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ストレスフリーの資産運用 by 林敬一(債券投資の専門家)

新刊「投資は米国債が一番」幻冬舎刊
「証券会社が売りたがらない米国債を買え」ダイヤモンド社刊
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日本経営合理化協会での講演、その3 貯蓄から米国債へ

2022年12月06日 | 日本の金融政策

  ありがとう、サムライ・ジャパン。

  ドイツとスペインを破るとは、事前予想をはるかに上回る大活躍でしたね。目標のベスト8には惜しくも届きませんでしたが、10日間にわたり日本中を沸かせてくれました。選手たちと監督に感謝です。

 

  さて講演内容の3回目として取り上げるのは、日本における投資がいかに偏ったギャンブル性の高いものであるかについてです。

  岸田政権は「新しい資本主義」という大上段に構えた目標を掲げて登場しましたが、いまのところ目新しいものはなく、従来からのバラマキ型経済政策とNISAの期限を伸ばすのがせいぜいのようです。

 投資をされている方の多くはNISA口座を使われていることと思いますが、NISAには罠が仕掛けてあるってご存知ですか。超安全な投資のみを推奨している私に言わせていただければ導入当初のNISAとは、

「リスクの高い株だけに投資させ、年に120万円は必ず使わせ、5年間売らせない」

 となります。

  解説しますと、 

・対象はハイリスクの株・REIT・投信のみで、安全な債券はNISAの対象外

・買ったら最後、売りづらい。売ったらその分非課税枠がなくなるので、売るという行為をさせないようになっている

・1年120万円の非課税枠は翌年以降に持ちこせないので、「必ず毎年使い切れ」と言わんばかりに年に120万円を投資させようとしている

 

 例えばA株をNISAの口座で買い、半年で倍になったので売った。この場合キャピタルゲインに課税はされませんが、5年間の非課税枠は4年半を余して消滅します。なので、値上がりしても簡単には売りづらいのです。

 また、リーマンショック時やコロナショック時のように株価がどんどん下落している最中でも、年末までに買わないとその年の枠はなくなります。目をつぶってでも早く買え、それがNISAです。

  岸田政権はこの図式を多少変えようとしていますが、基本的にリスクの高い株式投資のみである主要件は変更されません。債券は全く無視されています。

 

  みなさんは世界の金融資産の半部以上は債券であることをご存知ですか。

  22年5月時点での統計ですが、世界の債券残高が120兆ドル、株式時価総額は 100兆ドルです。つまり6対4で債券の方が総額は大きいのです。総額がこうなっているということは、投資家サイドからみれば、世界の投資家は平均で6割を債券に投資していることになります。

 

  日本では円建て債券そのものの利回りが低すぎて投資に値しませんし、NISAが債券の存在すら認めていませんから、投資家の大半も債券は投資対象としていません。リスクの少ない超安全資産として投資対象を米国債にまで拡げている方は、私の唱える米国債投資を知りそれを実行されている方だけかもしれません。

 

  この偏りの一番の原因は日銀・黒田総裁による国債金利の抑圧です。「異次元の緩和」という愚かな政策を10年も続けたことにより、債券は一般の投資家から見限られるだけでなく、機関投資家の大半も見限っています。それが証拠に債券市場の一番の指標銘柄である10年物国債の取引が全くない日が10日に一度くらいはあるのです。

  為替市場でもし「今日はドル円の取引がないため、レートの提示はできません」といったらパニックになります。債券投資の世界ではそれに匹敵する異常事態が日常茶飯事で起こっています。

 

  この一番の被害者は実は我々なのです。何故か。我々だれもが頼る年金の運用に悪影響が出ているからです。そもそも債券金利がまともにリターンをもたらせば、年金資産は大半が日本国債をメインとする債券に投資され、変動の激しい株式などで大勝負などしません。金利収入をコンスタントに得て、年金支払いを行うことができるからです。世界の大半の年金も、債券投資に重きを置くので、金融市場の半分以上が債券なのです。

  それを数字で確認してみましょう。日本の年金資金を運用しているGPIF(年金運用管理独立法人)の投資にはガイドラインが定められていて、それを守った運用をしています。以下の構成比がガイドラインです。

