨太の方針」などという標語とともに、何度となく政府によって出されては消えの繰り返しでした。今回も見事に同じ言葉が並んでいることを私からは指摘しておきます。
私はついつい批判的に見過ぎるきらいがありますので、ある程度客観性を持ち、かつ利害関係の少ない海外メディアの記事をみなさんに紹介したいと思います。日本のメディアは、例えば日経新聞などは株式市場が賑わえばそれだけメリットが大きくなるため、どうしても「大本営発表を礼賛」しがちなので、気を付ける必要があります。
ではまず経済ニュースでは代表選手のウォールストリート・ジャーナルから、ポイントをかいつまんで並べます。
<ウォールストリート・ジャーナル>
・多くのエコノミストは合格点をつけている
・女性の活用や法人税の引き下げをはじめ、方向性は正しいし、実行すべきだ
・肝心な実施の詳細はつまっていない
・岩盤をドリルで壊すと言うより、彫刻刀で穴を削る程度だ
<ニューヨーク・タイムズ>
・よく書けているが、大胆さには欠けている
・投資家は手放しで拍手はしないと思う
<エコノミスト>
・本物の矢で的を射るのではなく、ダーツをやっている程度
・本格的に改革がなされるとは思えない
・例えば農業のように、すでに目標から後退してしまっている分野がある
このように概して手厳しい批判記事が多くなっています。もちろんメディアの使命として批判的になるのはしかたがない面があるでしょう。実際の評価は参加者の多い市場の動きの方が表しているかもしれません。しかしその株式市場も、アベチャンにかかっては我々の大事な年金(GPIF)を使って官製相場になっている面があるので、要注意です。
これまで安倍政権は「でかしたアベチャン」と言えるほど国民の大多数のマインドを大きく好転させ、市場もそれを歓迎していたのですが、アベノミクスの一番大事な完結編である第三の矢については、どうも市場の反応は芳しいとは言えません。第一の矢・異次元緩和はポイント・オブ・ノーリターンをとうに超えてしまったので、後戻りも許されません。
今世界は地政学的リスクに非常に敏感になっています。株式市場や為替市場の静けさがかえって不気味さを醸し出していますが、嵐の前の静けさでないことを祈ります。
以上、アベノミクスのアップデートでした。
一昨日6月24日の夕刻、政府はアベノミクス3本目の矢となる「新成長戦略」を閣議決定しました。翌日の日経平均株価はそれを歓迎するはずなのが109円安で引けました。すでに戦略が小出しにされていたため、材料の出尽くしで下げたのかもしれません。日本の市場関係者のコメントは「昨年5月の成長戦略の安倍発言後にはマイナス700円だったので、それよりははるかにマシ」とのこと。
成長戦略の前にアベノミクス3本の矢について、若干のレビューをしておきましょう。まず今年になっての「アベチャン指数」を見ておきます。
昨年末 6月25日 対比%
日経平均株価 16,291 15,266 ▲6%
円ドルレート 105円 101年 4%の円高
昨年1年は株高・円安でアベチャン指数は順風満帆だったのですが、今年の株価はちょっと停滞気味です。円ドルレートもこう着感を強め、ほとんど動いていません。
ではまず「第一の矢金融政策」ですが、異次元緩和の名のもとにデフレ脱却を目指し1年以上が経過しました。これまでその目標である消費者物価は順調に上昇しています。私は昨年から「賃金上昇の前に物価が上昇してしまうのは『不幸の連鎖』の始まりだ」と申し上げていました。それが実際にはどうなのか、検証します。
・大企業正社員中心の春闘の平均賃金上昇率は、政府の要請を受けたこともあって、2.09%のプラスとなった
・中小を含めたすべての事業所を対象とする毎月勤労統計の給与総額の前年比は1・2月まではマイナス圏だったが、 3月には+0.7%と水面上に浮上した。しかし4月は春闘の妥結額よりはるかに低い+0.9%しか上昇しなかった
・年金生活者の年金支給額は今年度を通じて0.7%のマイナスとなる
・消費者物価は対前年比で昨年以来プラスを続けていて3月に+1.6%だったが、消費税値上げ後の4月は+3.4%と急上昇した。
