ストレスフリーの資産運用 by 林敬一(債券投資の専門家)

新刊「投資は米国債が一番」幻冬舎刊
「証券会社が売りたがらない米国債を買え」ダイヤモンド社刊
電子版も販売中

アメリカ大統領選挙の行方

2016年05月08日 | アメリカアップデート

  みなさん、連休はいかがでしたか。今年私は珍しく自宅にいて、旅行はなしでした。家内が昨年末から始めたキャットシッターの仕事は連休が忙しいため、お留守番です。その間、ちょうど1か月後にある講演会の準備と、読書に時間を使うことができました。

  もっとも連休寸前に家内と1泊ですが「ひたちなか」に旅行をしました。常陸と那珂の合併でできた市の名前です。快晴の天気に恵まれ、青い花、ネモフィラの花畑で有名になったいるひたち海浜公園を見て、那珂湊のおいしい海の幸をいただき、翌日は近くの笠間で陶芸の作陶体験をしてきました。

  陶芸体験は3度目で、いずれもロクロ回しに挑戦しました。最初が沖縄のカヌチャ・リゾートで沖縄の陶器、ヤチムンをまねたのですが、ロクロ回しは失敗の連続。ほとんど先生に手伝ってもらいました。2度目は山口の萩で、萩焼に挑戦。これも先生の指導を受けて、大事な部分は補正してもらいながらでしたが出来上がりは上々で、作品は家で普段よく使っています。萩ではちょうど萩市美術館で私の大好きな陶芸家、ルーシー・リーの展覧会が開催されていて見ることができました。彼女の繊細極まりない、透けるような薄さの作品に感動の嵐でした。

  3度目の今回は笠間芸術の森の中にある陶芸の丘の教室です。私も家内もある程度ロクロに慣れてきたので、指導されるままにほとんど自分の手で作り上げ、1時間程度で私は大小4つの作品、家内は5つも作り上げることができました。彩色、釉薬などは多くの色から選択可能で、2か月後にできてくるのがとても楽しみです。

 

   さて、アメリカの大統領選挙は遂に一騎打ちとなりました。政治問題は扱わないのがこのブログの方針ではありますが、アメリカの大きなリスクにちがいないため、私がこの大統領選の行方をどう見ているかを、しっかりとお伝えするべきだと思い、今回はこれについて書きます。

  「トランプさん、ありがとう」、昨年8月15日の私の記事のタイトルでした。スコットランドの聖地巡礼ゴルフツアーでトランプ氏が作ったゴルフ場の素晴らしさに感動して書いた記事です。覚えている方もいらっしゃると思います。その時の書き出しは「何かとお騒がせな大統領候補トランプ氏ですが・・・」というものでした。

   その時点ではもちろん、彼が最後まで残っているとは思ってもいませんでした。それがお騒がせどころか、なんと共和党の大統領候補に決定です。私は3月のスーパーチューズデーの結果を見て、「戦いはヒラリーとトランプの一騎打ちで決まりだ。ヒラリーはトランプ勝利の結果にほくそ笑んでいるにちがいない」と書きました。じゃ、本当にヒラリーはほくそ笑んでいられるのか、あるいはこの先もトランプは予想を裏切り続け、11月の本選で大統領になるか?

   私の予想はもちろん「なれっこない」です。

  共和党としては不本意ながらもこの事実を受け入れて、党を挙げて彼を支持しようとするのでしょうが、全員が本気で支持するところまで行くとは思えません。本選では共和党員でもヒラリーに密かに投票する反トランプ派も数多く現れるでしょう。すでに共和党元大統領ズであるブッシュ親子と撤退候補のジェブ・ブッシュがトランプ不支持を正式に表明し、有力議員も支持しないとの発言が続いています。

  ただし逆に共和党と限らず「隠れトランプ」もかなりの数存在し、その人たちは密かに彼に投票するかもしれません。密かにというのは、彼への支持は恥だと思われるからです。

  ですのでヒラリーが簡単に勝てるかというと、簡単とは言えません。

  じゃ、何故最終的にヒラリーが勝つと確信的に言うのか。

  アメリカ人も良識派が大多数だからです。この戦いはどんな層の人がどちらを支持するなどという一般論での戦いではなく、「良識が勝つか非良識が勝つかの戦い」で、初めから勝負はついているのです。それが私の見方です。

  トランプを支持する人たちは、いままで言いたくても言えなかった人種差別的感情や安保ただ乗り論などをおおっぴらに言うトランプを代弁者として支持し、自らもカミングアウトしてしまいました。しかしそうした非良識派、あるいは非常識派はあくまで少数です。多くのアメリカ人は真剣に人種差別の解消に努力し、外交安保問題をまじめに考えています。また心には思っていても、決して出してはいけないと抑制するのが大多数の良識ある人間です。

  そして、少なくともほとんどの有力なクオリティーペーパーと言われる新聞社・雑誌社の多くは社説などで反トランプを表明。学会、法曹界、良識あるセレブリティも反トランプを表明。国際社会からも投票権はないももの、メキシコはもちろん、例えばローリングストーンズのようにキャンペーンに自分の曲を使わないでくれと宣言するアーティストまで何人も出てきて、反トランプは圧倒的多数です。私の周りのアメリカ人の友人も、「トランプはアメリカの恥さらしでしかない」と切って捨てる人が圧倒的です。

  ということで、私の予想はヒラリーの勝です。別にヒラリーが好きだというわけではぜんぜんないことは申し添えておきます。もし彼女に死角があるとすれば、相手はトランプではなくFBIでしょう。しかしFBIもこの期に及んでトランプ支持に回るようなヘマはしない、それが私の見通しです。

  今後日本でも株や為替のアナリスト連中は政治的リスクとしてトランプ大統領誕生のリスクで騒ぎ立てるでしょう。しかしそれはタメにする議論でしかなく、時間の無駄使いです。

  政府の中枢からもヘッジの意味でトランプを無視しない発言が出るでしょうし、トランプが日本を非難するトンデモ発言に反応するでしょう。しかしそれも時間とエネルギーの無駄使いです。というよりもそれこそがトランプの思うつぼ。いままで彼はそれをテコにここまで勝ち進んだのです。「政府関係者が彼の言葉にまじめに対応することこそ、彼をサポートすることになるのだ」ということ、忘れないでほしいと思います。


    以上、「トランプはジョーカーであって切り札ではなく、リスクなどでは全くない」。それが私の結論です。

 

コメント (8)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする