ストレスフリーの資産運用 by 林敬一(債券投資の専門家)

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長期債投資と年齢について その2

2014年03月14日 | 2014年の資産運用
 3月10日付の記事、「長期債投資と年齢」にたくさんのコメントをいただき、ありがとうございます。なかでもまーくんがわかりやすくまとめをしてくれていますので、本文で紹介させていただきます。

引用
アラフィフの小生にとって、ゼロクーポン30年債を活用した資産運用(&取崩)法が最適だと確信しました。
①最大30年間、売却日まで複利運用(課税繰延)可
②20年前後保有すれば(残存期間が10年程度なら)、売却時の金利水準(価格変動リスク)は気にするほどではない
③一定額面(例えば1000$ずつ)売却していけば、満期が近付くほど受取額が増える(逓増型年金となり自然とインフレに対応できる)
④子孫に1セントたりとも残らない(使いきればの話ですが)
こんな金融商品は他にないですよ。
引用終わり


 まーくん、ありがとうございました。ゼロクーポン債による「資産運用&取崩法」いいネーミングですね。相場変動の激しい株式ではやりにくい方法ですが、償還に向けてどんどん価格変動が小さくなる債券なら十分に可能な運用法です。

 次に、より高齢の方を対象に向けたアドバイスです。基本的には「運用&取崩し」がお薦めであることにかわりはありません。

 私は著書で、定年を迎えられたある財務部長さんにアドバイスをしたときのお話を書いています。その時60歳でしたが30年債をお薦めしました。しかし本の内容と今回のアドバイスには差があるので、「あれっ?」と思われる方がいらっしゃるかもしれません。念のために私のコメントを追加します。

 「あれっ?」の内容は、高齢の方が元本をどう考えるべきかについてです。

 著書のP.103で私は財務部長さんに以下のアドバイスをしています。

引用
3.長期債は金利変動による価格リスクが大きく、ドル建てなので為替リスクもあります。でももう元本のことなんか忘れて、毎年の金利収入でエンジョイされたらいかがですか。
引用終わり

 私は「元本なんか忘れて」というアドバイスをしています。今回のアドバイスでは元本を使いきれというアドバイスでかなり差があります。これは以下の理由によります。

1.30年後は90歳で償還元本を自分では使えないが、もともと裕福な方であり、途中売却はしなくても困らない方であること

2.97年当時、米国債一番のリスクは為替リスクであると誰もが認識していたこと


  1は説明するまでもなく、当然の理由です。2の為替については、97年は1ドル105円程度でしたが、それ以前に一瞬79円台に突入したことがあったので、リスクを気にされると思い、大事なことは元本より毎年のキャッシュフロー収入だと言ったのです。つまり金額の小さな金利だけの為替リスクなら、大きな為替変動でもたいしたことはないという意味合いです。

 この2つの理由は今でもアドバイスする際は相手の方のプロフィールによっては有効だと思います。

 また為替リスクについては、本の読者の方に向けては安心材料を提供するつもりで為替と金利のシミュレーションを示したりしました。著書を書いた11年7月時点でも1ドル81円で、まだまだ円高が昂進する可能性が大いにある段階でした。実際には「金利は為替に勝ってきた」のですが、将来までは保証のかぎりではありませんので、為替は問題なしというわけにはいきませんでした。

 しかし現在はどうでしょう。将来に渡ってどこまでも円高が進むなどと言っているのはあのムラサキおばさんくらいで(笑)、ブログの読者のみなさんもほとんど長期の為替リスクを深刻には感じていないと思います。これは米国債投資にとっては強い追い風です。もちろん為替リスクがあることにかわりはありませんが。

 こうしたことから今回の記事で私は為替の議論は取り上げませんでした。コメントをつけていただいたみなさんも、将来の為替リスクを気にされるより、為替のゲインを目論んでいる方のほうが多いと思います。

 さて、今回のコメントには課税問題もありました。税制の変化を予想はできません。しかし税逃れの商品は続かないでしょう。

 まーくんがばかボンドさんへのコメントで解説をしてくれていますが、16年からの税制改正で、グレーゾーンがかなりなくなるようです。グレーゾーンとは、いつぞやもブログ上で話題になったのですが、ゼロクーポン債と同じように金利のかわりに元本が増える構造を持ったディスカウント債で、非常に小さな金利クーポンを名目的に付けてある商品です。はっきり言ってこの商品は、日本の税制の隙を狙い日本人投資家のみを対象に、日本の証券会社などが国際機関に発行させているものです。小さくても金利があるので利付債の認定となり、金利には源泉税を払う。最後まで持ち切らず償還寸前の途中売却をすることで、キャピタルゲイン分の税金を逃れるという商品です。こうした税逃れの商品はいずれは逃げ道が塞がれるのは避けられないと思います。

 みなさんへのアドバイスは、現時点での税制の違いによる優劣判断はプライオリティを下げて、ご自分の方針に沿うか否かをより重要な判断材料にするのがよいと思います。

コメント (9)
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