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不気味なほど静かな金融市場と平穏無事な経済動向

2015年05月19日 | ニュース・コメント

   新たなテーマとして、「不気味なほど静かな金融市場ととても平穏無事な経済動向」をどう見るかを取り上げています。

   一回目はアメリカ経済全体の構造について、GDPの構成比をもとに説明しました。大事なことは個人消費が約7割を占めるためその影響力が非常に大きく、その他の項目の影響力は小さいということを数字で示しました。

  そして1-3月期は成長率が0.2%とそれまでに比べ低成長でしたが、それを言い当てたアトランタ連銀のGDPナウキャストが今とても注目されていて、4-6月期も現時点の見通しは0.7%成長と、やや低調になっていることを伝えました。

  ところが昨日のアメリカの報道でサンフランシスコ連銀「1-3月期GDPの数字は季節調整の方法によってはプラス1.8%になる」という研究レポートを出しています。「季節調整」の詳細についてはまたの機会に譲りますが、要は経済指標は季節性が強いため、それを生の数字では出さず、一定のフォーミュラで均して見ることに決めている、ということです。日本でもその他の国でも同じですが、季節調整の方法は種々あります。

 

  さて今回はアメリカ経済の先行きに対し低成長見通しもある中で、株式市場と債券市場が若干違う方向を目指しているようだ、ということを指摘します。

  このところ発表されるアメリカの経済指標は若干スローな数字が多いのは事実ですが、ここにきて金利は逆に若干上昇し、子なし爺さんからも「いつの間にか2%超え」とのコメントが入っています。金利はむしろ回復の兆しを読んでいるように思われますが、それをどう解釈したらよいのでしょうか。

  昨年の秋FRBは量的緩和の方向を転換し、今は利上げの時期を探っています。私は金利の上昇はそうした政策転換の方向を素直に示しているものと考えます。

  では、実態経済がスローダウンしているのに金利はむしろ上昇するという相反する状況下で、株価が昨日史上最高値を更新するほど堅調なのは何故でしょうか。先日のブログに書きましたがバフェットじいさんは「金利が上昇してくれば今の株価レベルは割高だ」と言っています。金利の上昇と株価の高値は相反します。

  ではそうした矛盾する現実をエコノミストはどう説明するのでしょうか。説明ぶりとしては例えば以下のようになります。

「実体経済のスローダウンは一時的なもので、順調な雇用情勢を背景に個人消費は堅調さを維持するだろう。これまでの経験からすると中央銀行による金利引き上げの第一段では株は買いだ。特に金利が歴史的に見て超低金利であるため、多少の引き上げでは実体経済に水を浴びせることにはならない。株価の堅調な推移は今後経済がふたたび成長軌道に戻る可能性を見ているためだ」、てな具合です。

これは私が勝手に付けた理屈でエコノミストの誰かが言っていることではありませんが、説明しろと言われればこんなものかな、というごく当たり前の説明ぶりを書いてみました。ではみなさんはこの説明に納得できますか。私は特に間違いはないかなと、勝手に思っています(笑)。

   

  次のように言っては元も子もないのですが、実は私は『こうした小さな動きは単なる経済の循環と相場のアヤに過ぎず、いちいち解説するほどのことではない』と思っているのです。

   こうした小さな動きとは、

・GDP経済成長率が0%台にスローダウンした

・10年物金利が1.9%前後から2.2%を越えてきた

・ダウ平均が1万7千ドル台から1万8千ドル台に回復し高値を更新した

   株式投資をされている方にとっては、とても大事な動きなのだろうと思います。それは自分が保有する株価の先行きを必死に見通したいということからだと思うのです。しかし私のように常に数年先を見通しながら目先のアヤにとらわれない者から見ると、このところの細かな動きがどうあれ、「アメリカが他国に比べて力強く成長するであろうトレンドに変化はない」、と見るのが妥当だと思っています。そうした長期視点を常に保持することこそ、先を誤らないための最重要点だと思います。

  エコノミストでないことは、とても気楽なことですね(笑)


コメント (2)
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