要するに無理やり物価を先行上昇させ、その上消費税を増税した結果、昨年来国民全体は物価上昇により実質所得が減っているのです。今年の4月にはベースアップなどを含めてリカバーされるはずだったがそうとはいかず、どうやら懸念された不幸の連鎖は継続したままとなっているのです。
「物価上昇で企業収益が大幅に上昇すれば、賃金も上昇し好循環が始まる」というのがシナリオだったはずですが、一部の大企業を除くといまのところシナリオどおりには進んでいません。
「第二の矢、機動的な財政出動」はどうか。こればかりは機動的に実行されればされるほど累積財政赤字が悪化する一方なので、素直には喜べません。それでも政府は自画自賛しています。財政出動先は相も変わらず公共投資のため、民間との人材の奪い合いになっていて、何もしないほうが財政赤字もその分増えないのでよかったのかもしれません。
そして期待された「第三の矢、成長戦略」の概要が出そろいました。あまりにも多くの項目が並んでいて焦点はぼやけているようです。そして項目だけはいつものように上出来です。問題は実行できるかですが、この段階で評価するのは早すぎて意味がないと思いますので、今回は標語のチェックにとどめましょう。
これまでも成長戦略は「岩盤規制撤廃」「構造改革」「骨太の方針」などという標語とともに、何度となく政府によって出されては消えの繰り返しでした。今回も見事に同じ言葉が並んでいることを私からは指摘しておきます。
私はついつい批判的に見過ぎるきらいがありますので、ある程度客観性を持ち、かつ利害関係の少ない海外メディアの記事をみなさんに紹介したいと思います。日本のメディアは、例えば日経新聞などは株式市場が賑わえばそれだけメリットが大きくなるため、どうしても「大本営発表を礼賛」しがちなので、気を付ける必要があります。
ではまず経済ニュースでは代表選手のウォールストリート・ジャーナルから、ポイントをかいつまんで並べます。
<ウォールストリート・ジャーナル>
・多くのエコノミストは合格点をつけている
・女性の活用や法人税の引き下げをはじめ、方向性は正しいし、実行すべきだ
・肝心な実施の詳細はつまっていない
・岩盤をドリルで壊すと言うより、彫刻刀で穴を削る程度だ
<ニューヨーク・タイムズ>
・よく書けているが、大胆さには欠けている
・投資家は手放しで拍手はしないと思う
<エコノミスト>
・本物の矢で的を射るのではなく、ダーツをやっている程度
・本格的に改革がなされるとは思えない
・例えば農業のように、すでに目標から後退してしまっている分野がある
このように概して手厳しい批判記事が多くなっています。もちろんメディアの使命として批判的になるのはしかたがない面があるでしょう。実際の評価は参加者の多い市場の動きの方が表しているかもしれません。しかしその株式市場も、アベチャンにかかっては我々の大事な年金(GPIF)を使って官製相場になっている面があるので、要注意です。
これまで安倍政権は「でかしたアベチャン」と言えるほど国民の大多数のマインドを大きく好転させ、市場もそれを歓迎していたのですが、アベノミクスの一番大事な完結編である第三の矢については、どうも市場の反応は芳しいとは言えません。第一の矢・異次元緩和はポイント・オブ・ノーリターンをとうに超えてしまったので、後戻りも許されません。
今世界は地政学的リスクに非常に敏感になっています。株式市場や為替市場の静けさがかえって不気味さを醸し出していますが、嵐の前の静けさでないことを祈ります。
以上、アベノミクスのアップデートでした。
基本的に政治家は経済構造が変化していることに気がついていないのでは?
まあ、アナリストとかエコノミストと呼ばれる人達も構造変化については呆れる程に認識が低かったと思いますが、政治家は輪をかけて酷い。昔ながらの土建公共事業が成長戦略と思っているのでしょう。目先の利益の為、そうした事を礼賛するエコノミストやアナリストもいるでしょう。最近、どうも労働人口減少が色んな面で悪影響を与えていることを認めてきましたけど。
本当は稼げる分野に人と予算を集中投入しない限り、もう日本経済の衰退は止められないと思います。それだけでなく、先送りを続けてきた財政問題も先送りが難しいのではないでしょうか?
