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ストレスフリーの資産運用 by 林敬一(債券投資の専門家)

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日本の金融政策の危うさ その3.地銀の救済

2019年11月24日 | 日本の金融政策

 本日の日経朝刊2ページ目の見出しは、「地方債、迫るマイナス金利」というものです。これは決して喜ばしい現象でないことは、先日トヨタが金利ゼロで社債を発行したと書いたときにも申し上げました。異次元緩和の異常な歪みが発生させている不健全な事態です。発行体がただで資金調達できるということは、裏を返せば我々を含む投資家側のおカネが価値を持たなくなったも同然の出来事です。

 

  さて、前回の記事の最後に私は次のようなことを書いていました。

 

>地銀連合の大構想がうまくいくか、注目していきましょう。

 しかーし、私はこの動きに実は一つの懸念を持っています。

 

  ソフトバンクから独立したSBI主導の地銀救済と、その後に続くであろう地銀連合の大構想はSBIの慈善動機からではありません。短期的にはSBIは地銀の持つ顧客基盤に対して様々な金融商品を提供する機会を得ることになります。彼らは自前で組成した投資信託を中心とした商品を提供し、販売以降の運営フィーを継続的に得ることが可能になる。一方地銀は投信商品であれば販売時に手数料を得ることができます。

  これまで金融機関は預金を集めそれを貸し付けることで収入の大半を得ていました。従来、預金金利と貸出金利の差はかなりなもので、およそ2-3パーセントは確保できていました。ところが異次元緩和以降その差である利益の源泉は小さくなり続け、特にこの1年程度でいいますと地銀の平均でわずか0.2%くらいに縮小しています。前回の記事では福島銀行の場合、総資金の利ザヤがわずか0.09%とお伝えしました。これでは当然たちゆかなくなります。

  そこでどの銀行もいわゆるフィー・ビジネスに走ることになります。フィー・ビジネスとは、例えば投信を売ったり保険を売って得るフィーに頼ることです。それは金融機関の側からみれば合理的行動ですが、預金者側はどうでしょう。

  いままで銀行は預金を預かって金利をくれる存在だったのが、突然預金者に電話をかけてきて、「投信を買いませんか。保険はいかがでしょう」というセールスを仕掛けてくるいわば迷惑な存在になりつつあります。

  2011年に前著では私はこういう格言を書きました。

 「証券会社の得は投資家の損」

  それが今回は、

「銀行の得は預金者の損」となります。

   すでに都銀ではこの数年、預金者に対して様々な金融商品を能動的にぶつけることをしてきました。みなさんも自宅の電話に銀行もしくは銀行から請け負って商売をしている販売子会社から電話がかかってきた経験をお持ちだと思います。昔はそんなことは皆無でした。

  たとえ金利が付かかなくても、損だけはしないのが銀行預金でしたが、今後はそうした銀行推奨の商品を買うと、得することもありますが、大損することもあります。株式投信はその代表選手です。それだけではなく、地銀の預金者にはほとんど無縁であった外貨建ての預金やジャンクボンドの外国投信など、危険度の高い商品をどしどし薦めてくるでしょう。地銀の顧客はリスクにさらされることになります。こういっては失礼ながら、はっきり指摘しておきます。地銀や信金信組の顧客層は都銀の顧客層に比べて投資経験などないナイーブな方が多いと思いますので、しっかりと注意していただきたいと思います。


   そのいい例は最近大問題になった簡保の詐欺的商法です。昔はお国がやっていた郵便局を黙って信用する顧客に、5年間で18万件も詐欺に及んだのは、顧客層のナイーブさにつけこんだ結果です。保険の新規契約に対するボーナスを得ようと、郵便局員が顧客に解約と契約を繰り返したり、2重契約をさせたりと、やりたい放題の実態が明るみに出ました。

   SBIが地銀の顧客にアクセスするということは、悪く言えば羊の群れの中に狼を放つようなものです。投資の“と”の字、リスクの“リ”の字も知らない人々に何を売りつけるのでしょうか。大いなる懸念を抱きます。

   こうしてみると、北尾氏の考える金融大変革というのは地銀などの金融機関を巻き込むだけの変革ではなく、これまで波風を全く知らない一般の預金者も巻き込み、リスクテイクへと舵を切ることになる側面を持つのです。

