前回はバークシャーは投資会社などではなく、実は保険・鉄道・エネルギーから製造・サービス部門までを有するコングロマリットだということを数字で説明しました。数字を書くと見にくくなってしまい、申し訳ありません。ブログの書き方を勉強しないといけませんね。
これまで私は「じいさんが死んでも会社のキャッシュフローは万全なので大丈夫」と言い続けてきました。その理由を説明します。
じいさんが死んでも大丈夫なのは、後継者がうまく投資を続けるからではなく、まず第一は保険会社だからなのです。しかも彼の保険会社はみなさんが想像する一般の保険会社の顔と、そうではなく世界中の損害保険会社が自社の損失ヘッジのために保険を掛ける再保険会社の顔を併せ持っています。そこからの上がりがバークシャーの収益を盤石なものにしています。
彼は「受け取った保険料はコストのかからない投資のための原資だ」と言っています。銀行なら預かった原資には金利を払いますが、損害保険会社は受け取り保険料に利子はつけません。「キャッシュが先に入る商売ほどおいしものはない」とも言っています。なんだか「もらったものは俺の物」という感じですが、本当はもらったのではなく「預かったもの」なのです。
じいさんは若かりし頃、今を去ること48年前の1967年に初めて小さな保険会社を買収しました。払ったのはたったの860万ドルです。それが買収も重ねましたが今や年間数十億ドルもの純益を上げる世界有数の保険会社になっています。保険料は帳簿上は預かっているので「負債」ですが、保険金を払わないで済むといつしかそのまま利益になります。金の卵を産み続けるがちょうをアメリカではキャッシュ・カウ(乳牛)という言い方をします。保険部門はバークシャーのキャッシュ・カウなのです。
バークシャーが再保険部門を持つメリットを説明します。例えばハリケーン・カトリナで莫大な保険金支払いが生じると、各損害保険会社から再保険会社に支払い請求が来ます。その金額が大きすぎて払ってもらえないと金融パニックになります。そのため各保険会社は信用ある再保険会社を慎重に選定するようになります。そうなると再保険引受能力の高い大きな会社が有利になり、世界一のバークシャーの再保険部門はますます大きくなるという図式になるのです。
じゃ、バークシャーはいつまでも万全かというと必ずしもそうではありません。理由の一つは天変地異の激化と日常化による再保険会社の収益力低下の可能性です。2つ目は、儲かると思えば他社の参入があり、利益率が低下するからです。
バークシャーを見る上でもう一つ大切な部門は鉄道・エネルギー(発送電)部門です。バークシャーの部門としてはかなり巨大なのですが、比較的新しい部門です。この部門は保険とは正反対で、儲ける前に巨額の投資が必要で、カネ喰い虫部門です。鉄道・エネルギーは日常生活に非常に大事な部門ですが、アメリカでは超古くさい部門と見られていました。そのため安値に放置されていたので、そこにバフェットじいさんが目を付けたのです。有力会社を安く買い、その後に買収を重ねて巨大化してスケールメリットをものにする、いつもの手法です。特にリーマンショック時には爆買いしています。
私はこの部門への投資を、バフェット流のカネ繰り上手と見ています。先にカネが入りしかも儲け過ぎの保険部門を抱えているので、逆に先にカネが出て行く設備産業を抱え、巨額の償却費で利益を圧縮し節税するというカウンターバランス経営です。両者のサイズは計ったように同サイズです。そしてもちろん巨額設備投資は回収期に入れば、巨額のキャッシュフローをもたらすことになります。
バークシャーの保険も鉄道・エネルギー部門も相当程度に出来上がった部門のため、バフェットじいさんがいなくなっても万全ではあります。これが私の言う「じいさんが死んでも会社のキャッシュフローは万全なので大丈夫」の根拠です。
両部門の売り上げはバークシャーの45%を占め、利益では57%を占める大事な部門です。
だったら私は今後もバークシャー株は大丈夫と見ているのか?
