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バフェットじいさん、大丈夫?

2015年05月06日 | 戦後70年、第2の敗戦に向かう日本

  みなさん、連休はいかがでしたか。私は前半にお知らせした八ヶ岳付近で過ごした以外はずっと東京にいたのですが、普段は仕事があって私と直接合って話のできない方とお会いして、資産運用の相談を受けていました。


   さて本日の話は私の大好きなウォーレン・バフェットじいさんと彼の会社バークシャー・ハサウェイについてです。彼がバークシャー・ハサウェイ社をマネージするようになって50周年を迎えていますが、このところ彼の発言などで私には疑問に感じるいくつかの点があります。例えばポートフォリオの中身では、コカコーラ、IBM、そしてウェルス・ファーゴの3社についてです。

 疑問1.IBM株式の買い増し

バークシャーのポートフォリオの中には、いくつかの伝統的産業に属している古めかしい企業があります。例えば家具やインテリアなどの製造会社や、先日クラフト・フーズと合併したトマト・ケチャップのハインツなどです。そうした企業でも彼の手にかかると素晴らしい企業に変身し、収益に貢献するようになります。

   IBMは古き良き伝統的企業ではありませんが、消長浮沈の激しいIT業界の中ではすでに伝統産業に属すると言ってよいかもしれません。このところ業績が芳しくなく、株価も低迷しています。その株を古くから保有するバフェットじいさんは買い増しているのです。本当に秘策はあるのか、私は疑問を感じています。

 疑問2.コカコーラ株式  

   ニューヨーク市では市民の一層のメタボ化を防ぐため、コカコーラなどの炭酸飲料の大きなボトルの販売規制を検討しました。コカコーラにとっては全米、あるいは全世界の市場から見ればとても小さな影響しかないでしょうが、決して無視はできない動きだと思います。日本などで顕著に見られるように炭酸飲料に関してはアメリカなどでも客離れが進み始めています。日本ではコカコーラ社の自動販売機のほとんどからすでにコークはなくなっています。しかし日本コカコーラは炭酸飲料以外に活路を見出して、大きな飲料シェアーを維持しています。アメリカでも日本のノウハウを取り入れて活路を見出すべきでしょうが、そうした動きにはなっていません。

 その3.ウェルス・ファーゴ銀行(スーパー・リージョナル・バンク)

   バークシャーのポートフォリオのなかでも、このところこの銀行のパフォーマンスは際立って優秀でした。ところが昨日、顧客勧誘方法などでスキャンダルが発生した模様なのです。

   もともとアメリカの西部に地盤を持つとても地味で堅実な個人相手の地方銀行でした。それがリーマンショック時に中西部を基盤とする同業のワコヴィア銀行を買収して全国区に名乗りを上げ、今ではマンハッタンでもこの銀行の駅馬車マークの支店が数多く目立つようになるほど大発展を遂げています。

   FTが発表している世界の株式会社の時価総額でも、ベスト10に入るほど大きな銀行です。ちなみに14年末では金融会社としては、保険業に分類されるバークシャ―とバークシャーが筆頭株主のウェルス・ファーゴ、そして中国商工銀行(ICBC)だけがベスト10にいます。それほどの銀行が顧客の口座で勝手にクレジット・カードを発行して手数料を得たりしていたとのスキャンダルが発生したのです。以前にも住宅金融を巡る取り立てで問題になったことはあるのですが、今回はどうやら違法性が極めて高いようです。それですぐさま業績に影響が出るとは思えませんが、どうもバフェットじいさんの目が、若干濁り始めたのではないかと思わせるニュースなのです。

    バフェットじいさんの記事はバークシャーの50周年記念もあり、特に最近よく見かけるようになっています。先日かの有名なじいさん主催の株主総会がネブラスカ州のオマハで開かれ、相変わらずじいさんが6時間も株主の質問に一人で答え続けています。その後も記者会見などでじいさんの露出は多くなっています。例えば4日の日経ニュースを引用しますと、

『著名投資家ウォーレン・バフェット氏が率いる米投資会社バークシャー・ハザウェイは5月2日、定時株主総会を開いた。過去最高値圏にある米株式相場についてバフェット氏は「米国のビジネス環境が良好なことを示している」と高値は許容できるとの見方を示す一方、低金利が支えになっているとして「通常の水準に戻るなら割高に見える」と話した。 中略

   かねてバフェット氏は早期のゼロ金利政策の解除には慎重な発言を繰り返してきた。「(インフレなど)何も悪いことは起こらなかった」と金融緩和政策を改めて評価した。仮に将来、経済が混乱する局面を迎えた場合には「バークシャーは心理的にも財務的にも喜んで資金を供給する準備がある」と述べた。

   後継体制にも注目が集まっていたが、具体的な言及はなかった。「私が去ってからも企業文化は変わることはない。安心していて良い」と株主に話した。84歳のバフェット氏は、昼食を挟んで6時間を超える総会をまとめ上げた。バークシャーは現在、株式投資のほか保険やエネルギー事業などを抱え、年間の純利益はおよそ200億ドル(約2.4兆円)。時価総額は約3500億ドル(42兆円)を超え、エクソンモービルやマイクロソフトなどと並び米国で5本の指に入る規模に到達している。』

引用終わり

   そしてコカコーラとIBMについては4日のインタビュー記事でロイターは以下のように書いています。

『[ニューヨーク 4日 ロイター] - 米著名投資家ウォーレン・バフェット氏は、IBM やコカコーラなど、同氏が重点的に投資を行ってきている一部の銘柄を擁護する立場を示した。同時に、金利が正常化すれば、株価は全般的に割高のようにみえるとの見解をあらためて示した。バフェット氏の発言は、IBMやコカコーラなど、同氏が重点投資を行ってきている企業の一角が近年減収傾向にあることが背景。バフェット氏は4日放映されたCNBCとのインタビューで、同氏率いる投資会社バークシャー・ハザウェイ が第1・四半期にIBM株を買い増したことを明らかにした。IBMが今後10年で増益となるとの見通しを示したほか、IBMの自社株買いプログラムが株主にかなりの恩恵をもたらしたと評価した。コカ・コーラについては、「確固たる競争上の地位」を維持しているとの見方を示した。』

引用終わり

  どうも昔からの投資対象に思い入れが強く働き過ぎているように私には思えます。

  次回はこの続きで、世界的金融緩和と株価について彼の語った言葉を解説し、私のバークシャーに対する見方をお示しします。

コメント (12)
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