ストレスフリーの資産運用 by 林敬一(債券投資の専門家)

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定年退職さんへの資産運用アドバイス 3

2017年02月13日 | 定年退職時の資産運用

  これまでのアドバイスを振り返ります。

  その1では、円のリスクに対しでヘッジを行いストレスフリーになるには、金融資産のほとんどをドルにすべきだ。たとえ3分の1のヘッジだとしても、現有資産のすべてをドルにする必要がある、という計算をお示ししました。もちろんこれは普通の人にとっては極端だし、ドルへの転換自体がストレスになってしまう可能性があるでしょうから、実際にはご自分が円リスクをある程度ヘッジできる、しかもドルにストレスを感じないで済む比率を、ご自分で判断されるとよい、というアドバイスでした。

  その2では、定年退職さんの今後の収入のかなりの部分を占める生保の年金についてでした。だいぶショックだったようですが、まず生保の年金商品は複雑なので、条件などすべてをしっかりと把握するべきだ。そして生保の年金は生保が投資している先と生保自体のリスクの2重取りであることを認識すべきだ、ということを申し上げました。

 

  では定年退職さんのご質問にあって積み残しているものに、私なりの回答を差し上げたいと思います。

 まずドルへの投資についてです。

 先生の言われる米ドルへの変換とは米国債への投資の事なのでしょうか

私の言う「米ドルへの変換」とは、米国債直接ではなくドル預金あるいはドル建てMMFへの転換を指します。

  これまで米国債10年物金利が1%台だったりしたとき、為替は円高に振れるため、とりあえず高い円をドルに転換し、金利高を待つという戦略が取れます。それを実際に実行された方がはけっこう多かったと思います。

   もちろん金利動向によっては、直接米国債への投資もありうると思います。為替や金利予想はとても難しいので、今の為替と金利でよしと判断されるなら、日本円から米国債への直接投資でも決して悪い判断ではないと思います。今だと金利は2.4%前後、為替は113円前後です。

また一度に投資するのがストレスであれば、時期やレベルの目標を定めて分散して実行することもありでしょう。

 退職金の2,000万を米国債30年ものに投資する

企業年金1,600万と退職金を併せて3,600万を米国債30年ものに投資する

など、試行錯誤の毎日です【これが結構楽しい】

  楽しみながらシミュレーションしてみるのは、勉強にもなりよいことだと思います。証券会社の外債サイトに行くと米国債のページがあり、金利と為替のシミュレーションができるようになっています。今の金利だと、年限別にいくらまでの円高に耐えられるかを計算してくれます。

 

  では本命の生保の年金についての方針です。私の基本的考え方は以下のどおりです。

①   毎月の生活必要額を計算する。

②   それに対して公的年金だけで足りるか、少し生保年金で補うべきかをしっかり計算する。その場合、余裕を見ない。何故なら定年退職さんは十二分な余裕資金をお持ちだからです。

③   公的年金で不足分がある場合、生保年金は年限を限定せず終身を選択する。それが老後の一番の安心材料だからです。ただしご本人が死んで奥様が残る場合を想定し、年限の長い選択肢である20年の確定保証を選ぶこともよい選択でしょう。ご自分が早めに死んだ場合、余裕資金がほとんど残ってしまうので、奥様へは十分な資金が残るハズです。

④   ついでにその場合、奥様はお子さんへの遺産など考慮せず、余命を計算して等分し、毎年その額を使い切ることにする。こうすれば奥様も余生を楽しくすごせるはずです。

 こうしておけば、たとえ今後の米国債投資に失敗しても大丈夫です。米国債投資は失敗などありえませんが(笑)。

   次です。

 円の現有所持のリスクはどの程度考えられるのでしょうか

  とても一口で説明できるものではありません。これまで日本財政のリスクなどについて、著書とブログで長々と議論を重ねてきました。今後もしていきます。

   今回私のブログで「インフレによる債務の削減」という議論に関して、私の考えを「日本財政につける薬」と題して述べ始めています。日銀政策の行き詰まりが明らかになったため、代替手段として考えられています。その2回目を近々書きます。

   そうした禁じ手以外に打つ手がなくなりつつあり、しかも安倍政権は財政赤字を気にしていません。多くの方が定年退職さんやこのブログに集まる方々のように円リスクに目覚めると、案外早いスピードでリスクが顕在化するかもしれません。

  それでも一応、日本財政のリスクや円リスクをどう考えるかを簡単にのべておきます。なおリスクが顕在化しない場合は、上記の円の年金があれば、十分です。

   リスクが顕在化する場合、最悪以下のようなことが考えられます。

 1.財政が破たんに瀕しても日本国債はデフォルトさせられないので、赤字国債を日銀が無限に引き受ける。そうすることでインフレを起こし、実質的債務の削減を行う。デフォルトとは元利払いの停止や延期のことです

 2. 金利が大きく上昇し、企業業績が悪化するため、株価も暴落する。インフレには株が強いなどというのは、マイルドなインフレのときだけ。株や債券の暴落により、公的年金の資産が毀損され、支払いが予定通りできなくなる。公的年金にはインフレスライドがあるが、ない袖は振れない

 3.円が暴落する

   こうしたことが生じた時こそ、米国債へのヘッジ投資が最大限の効果を発揮することになります。年金以外の余裕資金のうち、どの程度を米国債にし、どの程度の年限にするかは、今後の生活プランと一緒にシミュレーションしてみてください。

   こうした備えがあれば、救われた投資家さんのように、晴れてストレスフリーに仲間入りすることができ、きっとその後の人生は大きく変化すると思います。

   以上です。

コメント (44)
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