前回のお話では、バークシャーの株価はアップルと同様にPERは20倍と割高なのに、バブルとは言えない、という話をさし上げました。ここから佳境に入るのですが、「もう頭がはちきれそう」、という方はどうぞ読み飛ばしてください(笑)。
『株価は将来の会社の業績予想を反映している。』
よくいわれる話ですが、なんとなくわかるようなわからないような話ですね。これは実はかなり厳密に数字で示せる話なのです。それが「割引現在価値」を計算するという手法です。
一言で言いますと、「株価は会社の生みだす将来のキャッシュフローを現在の価値に割り引いた価格だ」ということになります。それを理解するには、割引くということの意味を理解する必要があります。
みなさんチケット屋を利用しますか?
例えばみなさんがデパートの1万円の商品券をチケット屋に持ちこむと、90%くらいで買い取ってくれます。将来デパートで買い物をすれば1万円の価値があるのに、今すぐ現金化するとディスカウントされてしまいます。
同様にみなさんがもし1万円の小切手を持っているとして、それが3カ月先になれば1万円の現金と交換できる期限付きだとします。それを今銀行に持ち込むと3カ月分の金利が割り引かれますが、現金化することができます。金利が年利4%だとすれば、3ヶ月分は4分の1の1%ですので、3カ月先付けの小切手は9,900円で現金化できます。
こうした割引計算が「現在価値に割り引く」ということなのです。
将来得られる利益というのは不確実なので、不確実分を割引くのです。その割引率とは金利です。それも3カ月先なら3カ月物の金利。1年先なら1年物の金利で割り引きます。遠い将来であればあるほど、割引率は大きくなります。不確実性が高まるからです。
企業価値はこれと同じ方法で理論価値を求めることができます。企業の毎年の利益を将来に渡って並べて割引き、結果を足し算して合計すると理論価値になります。もちろんそれは理論値で、現実の価格とは違います。
理論値に較べて市場での株価が安ければ買ってもいいだろうし、高ければ避ける、という判断ができます。計算は企業の生みだす将来の年々のキャッシュフロー(利益)を、現在価値に割り引いて合計するのです。
「でも将来のキャッシュフローって、予想でしょう?」
そうです。
「それってはずれないの?」
はずれます(笑)
必ず当たれば、だれでも儲かりますよね。でも例えばバッフェット氏はその手法を使って、それが比較的当たるので儲かっているのです。それ以外の手法は使っていないと彼自身が言っています。しかし予想が入るので、彼の計算結果と部下の計算結果は違うことがある、とも言っています。
それと何年先まで予想するかでも数字に違いが出ます。予見可能は範囲、せいぜい4-5年先がいいところでしょう。それ以上先は捕らぬ狸の皮算用ということになるので、見込まないようにするのが安全です。私が企業買収をしていたときに、PERで言えば5倍から8倍しか価格を付けない、と言ったのも同じように遠い将来なんか見込まない方が安全だ、ということからです。
ちょっと難しい話になりましたが、ここまでの話を整理します。
まず株価の妥当性を判断するのに、PER(株価収益率)とい基準がある、と言うお話をしました。しかしPERには若干の欠陥があります。それは、利益を将来に渡って一定だと仮定し、その倍率で価値を決めているという欠陥です。それを補い、より厳密に企業価値を判断するのは、企業の生みだす将来のキャッシュフローの割引現在価値を求める方法だ、というお話をさし上げました。
ここで突然ですが、債券の話をさし上げます。債券は将来のキャッシュフローは確定しています。どう確定しているかと言いますと、利子は確定利子だし、最後に帰ってくる元本も確定しています。だから債券は確定利付き債と呼ばれます。債券の価格とは、その確定した将来のキャッシュフローの割引現在価値の合計そのものです。予想はいっさい入っていません。
ちなみに、U3さんが前回の私の記事につけているコメントで、「フィデリティの債券計算のサイトで計算してみました」とありますが、それはこうした計算をサイトは自動でやってくれるソフトが入っているのです。
ここまでくるとみなさんは、次の言葉を理解できると思います。それは、
「株価を算定する割引現在価値の方法とは、実は確定利付き債の価格決定理論の応用」なのです。
ということは、
「債券計算がすべての投資の基本動作」なのです。
つづく
『株価は将来の会社の業績予想を反映している。』
よくいわれる話ですが、なんとなくわかるようなわからないような話ですね。これは実はかなり厳密に数字で示せる話なのです。それが「割引現在価値」を計算するという手法です。
一言で言いますと、「株価は会社の生みだす将来のキャッシュフローを現在の価値に割り引いた価格だ」ということになります。それを理解するには、割引くということの意味を理解する必要があります。
みなさんチケット屋を利用しますか?