   北尾氏のように日本の金融界に危機感を抱き、地銀だ保険だ証券だなどの狭い商圏から脱することを考えることは、業界にとって悪いことではありませんが、しかし一方で一般の預金者にとっては必ずしも喜ばしいことにはなりません。

  提供する商品は投信だけではありません。地方に行くと依然として普及率の低いクレジットカードのビジネスがあります。クレジットカードは、キャッシュの安易な代替手段となるため、預金の額を越えて使ってしまう消費者ローンの世界へと預金者を導きます。サラ金から借りるのは抵抗がありますが、銀行の薦めるカードローンだと借り入れをするハードルはグンと低くなります。

   さらにある程度の資産家には相続税対策としてアパート経営を促したり、資産家でなくとも不動産への投資を促し、それも自己資金がほとんどなくとも物件担保でローンを付けることで金利を得ようとします。それがシェアーハウス「かぼちゃの馬車」につながりました。

   一昨日のニュースによると、シェアーハウスかぼちゃの馬車への投資で大きな借金をしょってしまった人に対して、担保物件の放棄により借金を棒引きすることにする方向だそうです。これはほとんど騙されたようにして投資した人々にとってはグッドニュースです。きっと騙したスルガ銀行の発想ではなく、テコ入れを始めたノジマの思い切った発想なのでしょう。

 つづく

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日本の金融政策の危うさ その2.地銀の救済

2019年11月13日 | 日本の金融政策

  前回は日本の金融機関は政府日銀の金融政策により追い詰められ、システミックリスクの懸念があるところにまで至っていると申し上げました。巨大金融機関といえども新卒採用を大幅に減少させざるを得ないところにそれが現れていると説明しました。今回は地銀についてです。

   前回の記事の中で倒産しかかったスルガ銀行を、異業種の家電量販店ノジマが救済することになったとお伝えしました。おととい11月11日のニュースでは、やはり地銀の福島銀行に対し、証券会社であったSBIホールディングスが救済に入ったことが伝わりました。そのニュースでは、福島銀行の総資金利ザヤがなんと0.09%しかないとのこと。総資金利ザヤとは製造業などで言えば売上総利益、つまり売上から原材料費だけを引いた残りで、そこから人件費、管理費や減価償却費を差し引くことになります。0.09%しかなければ、営業利益段階で当然赤字になります。日銀の異次元緩和に加えて地方経済の疲弊や今後のキャッシュレス化の進展などを考えれば、地銀に将来性はほとんどないとまで言える厳しい状況です。

   SBIホールディングスは、もともとソフトバンクグループが野村証券にいた北尾吉孝氏をスカウトして作った投資会社で、名前のIはソフトバンクInvestmentのIでしたが、買収などで証券会社に衣替えし、ソフトバンクから独立。さらに金融関係のあらゆる業務を取り込み総合金融企業になっています。

   創業者というべき北尾吉孝氏は、私が大変評価する日本で数少ない本物のバンカーです。バンカーという言葉、日本では銀行家と訳され、銀行業を専門とするニュアンスが強いのですが、欧米では銀行業に加え証券業や投資事業を含む広い意味合いを持つ言葉です。北尾氏は実は「論語を知る論語読み」で、幼いころから論語を読んでいたそうです。彼はとても多くの著書を著わしていますが、金融業に関するものよりも論語や哲学的なことを扱う本のほうが多く、それも学者並みの立派な見識を有しているため、啓発本としても評価に値します。

  北尾氏の名前を知ったのは、私がソロモンで債券の引き受けをやっていた90年代の半ばで、まだ野村證券で経営企画室長をされていた時だと思います。彼は企業が社債を発行する際に銀行、それもいわゆるメインバンクが介入し、発行体から大きな手数料を得られる仕組みである「社債管理会社」の不要論を唱えました。管理会社である銀行は実質的にたいした役割を果たしていなかったにもかかわらず、それによりショバ代を得ていたからです。

  企業が社債発行により資金を調達すれば、その分銀行からの借り入れを減らすことになります。そこにイチャモンを付けていわばショバ代を取る。その悪習を排除することを当時の大蔵省にかけあって認めさせ、発行体企業からは喝さいを浴びました。