みなさんの心配はバフェット・プレミアムが剥げ落ちることでしょう。つまり彼が経営をしているうちは同じ収益を上げていても株価にはプレミアムが付いて回る。しかしいなくなると同じ収益を上げていても株価はプレミアム分、安くなるにちがいないという見方です。
私もこの見方はこの先でかなり当たってくると思います。バークシャーのすごさは、アニュアルレポートの冒頭にあるS&P500とのパフォーマンスの比較表に現われています。1965年以来の株価の上昇率はバークシャーが税引き後で平均22%、S&P500が税引き前で10%です。今後はこれほどの差を維持できるか疑問です。理由は以下の3点です。
1.投資分野;世界中がカネ余りで、投資ファンドが過当競争時代に突入しつつある。バフェットじいさんの目が曇ることがでてきた
2.事業分野;保険と鉄道・エネルギーに加えて利益成長の見込める巨大な成長分野が見出せていない
3.株価水準;アメリカの金融超緩和はいつまでも継続しない
1.と2.の両者に共通しているのはバフェットじいさんがこの10年ほど言い続けている「巨額投資機会の枯渇」です。巨体がさらに成長するには小さく生んで大きく育てるのでは追いつかない。どうしても巨額投資機会が必要なのです。バークシャー自体が巨大コングロマリット化する理由がここにあります。一つの分野で支配的になってしまうため、利益成長を続けるにはその他の分野に進出し新規分野で巨大化する必要がある。それを続けると必然的に複数事業を手掛けるコングロマリット化せざるをえないのです。つまり池の中の大魚であればまだしも、池の中のクジラになってしまったため、他の池を探さざるを得ない。だがそうそううまい池は簡単に見出せないのです。
そしてもう一つは彼自身が警鐘を鳴らしているように、緩和政策の変化が市場に与えるインパクトです。こればかりはバフェットじいさんが生きていても、自分の力ではどうすることもできません。
ということで私の見立ては変化しつつあります。私は91年にバフェットじいさんにソロモンブラザーズが救われた時からこの会社をフォローしています。著書を書いた4年前もそれ以降もまだまだ行けると思っていたし、株価も十分に上昇しています。しかしそろそろ巨大化の故の限界が見えてきたように思えます。もちろん会社の収益の仕掛けの根本は出来上がっているので、株価の成長が一気に止まることはないでしょうし、S&P500程度の成長はもちろん、それ以上の可能性は十分にあると思います。でも、これまでとの比較ではやがてスローダウンは避けられないだろうというのが私の見立てです。
ですので、すでにバークシャーを保有している場合はそのまま継続をお薦めしますが、新規の投資はB株へのおためし少額投資を別にすれば、ストップサインを出します。ころばぬ先の杖です。
バークシャーの一株は22万ドルもしますが、B株は1,500分の1なのでわずか146ドルで買えます。
以上、私はバフェットじいさんが大好きですが、今回は「バフェットじいさん大丈夫?」でした。
BRK株については、2年前から外貨投資の一環として、米国債・米国株ETF(VTI・IYR)と並んで、重点的に毎月購入を重ねていました。
今回の内容は、非常に興味あるものでした。
BRK株のリスクは、バフェット・マンガー両氏の年齢リスクだけかと思っていましたが、そうもないようですね。
購入開始時の株価はBRK.B株が80ドルくらいで、為替の差益も乗って、時価評価額が総投資金額の約2倍になって、かなり含み益が出ている状態なので、半分だけ利確することにしました。
これで、万一倒産するようなことがあっても、損害は出さないで、今後も安心して見ていくことができます。
今後も、米国債に限らず、こうした示唆を頂けると幸いです。
今後とも宜しくお願いします。
BRKb株に投資されていたんですね。短期間でかなりのパフォーマンスを実現できてなによりです。
倍になったら半分売って、あとはコストゼロの保有を継続、超安全な投資法ですね、賛成です。
バークシャーのいいところは、事業会社群をポートフォリオとみなしてリスク分散をはかり、各経営者の手腕に任せる。たとえ破綻する会社が出たとしても、全体はびくともしないでしょう。
今後もバークシャーに限らず、様々な話題に触れたいと思います。
ブルームバーグによると
バークシャーはIBMとウエルズファーゴの株を
買増をしたとか。バフェットも時間との戦い
生きている間に流石と言われる結果になるか?