世界遺産と日本/世界の町並み w/IT

世界遺産と日本/世界の個性的な町並みをITを交えた筆致で紹介します。

中国道と因幡街道の交点の山崎にはかつての城下町に個性的な造り酒屋が残されています

2015-05-24 08:00:00 | 日本の町並み
 姫路市の北にあって、林田藩の城下町には、古い町並みに混じって、世界をも相手にしようという地酒の蔵元がありました。兵庫県は灘を代表格としたお酒の産地ですが、灘以外にも多くの地酒の酒蔵があり、林田のある播州にも個性的なお酒があるようです。今回は、それらの中から250年の歴史がある老松酒造や鉱山貯蔵庫を持つ山陽盃酒造などの造り酒屋のある山崎を紹介します。

 山崎は、姫路の北西20km、バスで1時間ほど、周辺の町との合併で誕生した宍粟市の中心部の町並みです。中国道の山崎インターからも近く、阪神間に高速バスも運行され、乗換えが要らないことから、姫路経由のルートより重宝されているようです。かつては陰陽連絡をする因幡街道と東西の街道が交わる交通の要害は、現在も鉄道駅は無いものの、現在の因幡街道である国道29号と中国道との交点として健在です。

 
 
 この陸路の交通の要害は、江戸時代には揖保川の水運も開かれ、本田家山崎藩の城下町として発展しました。町の南には、林田と同様に陣屋跡が残っています。この陣屋跡は山崎小学校の隣にあり、高麗門と土塁の一部が残されています。本丸とされる場所には、明治期に建てられた法務局の建物が移築され歴史民族資料館となっています。

 
 
 一方、城下町の商家の名残としての造り酒屋ですが、老松酒造は、通りに面した母屋と表蔵が漆喰塗りと格子を連ねた趣のある建物で、景観形成重要建造物に指定されています。昨年の大河ドラマにあやかってか「官兵衛飛躍の地宍粟」という銘柄の日本酒を出しています。他方の、山陽盃酒造も白漆喰に格子を連ねた店の前にはこも樽が積み上げられています。近くにある廃坑となった明延鉱山を利用したお酒の貯蔵熟成が売りのようで、「播州一献」の銘柄で販売されています。

 
 
 これらの造り酒屋や土蔵のある町並みは、町の中心に小高くそびえる最上山の南側に東西に伸びています。

 町には、寺院や神社も多く、多くは先ほどの最上山を取り囲むように建っています。これらの中で有名な神社は大歳(おおとし、ではなく、ださい)神社で、境内には千年藤と呼ばれる天然記念物の藤の木があります。1本の木が300㎡の広さに広がり、開花の時期の5月のはあたりに良い香りが漂うそうです。

 藤の大歳神社のすぐ東にある布川工務店のホームページには、藤の季節になると開花状況が写真入で実況報告されます。まったくのボランティアで、町の観光協会からも独立の立場のようです。花の開花は天候によって左右され、年によって大幅にふらつきます。訪問の日程を決める時に、このような開花状況がネットで公開されているとありがたいものです。最近では、このような開花状況は、各地の観光協会によって立ち上げられているようですが、たまたま隣にあるという会社が、善意で続けているというのは、すばらしいことのように思います。インターネットは、元来は非営利の大学や研究機関をつなぐものでしたが、営利目的になった今も、基本的な原理は同じものを使い続けるために、いろいろ問題が多いように思います。布川工務店のような例を見ると、ほっとします。