ストレスフリーの資産運用 by 林敬一(債券投資の専門家)

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円高・デフレのトラップに嵌まり込む日本  33.じゃ、どうしたらいいの  その17

2012年04月28日 | 資産運用 

  いよいよ連休が始まりましたね。みなさんはどこへお出かけですか。私は後半だけ富士の裾野の十里木にでかけます。友人の別荘にお邪魔し、おいしいものを食べて、ちょっとゴルフをしてすごすつもりです。

  さて、前回は個人と会社の債務について解説しました。その中で、企業が銀行から借りているローンは、必ずしも全部返済する必要はなくて、返済期日までに借換えができていればさほど問題はない、ということをお伝えしました。通常のローンはもちろん月々の返済をすこしづつ行います。

  安心できる貸付先であれば銀行は喜んで借換えに応じます。しかし、ちょっと不安を感じ始めると、手のひらを返すように態度を変えるのが銀行ですから、おちおちはできません。


  ここでちょっと横道します。アメリカの住宅ローンで、面白い実例を紹介します。個人の住宅ローンに、金持ちの個人が投資するということが行われているお話です。これは実際にアメリカ人を夫に持つ親戚の日本人妻が、相続を受ける時に起こった話です。

  アメリカ人の夫は比較的裕福で、不動産からの収入で老後を過ごしていました。私は何軒かの貸家を実際に所有していると思っていたのですが、実はそうではなく、いわゆるモーゲージ・ローン(住宅担保ローン)の投資家だったのです。家は借りていると思っていた人が実際には所有していて、そのローンを投資家である夫が貸出していました。しかも元本は1ドルも返済を受けずに金利収入だけをあてにして、期限が来ると借換えに応じるのです。

  家の持ち主である住人は、借りた元本を返済せずに金利だけを払い続ければ自分の持家に住み続けられる。ローンの出し手は元本の返済を受けず、貸出したお金にフルの利息をもらい続けることができる。両者にとって都合がよいシステムです。借り手の信用は、もちろん家を担保にして補完しているので、安心して貸出できるのです。


  じゃ、なんで家を買って貸し出さないのか。答えは、

1. 不動産を買えば、値下がりリスクを負うことになる
2. 売りたいときに簡単に売れないかもしれない
3. 不動産の管理コストを払う必要がない
4. ローンは債券と同じように譲渡可能で、お金が必要になれば他の投資家に売る



  住人は元本なしで家を持てるし、投資家にも流動性を維持できるメリットがあります。そして契約上は5年ごとに満期を迎え、新たな金利で借換える契約でした。

  金利レベルは、銀行ローンよりちょっと高いのですが、なにしろ手ぶらで家を買って月々の返済なしですから、ちょっと高い金利を支払うメリットは大いにあるのです。投資家も債券を買ったり、銀行に預けるよりはるかに高いリターンを得られる。いかにもアメリカらしい合理的なシステムですよね。

  しかも仲介した不動産屋と弁護士以外の中間業者を通さないので、手数料が安く済みます。住宅ローン債券にすると証券会社がしこたま儲けを取ります。

  なんでこの話をしたかと申しますと理由があります。企業とか国の債務も基本的には実はこのような借換え可能システムの上に乗っているので、日本国の1千兆円の借金といっても、耳をそろえて返す必要はない。投資家もコンスタントに借換えに応じることで、元本が返済され金利がもらえなくなるリスクはない。

  こうした借手、貸手の双方にメリットがあるシステムが、国の巨大な借金を生んでしまっているメカニズムだ、ということをお伝えしたかったのです。

  じゃ、借換えはいつまでも可能なのか?

  ここからの解説が、本格的バブルの解説になります。

つづく
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