今回の講演会タイトルは「マイナス金利、大丈夫か日本」です。
もちろん結論は「大丈夫じゃないよ、日本」です(笑)。
だってアベチャンがサミット直後、世界経済に危機なんかないのに消費税値上げをギブアップしてしまったからです。各国首脳のサミットでのアベちゃんへの反応が伝わってきました。だれもが「リーマン前夜?そんなことはない」で完全一致でした。
ということは、アベチャンは日本だけが危機的状況であることを自ら認めたことになります。しかも先延ばしは2度目という体たらくです。それでもサミット直後のアベチャンの支持率は、3ポイント上昇でした。ここに私は日本人のおめでたさ、危うさを感じます。
総理大臣は「解散についてはウソをついてもいい」ということになっています。今後は「解散と消費増税はウソをついてもいい」と改定されるそうです(笑)。
消費増税は伸ばすけど、20年度に基礎的財政収支は黒字にするそうです。そんなムシのいいことができるか。
クロちゃん流に言えば、2%のインフレ目標達成と同じで「消費増税も期限が来たらいつでもそこから2年後だ」ということです(笑)。格付け会社の反応をしっかり見ておきましょう。いよいよトリプルBに向かってさらに一歩です。
すでに先日申し上げた通り、彼の本命は憲法改正ですから、消費税値上げを先延ばしして人気取りをし、それがあたかも選挙の焦点であると言っておいて、実際には憲法改正をしてしまう。前回の解散総選挙後の強引な安保法制採決と同じ手口で2匹目のドジョウを狙っているので要注意です。「解散はない」と言明しているようなので、あるに違いないと考えておきましょう(笑)。
では、本題です。今回も講演時間は2時間ですが、およそ1時間を私からの講演に使い、あとの1時間は質疑応答、と言うよりも主催者の方の要望により、参加者のみなさんを交えたディベート時間にしたいとのこと。論客が多いので、おもしろい講演会になりそうです。参加者のみなさんにはすでに以下の概要をお渡ししていて、突っ込みどころをしっかりと準備していただくようにアレンジしています。講演者としては、厳しい2時間、そしてその後にさらに2時間の懇親会もあります。
概要ですが、このブログ用には、配布予定の概要に少し説明を加えてあります。それはみなさんが講演会で私の話を直接聞くことができないための補足です。では内容に入ります。1.~6.までの項目があります。
1. マイナス金利にしてまで成長を求める必要があるか
これが講演会タイトルには掲げていない、本当の問題意識です。すでに高度成長をはるか昔に終え、よせばいいのに身の丈を考えずに無理に成長を求めれば、結局はツケが回って来ます。
失敗に終わったアベノミクス
失敗か成功か、最後の判断ポイントは国民のフトコロが豊かになり、生活が楽になったか否かです。アベノミクス導入後の日本経済は、ちっとも成長していません。実質成長率はこの3年でほとんどゼロです。その理由は、一国の経済の潜在力が衰えつつあるからです。
潜在成長力の要素は、「労働人口、生産性、資本」
このうち足を引っ張っているのはすでに2千年代に入ってマイナスに転じた就業者数です。(下表を参照)それを生産性がカバーしようとしていますが、追いつきません。資本は、昔は成長の制約条件でしたが、今は潤沢すぎるので制約条件からはずれました。
就業人口だけは2020年代まで見通せる
潜在成長率は0~0.5%。それを無理に上向かせようとしている
現在の推定値はほとんどゼロ。成長率などを10年ごとに見ていくと以下のとおりで、90年代以降は大きく下がっています。
GDPと就業者数推移 80年代 90年代 00年代 10年代※ 20年代
実質GDP伸率 4.2% 0.8% 0.7% 0.9%
名目GDP伸率 5.4% 0.5% ▲0.5% 1.4%
就業者数伸率 1.2% 0.5% ▲0.3% ▲0.6% ▲0.7%
潜在成長力 4.5% 1.5% 0.7% 0.4%(15年、内閣府)
10年代の成長率は15年までです。伸びているように思われますが、リーマンショック後の09年が大きなマイナスだったため、伸びています。実質成長率は、この3年間ゼロ%台です。
2. 夢よもう一度=バブルよもう一度
夢を追えば追うほど不安感をつのらせる若年層
自分たちの所得のかなりの部分は税金・社会保険として徴収され、高齢者世代に使われてしまっている。世代間の較差は政府が隠し切れないほど拡大し、それが若年層の不安につながっている。
中高年層も決して踊らず、政府日銀のお手並みを見物している
証拠は、安全資産に積みあがる家計の金融資産
アベノミクス導入前と導入後の家計の金融資産をくらべると総額はしっかりと伸びているが、依然8割以上が安全資産に滞留したままで安全比率に変化はない。アベノミクスに踊って株式投資など増やしていない。ただし、値上がり分の増加は認められる。家計の金融資産増加をよいことに、政府は着々と累積赤字を積み上げている。政府の言い訳は、「民間が使わないので、政府が使ってあげている」、というおかしな経済理論を振り回す。それを言えば言うほど、家計の財布は引き締まる。
アベノミクス発動前12年末 現状15年末 伸率 (単位;兆円)
家計金融資産計 1,547 1,714 10.8%
うち現預金+保険 1,283 1,412 10.0%
安全資産構成比 82.9% 82.4%
政府累積赤字 1,092 1,238 13.45%
累積赤字GDP比 231% 248%
もし預金金利までマイナスにしたら、どうなるか
このブログの読者の方へのアンケート調査では、ほとんどの方がそのまま損するようなドジは踏まないという結果だった。それはつまり預金引き出し、そして取り付けつながる危険な政策である。
今回はここまでです。3.~6.は次回にて。