残念ながら、私は悪い予感が当たる方に一票です。
安部内閣のブレーンの一人、浜田氏はこういっています。
「物価が上がっても国民の賃金はすぐには上がらない。インフレ率と失業の相関関係を示すフィリップス曲線を見てもわかる通り、名目賃金には硬直性があるため、期待インフレ率が上がると、実質賃金は一時的に下がり、そのため雇用が増える。こうした経路を経て、緩やかな物価上昇の中で実質所得の増加へとつながっていく。その意味では、雇用されている人々が、実質賃金の面では少しずつ我慢し、失業者を減らして、それが生産のパイを増やす。それが安定的な景気回復につながり、国民生活が全体的に豊かになるというのが、リフレ政策である」
これが、7ヶ月続いている実質賃金の減少に対する安部内閣の言い訳になっています。
もう、リフレ派は、馬鹿かと・・・。 あきれて物も言えません。
彼らは、経済は理論通り動くという幻想に取り付かれているようです。こういうところは、昔のマルクス青年と大して変わらないわけです。
安部氏は、実務から遠い、お坊ちゃまなので、こういう理論家にコロッとなっているし、株価だけが経済指標と硬く信じているようので、なお厄介です。
私は、浜田氏は脳天気にリフレ政策を信じている訳ではないと推測しています。それは建前であって、本心はインフレで政府債務を何とかしようというのが本当の狙いなのではと推測しています。
我々のできることは、政府が失敗しても大丈夫なようにしっかりと備えることしかありませんね。
その備えは、政府が成功してもマイナスにはならないので、安心して備えましょう。
物価上昇が目標が達成できたとして、はたして出口なんてあるのかというのが疑問です。
アナリストやエコノミスト達と呼ばれる人達は、日銀の予想には懐疑的、物価上昇なんてあり得ないと言い張ってます。穿った見方をすると、日銀の出口戦略なんて、怖くて考えたくもないのかとも思ってしまいます。
日銀総裁も出口を考えるのは時期尚早と繰り返すだけで、出口の政策については語りません。出口が無いから言えないのかもしれませんが。
私個人としては、そもそも出口などない政策なのかなと思っています。さて、日銀の政策に出口が無かったと仮定して、その影響が誰の目にも明らかになった時、多くの国民はどういう行動をとるでしょうか?
そお遠くない将来に考えなくてはいけないことだけに、非常に興味深い。
たかさんは、今の安部政権の経済金融政策を失政として批判されておられるのでしょうか。もはや、日本の財政は、将棋で言うところの「詰んだ」状態かと思います。もはや、打つ手があるようには、思えないのです。あと、採れる政策は、黒田緩和くらいしかないだろうと思います。もはや、誰が政権についても、同じことしかやれないでしょう。私としては、今の政権の政策を批判するよりは、自分の対処を懸命にやった方が、得策だろうと思います。
非難してしまいますね。
私が思うところですが、これまで財政が破綻しなかった理由ですが、
・政府債務はあったが、国民の資産はそれ以上にあった。
・円高トレンドにも関わらず、(現在のちょうど60代くらいの方のがんばりですが)経常収支黒字をしっかり叩き出してくれた。
・国民資産のほとんどが、国内金融機関への預金に回った。
・円高トレンドにより、物価が安定しており、金利が低く抑えられ、金融機関は安心して国債を買っていけた。
・結果的に金利が低下するため、政府債務増大が抑制された。
藻谷浩介氏が言うところですが、
以上の条件が続く限り、財政破綻は抑えられ、たとえば、ここ20年の、団塊の世代の高齢化支出を耐えるだけでも、いずれは、相続という事象を通し、一部は政府の財産に戻りながら、次世代に資産つながっていく望みがあるとのことです。
時間がかかる話で、難しい操縦になりますが、わたしも、そこに望みをつなげるべきと思います。
現在の、安部政権は、やる必要のないことをやり出したということです。 まず現在起きたことは、
・円安トレンドにしたが、貿易は伸びず、経常収支が危機的になった。
・コストプッシュインフレにより、国民に不安を与え始めた。
問題は、金利動向がどうなっていくか、ではないでしょうか。これが、上昇しだすなら、大変です。