エルサレムをめぐり前回の記事で私は以下のように述べました。
「流血は目に見えていますが、世界のどの首脳がトランプに異を唱えるでしょう。」
すでに流血事件が何件も起こっていますし、世界の有力首脳はことごとくトランプをはっきりと非難しています。その中で国際社会オンチ、親トランプで反応しなかったのは安倍首相のみです。世界の反応は、
イギリス・メイ首相;同意できない
ドイツ・メルケル首相;支持しない
プランス・マクロン大統領;認めない
中国;紛争の核心となる問題、異なる民族の宗教感情に触れる
ロシア;問題の調整が進まなくなる
サウジ王室;パレスチナ人の歴史的・永久的な権利に反す。深く失望
トルコ・エルドアン;中東地域を炎の輪に投げ入れるもの。国連決議に反する
ローマ法王;深い懸念をいだく
そして当事者たちは、
イスラエル・ネタニヤフ首相;歴史的な日だ、勇気ある決断に感謝
パレスチナ・アッバス議長;6日~8日を「怒りの日」として抗議する。すべての和平プロセスを台無しにする
イスラム原理主義組織ハマス;和平プロセスは終わった。エルサレムを開放するため、インティファーダ(反イスラエル蜂起)を再開せよ
パレスチナ各地では指示されるまでもなく反米・反イスラエルのデモが起き、流血に至っています。ただしトランプがそこにいるわけではないため、暴動もある程度の秩序を保っているようです。しかし何といっても懸念は、今後予想されるアメリカ人に対するテロです。
2010年の年末から年始にかけ当時テルアビブにいた友人の勧めもあって、私と家内はイスラエルとヨルダンに旅行しました。翌2011年1月中旬に始まったアラブの春の直前で、平和で安全な旅行を楽しむことができました。イスラエルでのハイライトはもちろん聖地エルサレムです。
その地で感じたことを書いた旅行記を見直すと、最初に「エルサレムは観光地ではなく、聖地でした」と書いています。ホテルで一緒になった外人客の多くはキリスト教巡礼団で、朝食に集まるときでも全員が十字架を胸に、そして分厚い聖地巡礼の手引書を持っていました。
エルサレムの旧市街は壁に囲まれたわずか一平方キロの狭さで、何故この狭いところにキリスト教・ユダヤ教・イスラム教の聖地が集まったのか、とても不思議に思いました。アラブの春以降、彼の地を旅行する気にはなれませんが、今回のトランプ宣言以降は、旅行危険地域に指定されるかもしれません。とても残念です。
今回はエルサレムを巡りユダヤ教徒とイスラム教徒が対峙していますが、キリスト教徒にとってもキリストが十字架にかけられた宗教上もっとも重要なゴルゴタの丘があることを忘れてはいけないと思います。特にアメリカ人の巡礼者はこのクリスマス・シーズンはもちろん、今後はとても聖地巡礼などできなくなりそうです。
念のためエルサレムに関する国際社会の立場を、国連決議で見ておきましょう。
1947年国連 エルサレムを国際管理都市に指定
1980年国連 エルサレムの地位変更は法的に無効であると宣言 「最終的帰属はイスラエルとパレスチナ の交渉で決すべき」とした
それ以降、93年にはクリントン大統領の仲介によりPLOアラファト議長とイスラエル・ラビン首相がいわゆる「オスロ合意」に達し、和平協定を結びました。しかし2006年イスラエルのガザ侵攻で協定は事実上崩壊しています。それでもエルサレムに限れば、平穏さが保たれていました。
では何故トランプは日本を除く国際社会全体が非難するオロカな決断を下したのでしょう。昨日、山ちゃんのコメントに書きましたが、私の見立ては、「支持者つなぎとめのため公約を実現しようとのモガキ」であり、その結果「娘婿の信心と世界平和を交換してしまった」のです。
トランプ自身、国際社会のあまりの反応に驚いているに違いありません。決断にあたり、少なくともトランプ周辺でいまだ国際感覚を保ち良心を失っていないティラーソン国務長官とマティス国防長官は、反対をしたと伝えられています。そろそろ最後の頼みの綱である二人の命運も尽きるかもしれません。
さあ、遠距離恋愛中のアベチャン、どする。
電話でトランプを慰めますか。イスラムの攻撃対象になりますよ。
前回はトランプという人間の危険性を、日米共同声明に「北朝鮮への軍事行動」を盛り込もうとしたことから見てみました。
次回は安倍・トランプの相思相愛ぶりをNHK特集からさらに見ることにします。
つづく