  それまで日本企業の社債は電電公社の電話債券や電力会社の電力債がほとんどでしたが、多くの一般企業が社債の発行市場から直接資金調達することに大きな道筋を付けたと言える出来事でした。株式発行につぐ直接金融のはじまりです。

  銀行は名目上の社債管理料という収入を絶たれ、さぞかし北尾氏を恨んだことでしょう。今は社債発行にあたり、メインバンクといえども元利払いの手続き代理人に過ぎなくなりました。

   北尾氏は野村でソフトバンクの株式公開を手伝った縁で孫正義氏に気に入られてソフトバンクに入社。CFOに就任し、多くの買収資金の調達を手助けしました。しかしボーダフォンの買収は過大な投資であるとして気に入らなかったようで、それをきっかけに、たもとを分かったと言われています。

   本題に戻ります。そもそもSBIによる福島銀行への支援は、北尾氏の壮大なる計画に基づいています。壮大なる計画とは、低収益にあえぐ日本の地銀を一つ一つグループに取り込み、巨大連合を作るという構想です。実はスルガ銀行にも触手を伸ばしていましたが、不調に終わったようです。しかし島根銀行はすでにSBI傘下に入りました。こうした壮大な地銀救済構想は、いかにも官民再生ファンドが手掛けるにふさわしい再生事業のように思われますが、官民再生ファンドによる事業再生はことごとく失敗ばかりで、そのうち税金で尻拭いせざるを得なくなりそうなため、いまでは委縮する一方となっています。

 

  私は地銀連合構想を見てすぐに、日本のゴルフ場を救済し再生したアコーディアやPGMの例を思い浮かべました。先日も触れましたが、赤字経営にあえいでいたゴルフ場を救済し、いまやそれぞれ130コースを傘下に持つ巨大グループを形成し、大成功しています。私が会員になっているゴルフ場も今般無事PGMによる再生を会員が承認し、来年にはPGM傘下で再生されることになりました。めでたしめでたし(笑)。

  今後果たして地銀連合の大構想がうまくいくか、注目していきましょう。

   しかーし、私はこの動きに実は一つの懸念を持っています。それは次回以降で。

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日本の金融政策の危うさ

2019年11月04日 | 日本の金融政策

  今回の話題は日本の金融機関の危機的状況をみなさんにお知らせする金融関係の話題です。

   人手不足に悩む日本ですが、金融業界では異変が起こっています。それは新卒採用の市場においてです。これまで大量採用を続け、特に新卒市場で圧倒的人気を集めてきた金融業界で、驚きの数字が記録されています。日経新聞調べの金融機関別の内定者数の前年比を並べます。

 ・三菱UFJ銀行         ▲45%

・みずほフィナンシャルグループ ▲21%

・野村証券           ▲45%

・大和証券グループ       ▲29%

   産業界全体が内定者数で大きく減ることはないなかで、金融界だけは別世界です。09年の金融危機の時と同様なレベルに低下しています。このような大幅な減少は危機的状況を反映していると見るべきです。新卒市場では抜群の人気を誇る大手金融機関ですから、採用する気になればいくらでもできるはず。採用しようとしない原因はひとえに将来の収益力の悪化見通しにあります。もちろん原因は日銀が誇る異次元緩和です。

   異次元緩和の旗を降ろさない日銀のクロちゃんによるマイナス金利の嵐は、都銀だけでなく地銀・信金信組を問わず全金融機関を襲っています。銀行はみなさんからの預金をローンで貸し出したり、株式や債券の市場で運用したりして利益を得るのが収益の柱です。金利が低下すると銀行の調達金利も低下するので、一方的に悪いことではなさそうな気がします。しかし一方でローンなどの運用金利も低下しているため、利ザヤは大幅に縮小しています。かねてからその運用対象のメインは日本国債でした。しかしその金利がマイナスになっていますので、買うことができません。

   反対に日本政府は長期物国債の代表格である10年物をマイナス金利で発行することができます。買ったら損をする国債をいったい誰が買うのか。もちろん日銀です。国債の日銀引き受けは日銀の健全性を阻害するとして日銀法で禁止されていますが、政府と日銀はそれを無視しています。手続き上は間に市中銀行や証券会社を入れて、違法認定を逃れています。金融機関は政府から買った国債をすぐ日銀に売却するといういわば出来レースで、雀の涙ほどの利益を頂戴して実質的違法行為の片棒を担いでいるのです。政府は借金をすればするほど得をするのですから、借金に歯止めなどかかりません。

   ところが最近はゼロ金利、あるいはマイナス金利の債券などを、銀行をはじめとする民間金融機関が自身の意思で買って保有する状況が出現しているのです。損してもかまわないと思っている日銀ならまだしも、民間銀行などが何故そんなまねをするのでしょう。

   10月12日付の日経新聞の一面では、トヨタがゼロ金利で3年物の社債を発行したというニュースが流れていました。投資家は銀行です。いくら潰れそうもないトヨタとは言え、一応3年間の倒産リスクを取っているのに、ビタ一文もらえない債券を何故銀行は買うのでしょう。

   もっとひどい例を挙げます。企業は短期資金、例えば3か月物の資金をCP、コマーシャル・ペーパーで調達するのですが、その金利はなんとマイナスのものがあるのです。その買い手は民間銀行です。9月26日付日経ニュースを引用します。

「キリンホールディングスや王子ホールディングスなどがマイナス0.01~0.0001%で資金を調達した。市場関係者によると、CPの発行残高に占めるマイナス金利の割合は3~4割に達する。銀行融資からCPへの調達シフトも一部起きているもようで、日銀のマイナス金利政策が企業の資金調達に変化をもたらしている。」

  資金調達側の企業は得をしますが、それを引き受ける側は損をします。なのに何故? 解説します。

   理由はもちろん日銀による強引な緩和政策です。そもそも日銀による異次元緩和は市中に資金をジャブジャブに供給すれば、物価が上昇し景気も上向くハズということでスタートしました。しかし日銀が銀行保有の国債を買いまくって、いくら資金を市中に放出しようとしても、銀行には資金ニーズがない。つまり企業の資金調達ニーズが薄いので、売って得た資金は貸し出せず、日銀の当座預金口座に積み上がってしまうばかりなのです。よく言われる「ブタ積み」です。日銀はそれをむりやり銀行に押し戻すために、当座預金にマイナス金利を導入しました。当座預金はもともと金利ゼロなのですが、マイナス金利のため預けておくだけで損をする政策を導入したのです。すると銀行の資金は行き場を失います。そのため例えばマイナス0.1%の日銀に預けて損をするより、マイナス0.01%のCPで運用したほうが損失は10分の1で済む、という理由からおかしな運用をするのです。いずれにしろ損失には違いありません。

 

  それがいやな金融機関は例えばスルガ銀行のように「かぼちゃの家への投資」というシェアーハウスへの危うい投資を個人に紹介し、それにローンを付けるという詐欺まがいのローンを積み上げました。しかしローンを組んで投資した個人は目論見通りの成果を上げられず返済に窮し、挙句の果てに貸しまくったスルガ銀行自身が実質的に倒産の憂き目にあっています。今年になってそれが表面化しました。10月末にそのスルガ銀行を家電量販店のノジマが傘下に入れるというニュースが流れました。ついに家電量販店が地方銀行を買収するところまできました。

   その状況になっても日銀の政策に変化はありません。日銀のクロちゃんは記者会見のたびに「打つ手はいくらでもある。必要なら躊躇なく手を打つ」と言い続けていますが、実際には打つ手などありません。金利による政策がダメなら株式の購入だということで大量の株式を買い、その額はすでに30兆円に達しています。国内最大の投資家である我々の年金資金を運用する機関GPIFの保有高が37兆円程度なので、このままでいくといずれは日銀が抜く可能性が出てきています。

  日銀は株式を買えば買うほど株式下落に際しリスクは大きくなります。一方でマイナス金利を深堀すればするほどおかしな金融がまかりとおる。そんな状態が続くと、最後には日銀も銀行も軒並みおかしくなりかねない。このように日本の金融システムは、全体がマヒするいわゆるシステミックリスクを抱えている状況であることを、みなさんも認識しておくべきなのです。

