ストレスフリーの資産運用 by 林敬一(債券投資の専門家)

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ウクライナ情勢と株価 その2

2014年03月22日 | ニュース・コメント
 ウクライナを巡る情勢はクリミアの国民投票が予想されたとおりの結果となり、その後ただちに行われたプーチンの併合宣言に欧米などが効果的制裁を加えることができず、ひとまず落ち着いています。

 金融市場はプーチンが「ウクライナに対しては手を出さない」と言ったことで、安心感が拡がりました。クリミア併合宣言の翌日、世界の株価は暴落と思いきや上昇しました。もちろん事態の展開がどうなるか結論は出ていませんが、私は前回お知らせしたとおり、ウクライナ問題は世界の金融市場に激震を走らせるほどには至らないと思っています。金融市場も落ち着いてよく考えれば、さすがのプーチンも最悪の事態は望んでいないということを理解したのでしょう。

 さて一方、日本の株価は大きく変調をきたしています。特に3月7日から14日までの一週間で日経平均は947円の下げとなりました。その間にNYダウが396円の下げであったのと比べますと、大きく乖離しています。しかもその間、円ドルレートはほぼ同じレベルを保っているにもかかわらずです。

 この原因はもちろんこれまで見てきたように、海外投資家の動向によります。この3月第2週の1週間で海外投資家の日本株売りが9,753億円と約1兆円にも達しているのです。1月に大きく売り越した海外投資家は、2月月間ではわずか829億円の売り越しと、マイルドな売り越しで終わりました。このため日経平均も月間でわずか73円の下落とほとんど動いていません。しかし3月第2週に海外投資家は再び大きく売り越しました。

 その後第3週の株価はクリミアのロシア帰属が決定しウクライナ情勢が大きく動いたのに、わずか100円程度の下落に終わっています。投資家別動向は1週間遅れで発表されますので、どうなっているのかはまだ不明ですが、海外投資家の売り越しは大きくないかもしれません。

 この日本株の変調がいつまで続くのか、予想は難しいのですが、私はアベノミクスに対する外人投資家の受けとめかたが失望に変わりつつあるので、少なくとも昨年のようなユーフォリアは来ないと見ています。従って日本経済復活の兆しと言われながらも、株価はそれに強く反応しないだろうと思います。

 昨日、NISAが本格的に稼働しはじめ日本の個人投資家が勉強を始めている、というニュースが流れました。ある証券会社が投資セミナーを開催したのですが、その会場がなんと両国の国技館だというのです。株価動向がどうの、個別株の見分け方がどうのということを講師は解説しているのですが、今年になってからの株価変調を前にして私にはかなり空しく聞こえました。

 会場を出た個人投資家がインタビューに応えて言っていたことは、
「大きく儲けようと思ってはいません、少しでも増えてくれればそれでいいんです」

 私がもし会場にいたら

「だったら証券会社の売りたがらない米国債を買いなさい」

と言ってあげたいところです(笑)。セミナーの内容にもちろん債券の「さ」の字も書いてありませんでした。書いてあったのは、日本株や日本株投信、そして買ってはいけない米国ハイ・イールド投信の文字でした。

 次回はウクライナ情勢より世界経済に与える影響の大きな中国について書くつもりです。
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