                                                                                                                         

         国内債券 国内株式 外国債券 外国株式

2013年6月まで   67%   11%   8%   9%

かつて国内債券は3分の2を占め大事な年金はリスクを抑えた運用をしていました。

  しかし黒田氏が就任した21013年4月以降、安倍政権と一緒になり国策として徐々に債券を減らし、その分株式投資を増やし、現在以下のように構成比を変化させました。3分の2だった債券はわずか4分の1となったのです。

         国内債券 国内株式 外国債券 外国株式

2020年4月以降   25%   25%   25%  25%   

 

  GPIFだけでなく日本の機関投資家や一般投資家も同様で、債券投資は脇に押しやられました。その上「新しい資本主義」というわけのわからない政策の下、ひたすら株式投資だけを推進する政府によって税制までもがゆがめられ、バクチとも言える株式投資に誘導されているのです。

 

 米国債投資を知らない方には、ご愁傷様としか言いようがありません。しかし実は株式投資への誘導は新しいことではなく、2003年から「貯蓄から投資へ」という政策を標榜し始めたころから推奨されていました。

 

  ところが「笛吹けども踊らず」。国民は政府に騙されてバクチにのめり込むこともなく、2,000兆円も金融資産を貯めこみ、そのうち株式投資はわずか10%、投信が4.5%とリスクを抑え、現預金が54%、保険が27%と安全資産が大半を占めています。今後岸田政権がいくら旗を振ろうが、国民の安全志向が変わるわけもない。

  しかし金利というリターンを全く生み出さない現預金にいつまでオカネを置き続けるのでしょう。これまではインフレがなかったため現預金は目減りすることがありませんでしたが、現在のように3%のインフレ率が続いたりすると、我々の資産は目減りが続くことになります。

  ここまでをまとめます。

  安全な債券投資を失った日本人は、現預金だけで目減りを我慢するか、株式投資というギャンブルに走るかしかなく、年金までもがその波に飲み込まれている。それが日本といういびつな国の異常な実態であることをみなさんもしっかりと自覚しましょう。

 

  家計の金融資産2,000兆円にたった1%でも金利が付けば、国民は毎年もれなく20兆円もの分配がもらえます。一人当たり毎年16万円にもなります。

  逆に3%のインフレとは、実質的に一人当たり48万円の損失になっているということです。その計算は、先ほどの1%の3倍を失うので、

 16万円X3=48万円

ちなみにアメリカ国債なら、これ以上もらえます。

「貯蓄から米国債へ」、それが私の合言葉です(笑)。

 

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クロちゃん、どうもありがとう!

2022年09月23日 | 日本の金融政策

  急激なドル高でドルを買いそびれていた方にとって、チャンスが来ました。血迷ったクロちゃんとそれを支持せざるを得ない財務省の愚かな円買い介入が始まりましたね。介入ごときで日本経済・財政が再生に向かって離陸するはずもなく、ドルへの投資を考えている投資家と為替で儲けを狙うヘッジファンドが喜ぶだけです。

  円安で儲けようとするヘッジファンドが、何故介入に喜ぶのか。簡単に説明します。円安に賭けるヘッジファンドはもともと弱い円など保有しているはずはありません。空手で開始するのですから、まずやることは円の空売りです。先物市場では持ってもいない円を今のレートで空売りし、円が安くなったところで買いもどす。例えば140円で先安を予想して空売りし、150円になったら買い戻すとその差額10円が儲けになります。

  ところが、そうしたファンドは非常に大きな金額を投資するため、最初の空売りをする行為そのものが円安を招いてしまいますから、普段は徐々にしか買えません。そこに大量に円を買ってくれる財務省が買い手になってくれるのは、大量の円売りができるため大歓迎なのです。しかもそのインパクトにより円を高くしてくれるので、願ってもないチャンス到来となります。

  日本政府・日銀はそれを百も承知で大量にドルを売り、円安の動きを止めようとします。それにともない気の小さいヘッジファンドは円売りで作っていたポジションを一気に買い戻すため、円高を助長します。それがきのうの円高です。

  では円安はこれにて終了でしょうか。もちろんそんなことはありません。昨日FRBは異例の水準、0.75%も利上げをしましたが、日銀は超緩和を維持し世界で唯一のマイナス金利維持国になり、それを今後も維持せざるを得ません。

  そしてもっと大事なことは、成長力を失った日本の弱さはいささかも変化しません。クロちゃんの異次元緩和維持とは、日本の弱さを自ら認め宣言していることになる。それを彼は自覚しているのでしょうか。きわめて疑問です。

  ドル買いチャンスを探っている方には、チャンス到来!