 

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大利根の決戦

2017年05月02日 | 日本の金融政策

  カテゴリーは「日本の金融政策」なのですが、ゴルフの話題から。

  昨年来の勝負の約束に、決着がつきました。昨年末の忘年会で、ゴルフで私に戦いを挑んできたクラスメートとの一騎打ちの結果をお知らせします。

  別にゴルフのことをみなさんにお伝えするのが目的ではなく、大手金融機関のトップにいて、依然としてリタイアせずに関連会社の現役会長である彼との意見交換をみなさんに伝えるのが目的なのですが、せっかくなのでゴルフの勝負の結末もお伝えします。

  4月の終わりに利根の河原じゃなくて、大利根カントリークラブでの決戦に臨みました。昨年末にスケジュールを調整したのですが、彼が空いている週末がなんと4月29日だったのです。いまだに日本の金融機関のトップはゴルフをやりっぱなしなんですね(笑)。

  ゴルフの勝負には全くハンディを考慮しない実力勝負もありますが、今回のやり方はお互いのオフィシャルハンディの差をそのまま適用するハンディ戦です。

  私と彼のハンディ差はちょうど10。例えば私が80ストロークで彼が90ストロークであれば、差がちょうどハンディ分なので勝負なしの引き分けとなります。

  大利根カントリークラブは私の大好きなコース・デザイナー井上誠一が設計し、男女ともに日本オープンゴルフ選手権などの公式戦をはじめ、多くのトーナメントを開催する日本屈指の難コースです。その日は朝から快晴で絶好のゴルフ日和。クラブ競技が行われる日でもあり、グリーンはとても早く、ピン位置はかなり難しい設定でした。

  私はこのコースは20年ぶりくらいのラウンドのため、井上誠一が仕掛けた各ホールの落とし穴など記憶から抜け落ちていて、かなり苦戦しました。そのため今年の平均スコアよりも10ストロークほど多く叩きました。一方彼はアベレージゴルファーのため難コースにてこずり、普段の平均スコアより相当悪いスコアとなってしまい、結果はハンディ考慮前で私とは18ストロークの差。ハンディを差し引いても8ストロークの差で私が勝ちました。

   我々の他にクラスメートの見届け人2人がプレーを伴にしたのですが、彼らの腕前もアベレージゴルファーのためいつもよりかなり悪く、やはり平均より20ストローク前後多く叩いていました。井上誠一に脱帽です。

   ということで、昨年末の忘年会で決戦を誓い、やっと実現した勝負でしたが私の勝利に終わり、彼が試合後の飲食代を奢ってくれました。

   プレー後は経済の見通しや金融市場動向の話になりました。今回は特に日銀の新審議委員や黒田総裁の任期、そして出口戦略に関して、あらましをみなさんにお伝えします。


   まず日銀の審議委員の交代人事についてです。審議委員のうち2名が7月に任期を迎えるため、交代の人事案が示されました。任期を迎えた2名はいずれも白川総裁時代の任命で、黒田総裁の超緩和策に対してたびたび反対票を投じてきました。

  安倍首相になってからは黒田総裁をはじめいわゆるリフレ派を任命してきたのですが、今回もごたぶんにもれず、バランス感覚のある2名をリフレ派に変更することになりました。

   この人事について4月18日のブルームバーグを引用します。

政府は18日、日本銀行の審議委員に三菱UFJリサーチ&コンサルティング経済政策部上席主任研究員の片岡剛士氏、三菱東京UFJ銀行取締役常勤監査等委員の鈴木人司氏を充てる人事案を国会に提示した。

片岡氏は44歳。経済政策の調査に約20年間携わっており、理論やデータに基づく「分析手法は高い評価を得ている」という。「アベノミクスのゆくえ-現在・過去・未来の視点から考える」などの著書がある。慶応大学大学院商学研究科修士課程修了。昨年4月、自民党の有志議員の勉強会「アベノミクスを成功させる会」(会長・山本幸三地方創生担当相)に講師として出席し、消費増税の凍結を提唱した。代替の社会保障財源として相続税や資産課税の強化を挙げていた。

