ストレスフリーの資産運用 by 林敬一(債券投資の専門家)

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2013年からの資産運用 その1

2013年01月29日 | 2013年からの資産運用

2013年からの資産防衛

  新シリーズのタイトルは、「2013年からの資産防衛」ということにしました。昨年末、新政権になって経済政策と金融市場に大きな変化がありました。そうした新しい環境の下で資産防衛を考え直してみよう、というのがこのタイトルの意味するところです。

  私が「証券会社が売りたがらない米国債を買え」というタイトルの本を11年8月に上梓してから1年半が経過しました。出版寸前に米国債が格付会社からダウングレードされデフォルトするかもしれないという危機に立たされました。すでに最終稿が出ていたのですが出版社のダイヤモンド社と相談し、1ページを追加。その中で「米国債はデフォルトなどしない。たとえ一瞬デフォルトしても、それはスリップダウンで米国債の価値には何の影響もない」と書きました。その見方が正しかったことは米国債相場がデフォルト騒ぎの中でピクリともしなかったことで裏付けられました。

  その著書をお読みいただいたり、その後の講演活動などにより、米国債を実際に購入された方が大変多くいらしたようです。そうした勇気ある方々(笑)のパフォーマンスは現在いったいどうなっているでしょうか。簡単におさらいしてみます。

  著書の内容に投資のシミュレーションがあります。当時の円ドルレートは1ドルが81円、10年債の金利は3.12% 、30年債の金利は4.37%でした。いま振り返ると、偶然ながらいいレベルだったんですね。

  現時点の円ドルレートが91円としますと為替で12%ほど円安に動き、米国債自体は金利が低下、つまり価格は上昇しました。先週末でその10年債の価格は110%程度になっていますので、為替と合わせて23%程度の利益を得ていることになります。そして30年債だと価格が23%も上昇していますので、為替との合計で38%も利益が出ていることになります。

  もちろんこうした中間での評価は、償還まで持ちきる投資法では、さしたる価値はないかもしれませんが、米国債という対象を選んだ方には大いなる朗報だと思います。

  出版当時は米国債への投資など、ほとんどの方にとってはリスクばかりが大きく、およそリターンの少ないものに映っていたことと思います。その背景には永遠に続くかもしれない円高の影があったのだと思います。

  そのころ「1ドル50円時代を生きぬく」と題された本が出版され、多くのエコノミスト達は「アメリカにも日本と同じ失われた10年が来る」と叫んでいました。

  ではここまではどうだったでしょうか。1ドル50円などにはならなかったし、アメリカには失われた10年など来ませんでした。それどころかアメリカは製造業が復活を遂げ、資源大国の道を歩み始め、デフォルト騒ぎは政治ショウだということがやっと理解されたようです。

  一方日本はどうでしょうか。12年末の選挙の最中から円安・株高へと市場が大きく動き安堵の声が聞こえるとともに、株式市場では弱気の声はなくなり、強気一辺倒になりつつあります。久々の株式相場の活況は実は日本だけの現象ではなく、世界同時進行となっていて、リーマンショック、ユーロショックなどどこ吹く風という感があります。

  しかしこうした相場環境を手放しで喜ぶのは危険です。特に日本の場合、なんといってもファンダメンタルズに変化の兆しがないままに、期待先行で上げているからです。日本財政を冷静に見れば、ここにきて決定された補正予算や来年度予算によって政府債務はさらに増加の一途をたどることが確定しています。

  消費増税など実は焼け石に水で、財政のプライマリーバランスなど夢のまた夢になりつつあります。日本の政治家の中で財政にもっとも重要な責任を持つ財務大臣が頻繁にこう言っているのをみなさんはお聞きになっていると思います。

日本には1,500兆円もの使われていない金融資産がある。これを投資に有効活用すれば、日本の未来は明るいんですよ、みなさん!」

  この財務大臣は、その1,500兆円のうち眠っていると言われる預貯金のほとんどが金融機関を経由して国債に投資され、それがコンクリートに化けてしまい、金融機関に返すオカネなどないことをご存知ないようです。郵貯はみなさんの貯金の8割を国債購入に充て、みなさんの預金引き出しに応えることなどできません。眠った子は叩いても起きないのです。いや、もし起きて投資のために預金を引き出したら国債価格は暴落し、財政は即破綻に瀕してしまいます。日本の財務大臣はこんな簡単なことすら認識できていないことを、どうぞみなさんはしっかりと頭に入れて今後の資産運用を考えてください。

  今回私が「2013年からの資産防衛」というタイトルで新シリーズに取りかかろうと決意したのは、いよいよ日本財政の危機の足音が近づいてきたためです。そしてみなさんの日本財政への懸念に対し、今後どう資産防衛をしたらよいかの答えをお示しするためです。


  何度か申し上げていますが、私は日本が大好きな日本人です。日本には破綻などしてほしくないし、そんなことでストレスを溜めたくありません。でもこれまでの放漫財政で子供たちの世代にツケを回す政府には怒りを感じますし、そんな政府と心中するつもりは毛頭ありません。

  自分の資産は自分で防衛し、みなさんとともにいざという時に備えたいと思っています。そして証券会社のいいなりになってトンデモ商品に投資し、相場に一喜一憂しながら老後をストレスでいっぱいにしたくもありません。

  こうした資産防衛の考え方は、私の従来の方向性と全く軌を一にしていますので、これから書いていくことは今までの繰り返し部分があるかもしれません。ですがいままでの「おさらい」も兼ねるということでどうかご容赦ください。

  今後もこのブログはみなさんと一緒に作っていくつもりです。みなさんからの忌憚のないご意見、どんな初歩的なご質問も大歓迎いたします。
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