例えばみなさんがデパートの1万円の商品券をチケット屋に持ちこむと、90%くらいで買い取ってくれます。将来デパートで買い物をすれば1万円の価値があるのに、今すぐ現金化するとディスカウントされてしまいます。
同様にみなさんがもし1万円の小切手を持っているとして、それが3カ月先になれば1万円の現金と交換できる期限付きだとします。それを今銀行に持ち込むと3カ月分の金利が割り引かれますが、現金化することができます。金利が年利4%だとすれば、3ヶ月分は4分の1の1%ですので、3カ月先付けの小切手は9,900円で現金化できます。
こうした割引計算が「現在価値に割り引く」ということなのです。
将来得られる利益というのは不確実なので、不確実分を割引くのです。その割引率とは金利です。それも3カ月先なら3カ月物の金利。1年先なら1年物の金利で割り引きます。遠い将来であればあるほど、割引率は大きくなります。不確実性が高まるからです。
企業価値はこれと同じ方法で理論価値を求めることができます。企業の毎年の利益を将来に渡って並べて割引き、結果を足し算して合計すると理論価値になります。もちろんそれは理論値で、現実の価格とは違います。
理論値に較べて市場での株価が安ければ買ってもいいだろうし、高ければ避ける、という判断ができます。計算は企業の生みだす将来の年々のキャッシュフロー(利益)を、現在価値に割り引いて合計するのです。
「でも将来のキャッシュフローって、予想でしょう?」
そうです。
「それってはずれないの?」
はずれます(笑)
必ず当たれば、だれでも儲かりますよね。でも例えばバッフェット氏はその手法を使って、それが比較的当たるので儲かっているのです。それ以外の手法は使っていないと彼自身が言っています。しかし予想が入るので、彼の計算結果と部下の計算結果は違うことがある、とも言っています。
それと何年先まで予想するかでも数字に違いが出ます。予見可能は範囲、せいぜい4-5年先がいいところでしょう。それ以上先は捕らぬ狸の皮算用ということになるので、見込まないようにするのが安全です。私が企業買収をしていたときに、PERで言えば5倍から8倍しか価格を付けない、と言ったのも同じように遠い将来なんか見込まない方が安全だ、ということからです。
ちょっと難しい話になりましたが、ここまでの話を整理します。
まず株価の妥当性を判断するのに、PER(株価収益率)とい基準がある、と言うお話をしました。しかしPERには若干の欠陥があります。それは、利益を将来に渡って一定だと仮定し、その倍率で価値を決めているという欠陥です。それを補い、より厳密に企業価値を判断するのは、企業の生みだす将来のキャッシュフローの割引現在価値を求める方法だ、というお話をさし上げました。
ここで突然ですが、債券の話をさし上げます。債券は将来のキャッシュフローは確定しています。どう確定しているかと言いますと、利子は確定利子だし、最後に帰ってくる元本も確定しています。だから債券は確定利付き債と呼ばれます。債券の価格とは、その確定した将来のキャッシュフローの割引現在価値の合計そのものです。予想はいっさい入っていません。
ちなみに、U3さんが前回の私の記事につけているコメントで、「フィデリティの債券計算のサイトで計算してみました」とありますが、それはこうした計算をサイトは自動でやってくれるソフトが入っているのです。
ここまでくるとみなさんは、次の言葉を理解できると思います。それは、
「株価を算定する割引現在価値の方法とは、実は確定利付き債の価格決定理論の応用」なのです。
ということは、
「債券計算がすべての投資の基本動作」なのです。
つづく