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ウクライナ危機をどうみるか

2014年03月16日 | ニュース・コメント
 株式市場はウクライナを巡る危機的状況により、波乱の展開を見せています。円安と株高に頼るアベノミクスも消費増税だけでなく、こうした事態で大きな影響を受けそうです。

 実際の世界の株価はすでに2週間余り下げ続けており、その原因はウクライナ情勢だけではなく、中国の国内をめぐるリスクも反映しています。ではそうした状況が株式相場を中心に金融市場をどう左右するのか、私の見方を紹介させていただきます。

 結論を先に申し上げますと「ウクライナ危機は一時的撹乱要因、中国問題ははより大きな撹乱要因になりうる」と思っています。ではまずウクライナ危機とロシアについてです。

 ウクライナ情勢は戦争のリスクをはらみ、より大きな危機と見られがちです。金融市場にも大きな波乱がありうると思います。しかし私は3月4日の記事でそれを一時的撹乱要因であると決めつけています。その理由をより掘り下げて説明します。

 今回の危機の最大のリスクは、ロシアが欧州を人質にして世界を震撼させることです。欧州は天然ガス供給の3分の一をロシアに依存していますが、それを切り札にしてアメリカを含む世界と対峙することが最大のリスクです。しかしそれはロシアにとっても自爆テロに等しく、欧州が干上がると同時に自分も干上がり、ソ連崩壊以降築き上げた信用のすべてを失うことになります。ロシアは天然ガスや石油といったエネルギー産業に経済の多くの部分を依存する特異体質を持っています。輸出額でいえばなんと7割が資源・エネルギーなのです。

 エネルギー供給は長期的にはアメリカの優位が見込まれており、ロシアはあと何年しかない猶予期間を無駄に過ごすことはできません。数年のうちに資源だけに頼るモノカルチャー経済から脱出をしないと、本格的衰退期を迎えることになってしまいます。今回もし本格的戦闘に至ったり、クリミアだけでなくウクライナを蹂躙するような事態が生じればロシアは全信用を失い、投資の引き上げ、ルーブルの暴落となり、エネルギー産業に全面依存するプーチン政権は崩壊の危機を招くことになります。これまでのグルジアを巡る紛争がそうであったように、そこまでの危機をプーチンも望まない、それが私の見通しです。

 もしクリミアという限定的な地域紛争であれば、金融市場は一時的混乱があってもすぐに立ち直ります。地域紛争だけでは世界経済に大きな影響を及ぼすことはないからです。投資をされる方には絶好のチャンスを提供するでしょう。

 果たして結果はこんなに楽観的見通し通りになるでしょうか・・・

コメント (1)
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