 

以上、「クロちゃん、どうもありがとう!」でした。

 

 

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アベノミクス評価

2022年07月11日 | 日本の金融政策

  今の日本でVIPが凶弾に倒れるとは、思ってもみない出来事でした。あってはならないことで、安倍さんとご家族には心からお悔やみ申し上げます。

 

安倍氏の評価を政治面から行っても議論百出。あまり実りはないと思われますので、私は経済面、それも数字で推し量れる事実関係のみに焦点を当てた評価を試みます。

 

  安倍総理の在任は12年12月から20年9月の8年あまりでした。ではまずその間に日本はどれだけ成長したか、GDPで計ってみましょう。

 

  12年名目GDP500兆円

  20年 同GDP538兆円   8年間の合計成長率は7.6%。

 

しかしこれを年率に直すとわずか0.92%と1%に満たない数字です。アベノミクスの目標成長率は3%でしたから、実態はその3分の1に満たない数字でした。

 

しかも就任してすぐ年明けの13年4月には日銀総裁を黒田氏に替え、日本中にオカネがいきわたるハズの超緩和策を導入しています。そして黒田氏はいまだにその政策を続けています。その間に日銀が国債を買いまくった総量は400兆円とGDP全体に近い莫大な数字です。その結果いい気になった政府の累積赤字は昨年度末で1,212兆円に上っています。GDPの2倍を超えました。それだけ投じても我々の手元にオカネは届かず、日本は成長できなかったというのが日本経済の実態です。

 

一方、日銀は株も買いまくっています。その総量は50兆円、その他にGPIFと言われる我々の年金基金を使った日本株投資金額は推定25兆円。日銀とGPIFで75兆円です。

 

ではその結果、株価はどうなったか。日経平均株価を見てみます。

12年12月末;1万 400円程度

22年 6月末;2万6,400円程度  254%と非常に伸びています。

 

その間のドル円レートはどうだったか、

12年12月末 86円

22年 6月末137円   59%の円安

 

では総括すると、「株価だけが突出して伸びたものの、成長はほとんど誤差程度で、円はかなり安くなった」、ということになります。という数字だけの比較であれば誰でも簡単にできる総括です。しかしもちろん私の分析はここからです。

 

いつも申し上げているように、世界の投資基準も評価基準もベースはドル建てです。たとえば一人当たりGDPの比較でも世界との比較はドル建てですから、次のようになります。

 

 12年名目GDP500兆円  ・・・ドルでは5.8兆ドル @86円

 20年 同GDP538兆円  ・・・ドルでは3.9兆ドル @137円

 

率に直すとなんと33%もの縮小です。一人当たりGDPで韓国に抜かれるわけです。

 

一方株価も同様にドル建てで計算すると、

12年12月末;1万 400円程度 ドル建てでは121ドル

22年 6月末;2万6,400円程度 ドル建てでは190ドル

 

円建てでは254%の上昇でしたが、ドル建てでは57%の上昇です。といってもこれも日銀と年金が株価つり上げのため買いまくった結果で、クリーンな株価上昇とは言えません。もちろん他の国でこんなおバカな中央銀行も政府もいません。

 

どうです、国際標準で見るとすっかり景色は違って見えますよね。

 

アベノミクスは海外投資家に対して次のような言葉で開始されました。

「Buy My Abenomics!」

 

開始当初は海外投資家が大いに日本株を買いまくりました。初年度はなんと15兆円もの買い越しでした。海外投資家の保有比率を見ますと、12年末が28%でスタートし、14年末には34%まで上昇、しかし現在は30%と、アベノミクス開始前とさほど変わらないレベルまで低下しています。その間、海外投資家の年間投資額は初年度の15兆円分をどんどん売り越していったということになります。

