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トランプはサイコパスである2

2021年01月13日 | トランプのアメリカ

  どうやらトランプの危険性がやっと世界で認知されましたね。もちろん遅すぎですが。それでも彼の本質が明らかになったので、弾劾できずとも今後の政治活動に一定の歯止めがかかるでしょう。

  トランプの危険性は早くからアメリカの精神分析医のあいだでは議論され知られていました。日本では彼が大統領に就任した直後の17年初めに、今を時めく脳科学者の中野信子氏が「トランプはサイコパスである」という題名で文芸春秋に投稿しています。私もその書評を17年春にみなさんに発信しました。一応サイコパスの定義をここで繰り返します。Wikipediaからの引用です。

「精神病質=サイコパスとは、成人において非社会性または反社会性を常況として社会生活上の困難をしめすパーソナリティ障害、と解釈されることが多い」

  ところが、中野氏の分析はこの表面的定義よりかなり深いものがあり、現在のトランプを取り巻く状況をより的確に予想していました。文芸春秋の記述を簡単に要約します。

・サイコパスは周囲の人々を強く引き付ける力を持ち、巧に他者を利用する
・最大の特徴は「冷酷な合理性」で、日本人で言うなら織田信長が代表である

  確かに信長が突然容赦ない殺りくを行うところは、トランプにそっくりです。そして中野氏がトランプの言動を細かく分析すると、以下のような特性が見られるとのこと。

1.根拠のない自信と罵詈雑言を常時発する
2.既存メディアを嫌い、ネットで自分の主張を発信し続ける
3.人をモノとして扱う。自分に利益をもたらさない人は排除する
4.特に女性をモノとしてしか見ない。相手にするのはセックスの対象でしかなく、結婚相手はトロフィーワイフである
5.人間関係とは利害関係にすぎないので都合が悪くなれば切って捨てる


  中野氏は実に的確に言い当てています。この4年間の言動と閣僚や補佐官など部下たちの扱いは、まったくもってそのとおりでした。その後中野氏はインタビューでこんなことも言っていました。「サイコパスは一般の人の中で現れる確率は100人に一人、1%くらいですが、経営者の中で該当する確率は10%にも上るという研究結果があります」。こわいですね、自分自身もこうならないよう注意が必要ですね。

  私はサイコパスと思われる人間と直接対峙したことがあるので、中野氏の上記コメントにもう一つ加えます。それは、

「自分が悪かったとは絶対に認めない」

です。

  どんなにしっかりとした数字をもとに「あなたの主張は間違っている」と指摘しても、彼は私に対する非難を続け、もちろん一言も謝ることはありませんでした。

  まさにトランプもそのことを証明して見せました。昨日のTVインタビューで彼は6日の暴動について後悔しているかと問われると、

  「オレ様は全く後悔などしていない。オレ様に責任など一切ない。あのスピーチに問題など全くない」と回答しています。これっぽっちも自分の非を認めず、典型的サイコパス症状を示していました。まあ、いつものことですし、それを愚かな支持者は喜ぶのですからしかたありませんね。

  私にはこれが「可愛いくて愚かなトランプちゃんの証拠」と見えるのです。100%確信犯であることを自ら認めることになるからです。さすがの共和党議員もあきれ果て、民主党の弾劾決議案に賛成票を投ずる議員が現れています。果たして何人離反者が現れるか、見ものです。

  下院でできるのは弾劾の訴追までで、その後上院で行われる判決は判事となる上院議員の3分の2の賛成が必要なため成立はしないでしょう。しかし私は知らなかったのですが、弾劾の成立は次の大統領選挙に出られなくなるという報道があります。民主党はそれを狙って何としても弾劾訴追をしたいのでしょう。

  しかし待てよ、もっとうがった見方をすれば、4年後の選挙では彼が候補となったほうが民主党は勝てるんじゃないの、という見方もできると思います。それは置いておきましょう。

  トランプは人格的に問題ありということは彼の当選前からわかりきっていたのですが、彼の扇動にまんまと乗って当選させたのはあの暴動を起こした支持者たちです。

  私が驚くのはトランプ・マジックにかかり彼を支持する人はアメリカ人だけでなく、日本人にもいるということです。裁判所が、トランプが「不正選挙だ」と主張する数十もの訴えのすべてを、「十分な根拠がない」とはねつけても、まだ彼の勝を信じる人がいます。