  昨年11月4日付の片岡氏のリポートでは、「2%のインフレ目標に向けたモメンタムが維持されているとは全く思えない」とした上で、「早期の追加緩和という具体的なアクションを行うことが定石であり、かつ必要である」との見解を示していた。

  鈴木氏は63歳。1977年に慶応大学経済学部を卒業後、当時の三菱銀行に入行した。東京三菱インターナショナル・ロンドン副社長を経て、三菱東京UFJ銀行の市場企画部長や副頭取などを歴任し、2016年6月から現職。金融市場の実務に精通していることや国内外の幅広い人脈が評価された。

引用終わり

  以下は一問一答の形式にしてあり、彼の意見は太字にしました。

  私が今回の人事について、「あまりにもミエミエで、緩和に歯止めのかからなくなる人事だね」と言うと、彼も「そのとおりだ」と同意していました。

  さらに私が「二人とも慶応で三菱って、いいのかな?」と問いかけると、彼は「一人は銀行じゃなくてリサーチだから、それは特に問題ないと思うよ」とのこと。

  私が「こうした人事を見ると、黒田氏の再任は決まりかな?」と聞くと、「今さら安倍さんも黒田氏を放り出せないよ。これまでのすべてを否定することになるしね」、と回答。

「じゃ、ますます緩和に突っ走るの?」。

「それしかないだろうな。そのつもりの人事だもん」

「出口はどうなるの?」。

「そんなものないよ。インフレさ。インフレで国の借金を実質帳消しにする以外に手はないだろう」。

「インフレで金利が上がったら日銀は大損して、信用を失うよね。保有国債の値洗いをしないことにするのかな」。

「もちろんそうさ。持ち切れば値洗いなしってことにするのさ」

「でも日銀は保有国債のポートフォリオを公表しているから、専門家はよってたかって値洗いしちゃうでしょ」。

「そうだな。でも、『だからどうした』って開き直るのさ(笑)。それを見た国債市場は売り一色になって、円も暴落だろうな。それが本格インフレの開始のサインだよ、きっと」。

  最後に私が「もっとも市場には売る国債も残ってないかも」というと一同爆笑で議論は終わりました。


  次回からは「トランプのアメリカ」の話題から、日本の話題に舵を切ることにします。

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日銀に明日はあるか その7 安倍首相は黒田総裁の首を切れるか

2016年11月03日 | 日本の金融政策

  シリーズ「日銀に明日はあるか」が大統領選のおかげで9月末以来停止したままです。今回からその収束に入ることにします。

  今週日銀は金融政策決定会合において、これまでの政策を維持することを決めています。そして、同時に発表された展望レポートで、物価上昇2%の公約達成時期を再度先延ばししました。

  私はこうした先延ばしの決定のたびに、2%の達成は、いつもこれから2年後だ(笑)」と揶揄してきましたが、今回もまたそのとおりでした。クロちゃんの言い訳をロイター・ニュースで見てみましょう。

「会見で黒田総裁は物価目標達成を『実現できなかったのは残念』としつつ、遅延理由は原油価格下落など世界経済に共通の要因で、先送りは『欧米中銀も同様』と弁明し、責任論をけん制した。 一方で、黒田総裁は「物価は(2014年4月に)1.5%まで上昇している」と指摘し「2%は非現実的でない」「2%は合理的な目標だ」と反論した。」

  言い訳もいつもと変わりません。いったいいつまでこの言い訳を我々は聞かされ続けるのでしょうか。自分の政策は間違っていない。悪いのは世界経済や国際商品価格の下落だ、と言っています。かれも若干サイコパシーの気があるのかもしれません。

  では欧米の金融政策の潮流はどうなっているでしょうか。ご承知の通り、アメリカは経済が比較的順調で、物価上昇率はだいたい1%と2%の間にあり、FRBは昨年末に利上げに転じました。もっともその後は一進一退で、次の利上げは今年の12月との予想です。それでも2回目の利上げが一応実現される方向にあり、政策金利の利上げ見込みは長期金利を押し上げています。10年物国債の金利1.8%は決して高くはありませんが、投資にペナルティを課す日本のマイナス金利とは全く別世界で、しっかりとプラスのリターンをもたらしてくれます。