ということで円だけの狭い見方ですとアベノミクスは成功したように見えるのですが、世界標準の見方では成功などしていません。むしろこの政策のツケとして残された日銀のバランスシートにため込まれた日本国債が今後いつ爆発するか、海外投資家はかたずをのんで見守っています。

 

では日本の家計はアベノミクスをどう評価したか。もちろん最初から最後まで冷ややかに見ています。その何よりの証拠が家計にため込まれた金融資産2,000兆円です。しかもそのうちの半分1,000兆円が現預金で、海外投資家のようにアベノミクスに踊らされることもなく、ひたすら危うい政策をさめた目で「見てるだけー」でした。

 

ほんの一部の賢い方が私のお勧めに乗って米国債に投資し、大いに儲かっています。(笑)

 

そうでない方の円資産は、ドルの世界から見ると6割も減っています。それを決して忘れないように。

 

日本は貿易赤字が当たり前になり、経常収支でさえ赤字が近づいています。財政赤字と経常収支赤字は相乗効果をもって日本全体を襲うことになるので、みなさんも是非指をくわえて見てるだけでなく、金利を稼げる米国債をしっかりと買って、ストレスフリーの世界で寝て暮らしましょう(笑)

 

林 敬一

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円安はよいのか、わるいのか

2022年05月18日 | 日本の金融政策

  米国債の長期金利が3%前後となり、それが定着しそうに見えます。一方、それを反映した円相場は20年ぶりに1ドル=130円台まで値下がりし、その近辺にとどまる状況が継続しています。

 

  連休の始まる直前4月28日、日銀の黒田総裁は金融政策決定会合の後の記者会見で、急速に進む円安について「日本経済全体としてはプラスだという評価を変えたわけではない」としながらも、「過度な変動はマイナスに作用することも考慮する必要がある」と述べ、円安が経済や物価に与える影響を注視していく考えも示さざるを得なくなっていました。これまで一方的に「円安は経済全体でみればプラスだ」と言いきっていたのを若干修正し始めています。

  それに対しFRBはすでに大幅な利上げを宣言し、実際に開始しました。この正反対の政策スタンスだけでも、円安はまだ高進しそうな気配です。

  今週号の週刊ダイヤモンド誌の特集は「円安、善と悪」、副題「日本の国力低下危機」です。ざっと記事を読んでみたのですが、一番肝心なことが無視されていました。それは円安は輸出企業の収益を改善するというプラス要素だけではなく、日本国の全資産価値を割り引いてしまうという肝心な事実です。それを以下に説明しましょう。

  

  私は2011年にダイヤモンド社から出版した著書で、個人が日本の危機に備えるには、保有する金融資産の一定割合をドルでヘッジするなどというのはほとんど意味をなさないと書いていました。その意味をもう一度ここでみなさんにレビューしていただきましょう。

  例えば50歳の普通のサラリーマンのことを考えてみます。年収1,000万円、金融資産も預貯金1,000万円、他にローンを支払い終わった自宅マンション時価5,000万円と比較的余裕のある方を例にして、切りの言い数字を想定してみました。

  日本の危うさに危機感を持つ彼が金融資産の半分、500万円をドルに転換し、5割のヘッジをしたとしましょう。私は金融資産の半分では何のヘッジにもならないと書いていました。何故なら彼の円資産は金融資産だけではないからです。計算できるだけで以下のとおりかなりの大きさです。

  現状の円資産の単純合計は、預金1,000万+持家5,000万円=6,000万円です。これで預金の半分500万円をドルにしたところで、ヘッジ比率は8.3%にしかなりません。しかも、将来もらえる給与や退職金、年金を見込み資産に含めればヘッジ比率はますます低下してしまうとし、預金全部をヘッジに回しても微々たるものでしかないと指摘しました。この議論は現在でももちろん有効です。個人にとり円安とはこうした不動産など、すべての価値を割り引いてしまうのです。

