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円高・デフレのトラップに嵌まり込む日本  27.じゃ、どうしたらいいの  その⑫

2012年04月05日 | 資産運用 
バブルの匂いを嗅ぎわける、その1


  ここからはバブルの判断について、私なりの解説を試みます。

  80年代の株式、不動産やゴルフ会員権のバブル時代を過ごした方は、すくなくともああしたことがバブルなんだという感じくらいは持っているとおもいます。その後ITバブルというのもありましたよね。米国のナスダックが泡にまみれ、日本でもジャスダックやマザーズがそれに近い状態になりました。そしてバブルは見事にはじけました。そして最近はサブプライム・ローンのバブルが崩壊しました。

  では、80年代のバブルを感じ取った方は、ITバブルを果たしてバブルだと感じ取ることができたでしょうか。

  ではまず株式の価値を判定する作業をしてみます。ちょっとめんどうですが、投資の基本動作ですので、概念だけは頭に入れてください。まずは簡便法をもお知らせします。

  私は企業買収を10年ほど専門に手掛けていました。そのほとんどが非上場企業で、値札はついていません。自分たちで値札をつける作業をします。その株価算定をするのに、企業の生みだす利益の何倍で買うか、という計算をします。

  簡便法は株式投資の場合と似ていて、EBITDAというちょっと面倒な尺度を使いますが、もっと簡単にPERという尺度をここでは使います。

P; 1株の株価(これに株数を掛ければ時価総額、つまり買収総額)
E; 1株当たりの利益(会社の総利益を株数で割り算)
R; レシオ、倍率



例えば現在アップルの1株利益が30ドル程度で、1株の時価が600ドル程度ですから倍率は
  600ドル ÷ 30ドル = 20倍

となります。つまりアップルの株はPERでいうと現在は約20倍に買われている、となります。

  これはアップルの株全部を買収して、会社の生みだす利益を一人占めすれば、買収に要した金額を20年で回収できる、ということです。企業の買収は、何年で回収できるかを目途に価格をつけるのです。私が手掛けていた企業は、5年から8年で回収の目途をつける価格で買収していました。もちろん買収は相手との交渉事ですから、もし相手が「それじゃ安い」といえば、「じゃ、買わない」となります。

  「じゃー林さんは、アップルは高すぎるって評価するの?」

いい質問ですね、答えづらい質問です。

  私の基準で判断すれば、今の1株600ドルのアップルに投資はしません。何故なら現在のキャッシュフローが将来いつまでこのレベルで継続するかが疑問だからです。アップルが配当を始めるといっていますが、それは株価には中立です。株式投資をされる方はご存知ですよね、配当すると株価が配当落ちの株価になるだけだからです。

「林さんの基準って?」

  先ほどもうしあげましたが私の買収基準はせいぜい8倍で、これではとても上場会社を買収できません。いや、安値に放置されていて買収できる場合もあります。事実私は上場会社にTOBをかけて買収したこともあります。しかしその会社のPERは5倍程度、つまり5年で回収可能と計算できました。

  アップルの生みだすキャッシュフローの安定性と成長性が今後2-3年はいいとしても、とても20年続くとは私には思えません。

「なんだ、バブルの基準はPERか」

という声が聞こえてきますが、ここからが本番です。

つづく
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