  トランプに対する精神分析はアメリカでも16年の選挙中からなされていましたが、ゴールドウォーター・ルールというルールがあって、公表しづらいのです。これもWikipediaを引用します。

「ゴールドウォーター・ルールとは、アメリカ精神医学会倫理規定第7.3節の非公式な呼び名であり、精神科医が公の場で、自身が直接診察しなかった公的な人物について、職業的な意見を発したり、彼らの精神保健状態を議論したりすることは、非倫理的な行為であると定めた条項である 。これは米国大統領候補であった上院議員のバリー・ゴールドウォーターにちなんで命名された。(中略)上院議員ゴールドウォーターは勝手に精神鑑定をした雑誌記事に対し名誉棄損訴訟を起こし、$75,000の賠償が認定された。上記のアメリカ精神医学会倫理規定は、1973年に第1版が制定され現在でも有効である 。」

  このルールがある限りなかなか公表できませんよね。それでもめげずに公表した分析結果もあって、当然のことながら結果はトランプは大統領には不適格とレッテルを貼っていました。

(注)バリー・ゴールドウォーター上院議員は、選挙で民主党のジョンソン大統領に負けた候補で、トランプと似た者同士の政治家でした。彼は党内極右と言われ、公民権法案にまで反対し、KKKが彼を支持したためかなり悪いイメージを持たれました。それもトランプとの類似性を想起させます。

  さてトランプはツイッターをもぎ取られ、「言論の自由の侵害だ」と騒いでいますが、それは自由のはき違いです。アメリカには通信品位法という法律があります。その中で有名な230条に書いてあるのは、

「インタラクティブ・コンピューター・サービスのプロバイダーまたはユーザーは、プロバイダーまたはユーザーが、わいせつ、淫ら、扇情的、不潔、過度に暴力的、嫌がらせ、その他好ましくないと考える素材へのアクセスまたは利用可能性を制限するために善意で行ったいかなる行為について、その素材が憲法上保護されているか否かに関わらず、責任を負わない」

  平たく言えば、プロバイダーがアクセスや利用を自発的に制限しても、善意に基づく限り法的責任を問われないという趣旨で、SNS運営企業が自らの裁量で投稿内容を削除できることを保証しています。

まあ、トランプ支持者に言わせれば、彼への制限は悪意に基づいているとなるに違いないでしょう(笑)。

  この法律自体、問題ありとして議論に上っているのですが、常識的に考えても「暴力の扇動」をすることはあってはならず、言論の自由のはき違いもはなはだしいと私は思います。

  さらに言えば、ツイッター、フェースブックなどアメリカの巨大SNSの脅威が言論の自由を脅かしているとの論調も見受けられましたが、それはお門違いです。大手の巨大化の弊害はもちろんありますが、それは独禁法などの範疇の問題で、言論の自由とは分けて考えるべきです。

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1 コメント

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Unknown (ぽんきち)
2021-01-16 13:00:11
林先生

ご無沙汰してます。ポンキチです。
最近は、先生のアドバイスに従い、徐々にドル買い
をしてますが、100円にはなかなかいかないですね。

ブログの内容とは関係がないのですが、最近韓国映画
「国家が破産する日」を見ました。内容は、1997年
に韓国で起こった通貨危機を題材にしたものです。
登場人物の一人は危機に乗じて一山あてるべく、次の
ような行動をとりました。
①ドルを購入する。(国の格付けが引き下げられると
真っ先に為替が反応するため。)
②不動産が10%から15%下落したタイミングで、
まとめ買いする。(借金返済の為に自宅を手放す人が
あふれたため)

林先生は米国債の投資を推奨されていますが、もしも
将来日本でも同じようにことが起こったら(起こって
欲しくないですが)、羽あがった米国債をどう利用され
ますか?

puffinさん

ご無沙汰してます。
コロナ後の昨年3月に始めた投資は、ほぼ全て清算
しました。低迷しているオフィスリートを残すのみ
です。最近の株式市場は実態と乖離してると思った
からです。puffinさんのほうは如何されてますか?
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