  欧州はどうでしょう。現在ドイツの10年物金利は0.13%、フランスは0.44%、イギリスは1.17といずれもプラス圏です。欧州も政策金利にはマイナス金利を導入し、量的緩和策を実行しているにもかかわらず、物価は思い通りに上昇せず、1%未満が継続しています。それでも春先の若干のマイナスからは脱出しています。そしてこのところの議論の中心は、量的緩和のテーパリングあるやなしやに移りつつあります。買える国債が少なくなったこともあり、そろそろ無理な量的緩和を停止することを検討するという話が出てきているのです。

  日本では、物価はマイナス圏に沈み込んでいますが、今回の決定会合でも2%の目標は降ろさず、先に延ばすのみでした。クロちゃんの総裁任期は就任した13年から5年目の18年4月までです。彼は記者会見で「任期と2%のコミット実現時期は別問題だ」と言っていましたが、それはその通りだと思います。しかし、もしこのまま旗を降ろさずにいると、彼の再任はあるのでしょうか。株屋さんちのエコノミスト達も、さすがにクロちゃん翼賛会の会員ばかりではなくなりつつあります。このまま目標先送りを続け、国債を買い続けていれば日銀の信頼は地に堕ちますが、それを彼はどう考えているのでしょう。中央銀行の信用失墜は、金融恐慌や財政破綻をもたらします。

  一方、依然として支持率の高いアベチャンは総裁任期延長が決まり、少なくとも21年9月まで総裁でいることができそうです。そのニュースを日経から引用します。

「自民党は1日の総務会で、党総裁任期を「連続2期6年」から「同3期9年」に延長すると全会一致で了承した。2017年3月の党大会で党則を改正する。安倍晋三首相は18年9月に2期目の任期が切れるが、党則改正で21年9月までの続投が視野に入る。」

  私の関心事は、アベチャンは一心同体であるはずのクロちゃんを切れるかです。クロちゃんの任期は18年の4月、アベチャンは18年の9月の任期が延長されることになった。だからといってバクチを打って失敗したクロちゃんをいつまでも日銀総裁として置いておけるのか。クロちゃんの責任論はいずれ出てくるに違いありません。

   我々国民は、クロちゃんのバクチに無理やりつき合わされ、負けた時には一方的にツケを払わされます。中央銀行総裁本人は政策で失敗しても、せいぜい主犯である本人が首になるくらいでしょう。しかし今回もし失敗すればそのインパクトは甚大で、日本中が焼け野原になるほどです。「焼け野原」と書くと真顔で、「なんで」と聞く方がいますので(笑)ちょっと書き加えますと、私が意味しているのは戦後の焼け野原で経験した「ハイパーインフレ」のことです。実際に燃えるわけではありません。念のため(笑)。

   そもそもアベノミクスは3本の矢を放つところから出発しました。しかし3本の矢は名ばかりで、実は金融政策の「1本槍」でしかないことが判明しています。「経済は穏やかに回復している」と言い続けながら当初から補正予算を繰り出す。実は当初予算上すでに赤字分が40兆円もあり、それは財政の超拡大策で、そこに28兆円も追加しました。といっても真水と言われる政府支出は6.2兆円にすぎず、その効果は限定的です。あとの14兆円は例えば「もし資金を借りたいなら貸すよ」と言う枠の分です。それにしても財政再建など、はなから考慮の対象外です。経済は回復つつあると発表し、雇用が限界に達しているのに、何故毎年毎年補正予算が必要なのでしょう。私に言わせれば、当初予算から赤字が68兆円だとかっこ悪いので、「どうだ28兆円も追加してやったぞ」と威張りたいのでしょう。

   今回のタイトルは、「アベチャンはクロちゃんの首が切れるか」です。すでに主要金融機関から愛想をつかされ、政策達成の見込みはなく、しかも日銀には高値で買った国債の評価損がたまりつつあります。それでも二人三脚を標ぼうしたからには、簡単に首は切れないでしょう。なぜならそれがアベノミクス全体の失敗を認めることになるからです。

   日本が焼け野原になったとき、できれば主犯の2人にはその場に居てもらい、落とし前をつけてほしい。

   それが私のささやかな願いです(笑)。

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