ありがとう、サムライ・ジャパン。
ドイツとスペインを破るとは、事前予想をはるかに上回る大活躍でしたね。目標のベスト8には惜しくも届きませんでしたが、10日間にわたり日本中を沸かせてくれました。選手たちと監督に感謝です。
さて講演内容の3回目として取り上げるのは、日本における投資がいかに偏ったギャンブル性の高いものであるかについてです。
岸田政権は「新しい資本主義」という大上段に構えた目標を掲げて登場しましたが、いまのところ目新しいものはなく、従来からのバラマキ型経済政策とNISAの期限を伸ばすのがせいぜいのようです。
投資をされている方の多くはNISA口座を使われていることと思いますが、NISAには罠が仕掛けてあるってご存知ですか。超安全な投資のみを推奨している私に言わせていただければ導入当初のNISAとは、
「リスクの高い株だけに投資させ、年に120万円は必ず使わせ、5年間売らせない」
となります。
解説しますと、
・対象はハイリスクの株・REIT・投信のみで、安全な債券はNISAの対象外
・買ったら最後、売りづらい。売ったらその分非課税枠がなくなるので、売るという行為をさせないようになっている
・1年120万円の非課税枠は翌年以降に持ちこせないので、「必ず毎年使い切れ」と言わんばかりに年に120万円を投資させようとしている
例えばA株をNISAの口座で買い、半年で倍になったので売った。この場合キャピタルゲインに課税はされませんが、5年間の非課税枠は4年半を余して消滅します。なので、値上がりしても簡単には売りづらいのです。
また、リーマンショック時やコロナショック時のように株価がどんどん下落している最中でも、年末までに買わないとその年の枠はなくなります。目をつぶってでも早く買え、それがNISAです。
岸田政権はこの図式を多少変えようとしていますが、基本的にリスクの高い株式投資のみである主要件は変更されません。債券は全く無視されています。
みなさんは世界の金融資産の半部以上は債券であることをご存知ですか。
22年5月時点での統計ですが、世界の債券残高が120兆ドル、株式時価総額は 100兆ドルです。つまり6対4で債券の方が総額は大きいのです。総額がこうなっているということは、投資家サイドからみれば、世界の投資家は平均で6割を債券に投資していることになります。
日本では円建て債券そのものの利回りが低すぎて投資に値しませんし、NISAが債券の存在すら認めていませんから、投資家の大半も債券は投資対象としていません。リスクの少ない超安全資産として投資対象を米国債にまで拡げている方は、私の唱える米国債投資を知りそれを実行されている方だけかもしれません。
この偏りの一番の原因は日銀・黒田総裁による国債金利の抑圧です。「異次元の緩和」という愚かな政策を10年も続けたことにより、債券は一般の投資家から見限られるだけでなく、機関投資家の大半も見限っています。それが証拠に債券市場の一番の指標銘柄である10年物国債の取引が全くない日が10日に一度くらいはあるのです。
為替市場でもし「今日はドル円の取引がないため、レートの提示はできません」といったらパニックになります。債券投資の世界ではそれに匹敵する異常事態が日常茶飯事で起こっています。
この一番の被害者は実は我々なのです。何故か。我々だれもが頼る年金の運用に悪影響が出ているからです。そもそも債券金利がまともにリターンをもたらせば、年金資産は大半が日本国債をメインとする債券に投資され、変動の激しい株式などで大勝負などしません。金利収入をコンスタントに得て、年金支払いを行うことができるからです。世界の大半の年金も、債券投資に重きを置くので、金融市場の半分以上が債券なのです。
それを数字で確認してみましょう。日本の年金資金を運用しているGPIF(年金運用管理独立法人)の投資にはガイドラインが定められていて、それを守った運用をしています。以下の構成比がガイドラインです。
国内債券 国内株式 外国債券 外国株式
2013年6月まで 67% 11% 8% 9%
かつて国内債券は3分の2を占め大事な年金はリスクを抑えた運用をしていました。
しかし黒田氏が就任した21013年4月以降、安倍政権と一緒になり国策として徐々に債券を減らし、その分株式投資を増やし、現在以下のように構成比を変化させました。3分の2だった債券はわずか4分の1となったのです。
国内債券 国内株式 外国債券 外国株式
2020年4月以降 25% 25% 25% 25%
GPIFだけでなく日本の機関投資家や一般投資家も同様で、債券投資は脇に押しやられました。その上「新しい資本主義」というわけのわからない政策の下、ひたすら株式投資だけを推進する政府によって税制までもがゆがめられ、バクチとも言える株式投資に誘導されているのです。
米国債投資を知らない方には、ご愁傷様としか言いようがありません。しかし実は株式投資への誘導は新しいことではなく、2003年から「貯蓄から投資へ」という政策を標榜し始めたころから推奨されていました。
ところが「笛吹けども踊らず」。国民は政府に騙されてバクチにのめり込むこともなく、2,000兆円も金融資産を貯めこみ、そのうち株式投資はわずか10%、投信が4.5%とリスクを抑え、現預金が54%、保険が27%と安全資産が大半を占めています。今後岸田政権がいくら旗を振ろうが、国民の安全志向が変わるわけもない。
しかし金利というリターンを全く生み出さない現預金にいつまでオカネを置き続けるのでしょう。これまではインフレがなかったため現預金は目減りすることがありませんでしたが、現在のように3%のインフレ率が続いたりすると、我々の資産は目減りが続くことになります。
ここまでをまとめます。
安全な債券投資を失った日本人は、現預金だけで目減りを我慢するか、株式投資というギャンブルに走るかしかなく、年金までもがその波に飲み込まれている。それが日本といういびつな国の異常な実態であることをみなさんもしっかりと自覚しましょう。
家計の金融資産2,000兆円にたった1%でも金利が付けば、国民は毎年もれなく20兆円もの分配がもらえます。一人当たり毎年16万円にもなります。
逆に3%のインフレとは、実質的に一人当たり48万円の損失になっているということです。その計算は、先ほどの1%の3倍を失うので、
16万円X3=48万円
ちなみにアメリカ国債なら、これ以上もらえます。
「貯蓄から米国債へ」、それが私の合言葉です(笑)。