  世界標準のものの見方とは、こうしたすべての資産を含めドル建てで見るのであって、輸出企業だけのメリットなど、取るに足らないメリットでしかありません。日銀や政府関係者などの発想に、世界標準のかけらもありません。中央銀行総裁がそんなことも理解していないとは嘆かわしいことです。円安は日本経済によいことだというのは、そのむかし貿易立国だったころの幻想を引きずっているだけです。

  日本株式を売買する海外投資家は日本株の評価をもちろんドル建てで考えています。年初からの時価総額の変動を円とドルで比べましょう。

           年初ドル円115円   4月末130円    年初比

東証一部時価総額円建て  728兆円      711兆円     ▲2.3%

  同    ドル建て 6兆3300億ドル   5兆4700億ドル     ▲13.6%

 

 円建てだとわずか2.3%を失っただけですが、ドル建てだと13.6%、金額的には8,600憶ドル、11兆円を4か月で失っているのです。世界の投資家はこの基準で見ています。ちなみに2021年年間の貿易黒字の額はわずか 5,634 億円で、円安の与える資産へのマイナスインパクトとはくらべるべくもない少額です。

 

  それでも円安はいいことですか、クロちゃん?

 

  すでに日本企業は円高対策にこの30年近く取り組んでいて、日本国内での製造だけではなく、海外で製造拠点有しているため、円安は単純によいことではないのです。

  それをさらに裏付けるため、円安のよしあしをもっと単純に調査した結果をご覧に入れます。調査は東京商工リサーチによるもので、大企業から中小企業を含めた信頼できる調査です。期間は4月初旬、ドル円レートは123円から125円程度で、まだ130円には達していない時期です。東京商工リサーチのサイトからの引用です。

 

引用

東京商工リサーチが4月1日~11日に実施したアンケート調査では、円安が自社の経営に「マイナス」と回答した企業は約4割(39.6%)に達した。

一方、「プラス」は3.9%(214社)で、「影響はない」は29.5%(1,593社)。

 1ドル=113円台で推移していた2021年12月発表の調査では「不利(マイナス)」と回答した企業は29.2%で、急激な円安進行に伴い4カ月で10ポイント以上悪化した。
 業種別では、「繊維・衣服等卸売業」(77.5%)、「食品製造業」(71.0%)、「家具・装備品製造業」(70.8%)の3業種で「マイナス」と回答した企業が7割を超えた。原材料などの仕入を輸入に依存する業種を中心に、原油高に加えて円安がジリジリと経営への痛手になりつつある。

引用終わり

 

  今一度、これでも円安はいいことですか、クロちゃん!

 

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日本の金融政策の危うさ その4.日本の住宅ローン

2019年12月05日 | 日本の金融政策

  ある方から「新しい著書の出版はどうなっているのか」という問い合わせをいただきました。ゆっくりと進んでいます。

  実は今年の夏前にすでに出版社は決まっていました。ラッキーなことに今回も最初に持ち込んだ出版社から、「出版をしたいので、話を進めたい」との回答をいただきました。

   ただ私を担当してくださる編集者の方がある理由から超多忙で、少し時間がかかるかもしれないとのこと。私は特に急がなくてはならない都合があるわけでもないため、「おまかせします」というスタンスで臨みました。

   それが約2か月くらいたつと、「打ち合わせをさせていただきたい」と反応があり、いよいよかと出かけて行きました。驚いたことに私の原稿を詳細に把握したうえで、すべてプリントアウトし、赤ペンを入れてくれていました。彼はすでに細部にわたるチェックを終えていたのです。赤ペンは全体構成から言葉づかいにいたるまで実に詳細にわたっていました。私は突然大きく進展したためおどろきました。そして全ページのコピー1部を私に渡し、大事なポイントの数々を2時間くらいかけて細かに話し合いました。彼からの修正提案などは驚くほど的を射ていたため、私からコメントあるいは反論するようなことはほとんどなく、充実したミーティングだったとの印象を持ちました。

   私は正直申し上げて、この方ならすべてお任せできると、とても安堵しました。出版の作業は担当される方に大きく依存するからです。ところがそれからしばらく進展が止まってしまいました。その間、「遅れて申し訳ない」とのメールはあったのですが、11月下旬になってやっと「再起動します」と連絡をいただきました。

