ストレスフリーの資産運用 by 林敬一(債券投資の専門家)

新刊「投資は米国債が一番」幻冬舎刊
「証券会社が売りたがらない米国債を買え」ダイヤモンド社刊
電子版も販売中

イアン・ブレーマー氏の見解

2014年04月21日 | ニュース・コメント
 ある方から以下のようなコメントを直接いただきました。

 「ウクライナ問題はかなりこじれて一層深刻化しているのに、本当にたいしたことなく終わるの?金融市場は大丈夫なの?」というものです。

 私は中国リスクのお話しの前に、3月の初旬以来ウクライナ問題をかなり楽観的かつ簡単に片づけていました。「中国問題に比べれば金融市場への影響はたいしたことはない」と言いきっていました。実はその後欧米・ロシア・ウクライナの話し合いで合意があっても、逆にウクライナ問題がこじれても、市場はたいした材料として反応していません。また株式のアナリストなども株価変動の要因としてコメントに上げることがほとんどなくなってきています。みなさんも意外な感じを持たれているかもしれません。

 今日はウクライナ問題に関して私の考え方を多少裏付ける意味で、権威ある方の見解を紹介します。それはアメリカのユーラシア・グループ代表のイアン・ブレーマー氏の見解です。ブレーマー氏は世界の様々なリスク分析と将来見通しを専門にしていて、分析の的確さは東西随一で、常に私が言動を最も注目しているアナリストの一人です。

 今回は本日、4月21日(月)付けの日経新聞朝刊のコラムに掲載されている氏の「オピニオン」をみなさんに紹介します。タイトルは「新たな冷戦は起こらない」です。

本日の記事のポイントを列記しますと、

・今回のウクライナ問題は米ロ関係の転換点となり、9・11以来最も重要な出来事だ

・ソ連時代と違い、ロシアは強大な友好国を持たないし、新たな友好国を獲得する力もない

・ロシアの昨年の経済成長率は1.3%しかなく資源輸出への依存度が高いが、資源価格は高騰しないので成長力の回復はない

・ロシアは中国を自陣に引き込むことはできない。なぜなら中国の主要輸出先は欧米で、それらを敵に回すことはできないため

・しかも中国はチベットと新疆ウイグル自治区で自治要求問題を抱えており、ウクライナの分裂を許せば、自国に跳ね返る恐れがある


 こうしたことから「新冷戦時代などにはなりえない」というのが氏の見解です。私の見解よりこの問題の影響を大きく考えていることは確かですが、基本的方向は私が述べていた「ロシアは経済力が落ちているし、エネルギーを人質にとって欧米と対立すれば自爆テロになる」のでそんなことはしないという楽観論に通じる部分があると思われます。

 こうした見解がその通りになるのか否かはもちろんわかりませんが、私は依然としてウクライナが相当程度こじれても世界の金融市場へのインパクトはさほど大きいものになることはないと考えています。理由は3月に述べているとおり、ロシアの経済的影響力が世界に対して、とりわけ日本に対して大きくないからです。


以上

コメント (1)    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 中国リスクについて その7 | トップ | 中国リスクについて その8 »

1 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
Unknown (Owls)
2014-04-22 20:41:33
こんにちは。

確かに、今のところはウクライナ問題は騒ぎの割には欧米市場への影響は軽微ですね。ロシアにしてみれば、クリミアの海軍基地確保とウクライナのガス代を欧米に肩代わりさせる、ロシア系住民の自治権拡大程度で手を打つのが、最も効率的な勝ちだったのでは?

これではロシアと国境が接しており、ロシア系住民がいる国はますます欧米接近させるだけです。政治家とナショナリストの虚栄心を満足させるだけのものでしかない。ロシアの大衆レベルではマイナス効果の方が大きく、割に合わない話だと思います。帝政ロシア時代からの歴史からしても、北欧、バルト三国、ポーランドのロシアへの警戒感を高めただけの結果になったのではないでしょうか。

それと、ややフランスの面目を潰したように思いますG7をロシアを引き入れG8にしたのはフランスだと言われています。たぶん、伝統的なドイツへの牽制政策でロシアは関わりがありました。そういう経緯でロシアの引き入れを主張したのでしょう。もちろん対アメリカもあるでしょうが。それがここまで暴れてしまうと、フランスの面目は潰れてしまいます。そういう意味ではEU内でのフランスの若干の地位低下の影響はあるかもしれません。
返信する

コメントを投稿

ニュース・コメント」カテゴリの最新記事