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バフェットじいさん、大丈夫? 2

2015年05月08日 | 戦後70年、第2の敗戦に向かう日本

   前回はバフェットじいさんの投資活動で、私が疑問に感じている点を3つ上げました。そして最後に彼が「金利が正常化すれば、株価は全般的に割高のようにみえる」と発言したところまででした。その後、そのせいかどうかわかりませんが、NYダウは下げ続けています。

   それに加えて一昨日はイエレン議長がIMFのラガルド氏との対談講演で「一般的に言えば現在の株価はとても割高だ」と彼女にしては珍しくかなり強い牽制 球を投げました。両者の共通点は単に株価が高いと言っているのではなく、『金利が異常に低いので株は高く買われており、金利が正常に戻ると株価は下がるか もしれないので注意しなさい。』と言っている点です。株式投資をされている方、要注意です。昨日は日本株まで240円ほど下落しました。二人の影響力はと ても大きなものがありますね。

    ではバフェットじいさんとバークシャーの話に戻します。

  第2回目は、バークシャー・ハサウェイ社の会社の本当の形をみなさんにお示しします。14年末のアニュアルレポートからの引用で、会社のサイトに行くと英語ではありますがどなたでも見ることができます。http://www.berkshirehathaway.com/2014ar/2014ar.pdf

   まず投資勘定で保有している株式の状況です。pdfをコピペしたのでちょっと見づらいですが、項目としては会社名、会社ごとの持ち分シェアー、簿価、時 価の順です。たとえば最初にあるAMEXの発行済株式の14.8%に相当する株を保有していて、当初の投資額は1,287百万ドルだったが、時価は11倍 の14,106百万ドルになっている、と読みます。投資額の多い15社をリストアップしていますが、下の順番は投資時期と思われます。

Investments

Below we list our fifteen common stock investments that at yearend had the largest market value.12/31/14  millions

                 % of Owned     Cost*       Market

American Express Company     14.8       $ 1,287     $ 14,106

The Coca-Cola Company      9.2       1,299      16,888

DaVita HealthCare Partners        8.6        843      1,402           

Deere & Company           4.5      1,253      1,365

DIRECTV              4.9      1,454      2,134

The Goldman Sachs Group,            3.0      750      2,532

International Business Machines     7.8    13,157     12,349

Moody’s Corporation         12.1       248     2,364

Munich Re              11.8       2,990      4,023

The Procter & Gamble                    1.9       336      4,683

Sanofi                   1.7       1,721      2,032

U.S. Bancorp               5.4       3,033      4,355

USG Corporation            30.0        836      1,214

Wal-Mart Stores, Inc.            2.1       3,798      5,815

Wells Fargo & Company        9.4      11,871      26,504

Others                               10,180      15,704

Total Common Stocks Carried at Market        $55,056    $ 117,470


  みなさんはあまりバークシャーの中身を見る機会がないと思いますので、じっくりと見てください。勉強になると思います。

  上記の中ではこのところ話題にされているIBM、コカコーラ、そしてウェルス・ファーゴやAMEXが極めて大きな構成比になっていることがわかります。4社の時価総額だけで全体の6割を占めます。

   そうだ、ニュースでは取り上げられていないので指摘し忘れましたが、私は最近のAMEXにも疑問を持っています。カード事業はいいとしてもネット化の進展 でトラベル・エージェントが不要になりつつあるからです。それと一番おかしいと思っていたのは英国の小売スーパーであるTESCOへの投資でした。何故お かしいかの理由の一つは、TESCOは日本で「つるかめ」という、失礼ながらとんでもない小売スーパーを買収していた からです。じいさんは「TESCOは歴史的失敗だった」として売却し、444百万ドルの損失を出しています。そのためリストにはもうありません。上記のリ ストでは、IBMを除けば買値より相当利が乗っていますので、とやかく言うレベルではないのかもしれません。

  これらがバークシャーを語る上でよく話題に上る投資勘定の中のポートフォリオです。しかしバークシャーをこの投資勘定で見るのは実は全くの誤りです。何故ならこの投資から上がって来るキャッシュフローは実に小さいからです。

   投資株式の時価評価資産額は合計欄の117,470百万ドル(14兆円@120円)ですが、会社の総資産額は526,186百万ドル(63兆円)で、総 資産のうち投資株式は22%を占めるにすぎません。その中でも大きなコカコーラは全体に対してはわずか3.2%、IBMは全体の2%にすぎないので、その 株価が上下しても損益にはほとんど影響はないのです。

  ではバークシャーとは何者なのか、売上と税前利益の構成比で見てみましょう。数字ばかりが並びますが、百万ドル単位で14年の数字を載せます。

             売上    構成比    税前利益   構成比

保険         45,625    24%     7,025       25%

鉄道・エネルギー        40,853    21%     8,880       32%

ロジスティック         46,640           24%                435        2%

製造業           36,773     19%      4,811      17%

サービス、他         20,802    11%     3.385      12%

投資         3,782     2%     3,569      13%

合計         194,673(23.3兆円)   28,105(3.4兆円)

   バークシャーとは売上23兆、税前利益3兆円のコングロマリット(複合企業)だということがわかると思います。上の分類では鉄道とエネルギー関連を一緒 にし、製造業もひとまとめにしたため大きな数字になっていますが、単一事業では保険分野が最大分野です。投資の神様の収益の源はわずか1割強の投資事業か らではなく、圧倒的に保険や輸送などその他の実業からの収益なのです。

   再度申し上げますが、投資の中でコカコーラが15%を占めようが、IBMが10%を占めようが、実はどうでもいいと言えるほどの小さな数字なのです。 バークシャーについてものしり顔で語る人がバフェットの株式投資ばかりを話題にしたら、苦笑しながら上の売上・利益の構成比を教えて上げましょう(笑)。

 ではバークシャーの将来をどう見るのか?

次回につづきます。

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1 コメント

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Unknown (Owls)
2015-05-09 11:48:03
こんにちは。

バフェットは日本でも大変有名ですが、
バークシャー・ハサウェイ社がどんな会社かは
意外と知られていません。かくいう私も最近まで
投資ファンドのお化けかと思ってました(笑)

昨日、米国の雇用統計が発表されましたが、
失業率からしてアメリカは完全雇用に近い状態では?

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