  出版社はみなさんがきっと意外な感じを受ける社ですが、今回の「幸せ投資」という投資本としては若干キワモノっぽい趣旨からすると、私にはピッタリとくる出版社なのです。出版時期はまだ不明確ですが、みなさんどうぞご期待ください。以上がみなさんへの経過報告です。

 

  地銀のシリーズに戻ります。かぼちゃの馬車で万事休すとなったスルガ銀行の不動産融資問題から、日本の不動産ローンのおかしな点などを指摘します。大事な教訓が含まれていますので、しっかりお読みください。

   さて日本では不動産ローンで担保をとっているにも関わらず、返済に窮すると銀行は担保を差し出しても許してくれません。不動産の価値は担保流れの処理、つまり売却をする場合買い手が強いため、多くのケースで担保物件の価値は残存ローン額より少なくなります。すると不足分の返済を継続する必要があります。しかし世界では不動産を差し出すことでそれ以上の返済からは免れるノンリコースローンが一般的です。

   そればかりではなく、日本では担保を取った上に連帯保証人を要求するのがまかり通っています。この日本独特の慣習は絶対になくさなくてはいけないと思っています。

   そもそもみなさんは保証人と連帯保証人の違いをご存知でしょうか。連帯保証人のほうが本人と連帯して返済保証をするので、責任は小さいと思っていませんか。それは大きな間違いです。連帯保証人のほうがはるかに大きな返済義務を負っています。

   たとえば借り入れた本人が経済的には返済に窮していないのに返済を拒否したとします。するとただの保証人であれば「まずは本人に払わせろ」と言えるのですが、連帯保証人は借り入れた本人に資産があり、かつ十分な収入があっても、拒否したらすぐに肩代わりする義務が生じます。そんなばかな、と言っても後の祭り。連帯保証をしたら最後、とことん借金取りに追われることになるのです。ゆめゆめ連帯保証などしないことです。

   話が逸れましたので、戻します。

   そもそも日本でも欧米でも「おカネ」の価値がなくなりつつあると私は思っています。「世界は欲しいモノにあふれている」というタイトルのNHKBSのTV番組があります。私はそのタイトルを聞くたびに、もう「欲しいモノなんかないよ」。逆に「世界は貸したいおカネにあふれている」と思ってしまうのです。つまりおカネは欲すればいくらでも手に入る世の中だと感じるのです。どういうことか説明します。

   身近なところで言えば、企業を経営されている方なら、銀行が「借りてくれませんか」と頭を下げてくる場面に数多く出くわしていることと思います。昔とは立場が全く逆転してしまっています。その銀行に預金が潤沢にあるのに銀行は借りてくれと言ってきます。すると古くから付き合いのある経営者は定期預金するほど余裕があるのに、将来資金繰りに窮する場面を考えて、いりもしないお金をお付き合いで借りるということがままあるのです。特に相手がメインバンクであればおいそれとは断れないのでしょう。

   先日もコメント欄で山ちゃんが、欲しくもない投信を買わされそうだと書かれていました。それに対し私は山ちゃんに、「投信の購入を断るのを怖がりなさんな」と申し上げました。すでに現状は「世の中は貸したいおカネにあふれている」からです。

   そして銀行も貸す資金の調達には困りません。銀行に貸したい預金者はいくらでもいて、金利などほぼゼロなのに預金として銀行に貸しているのです。そう、あの1800兆円にのぼる日本人の金融資産がその原資です。銀行はほとんどコストのかからない資金調達が可能になっています。

   しかし地方に行くと県庁所在地ですら商店街はシャッター商店街になっているところが多く、中小の企業や商店は後継者不足により存続が危ぶまれ、地銀は貸出先に窮しているのが実態です。それが例えばスルガ銀行による怪しいかぼちゃの馬車へのローンにつながってしまうのです。一方預金者も少しでも多くのリターンを得ようと、あのインチキ商法のジャパンライフに引っかかる人が多数出てしまっています。

つづく




  

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