世界遺産と日本/世界の町並み w/IT

世界遺産と日本/世界の個性的な町並みをITを交えた筆致で紹介します。

ボルドーというとワインを思い起こしますが旧市街には見所があふれんばかりです(フランス)

2014-09-21 08:00:00 | 世界遺産
 国際河川に数多くの城を作って通行税を徴収した関所があるのがライン川の中流域でした。ヨーロッパの大きな川は、流域に複数の国を持つことが多く、流れも緩やかなこともあって、船を利用した流通路になっています。ライン川でもそうですが、大きな船が河口から驚くほど上流まで遡ってきています。フランスのガロンヌ川は国際河川ではありませんが、河口から80kmほどのところに巨大船が出入りをするボルドーの港を持っています。ボルドーの場所で、ガロンヌ川が大きく湾曲して三日月の形に似ていることから、月の港ボルドーの名称で世界遺産に登録されています。

 
 大西洋に注ぐガロンヌ川は、南部で地中海に至るミディ運河とつながって、地中海と大西洋とを結ぶ物流の重要なルートでした。かつては、フランス南西部の農産物を大西洋へ安く運ぶには、船による運搬が好都合でした。現在でも大量に遠距離を運ぶのは船の独壇場で、ボルドーのワインの多くは月の港から船によって積み出されているかもしれません。訪問をした時は、ドイツの巨大クルーズ船とフランス軍の艦船が停泊していました。

 
 さて、ボルドーですが、パリからは500kmほどありますが、TGVに乗れば3~4時間程度で到着します。市街地は、ガロンヌ川の左岸に開けた低湿地で、世界遺産の登録も左岸にある施設になります。右岸との間には1822年に完成して、1965年まではガロンヌ川を渡る唯一の橋であったピエール橋が架かっています。中央をLRTが走っていますが、地表終電方式という特殊な給電がなされていて架線が無いため美しい橋の景観を邪魔していません。この方式は、ボルドーで初めて用いられ、通常のレールの間に、もう1本の給電用のレールがあり、電車が通過する時にだけ電気が来るようにして感電を防いでいます。ただ、通常の架線方式よりコストがかかるので、景観を重んじる旧市街部分のみに導入され、郊外などでは通常の架線が張られています。




 このLRTがガロンヌ川に沿って走る所にブルス広場があります。18世紀に作られて、何度か名称も変わっていますが、現在の名称は広場の北側の旧ブルス宮殿にちなんだものです。広場の前面に作られた水の鏡と呼ばれる水面に映る左右対称に並んだかつての宮殿とフェルム館とは、昼に見ても夜に見ても息を呑むほど美しい景色です。


 さて、世界遺産に登録されている旧市街ですが、主だった施設を把握するには、この中を走り回るミニトレインが便利です。日本では、道交法の制約なのか、あまり見かけませんが、ヨーロッパの町並みでは良く見かける光景です。ミニトレインで町の概念をつかんで、あとは自分の気に入ったポイントを集中的に訪問すれば、効率もよくって見落としもありません。以下に、いくつかのポイントについて紹介します。

 
 大劇場は、パリのオペラ座のモデルとなった18世紀の建物で、ギリシャ神殿風の列柱と、その上に並ぶ女神像が見事です。内部は大階段のあるホールまでしか入れなかったのですが、こちらもなかなか豪華です。

 
 
 サン・タンドレ大聖堂は、11世紀に建てられたロマネスク様式の教会で、サンティアゴ・コンポステイラ参詣道の一部としての登録にも入っています。教会の隣りにはペイ・ベルランの塔が建っていて、上るとボルドーの町の眺めがすばらしいそうですが、階段を歩いての上りになります。

 
 サン・ミシェル大聖堂もサンティアゴ・コンポステイラ参詣道の一部としての登録にも入っていて、こちらはゴシック様式の聖堂です。ピエール橋の近くに建っていますが、114mの高さの鐘楼は、ガロンヌ川を渡った対岸からも目だってよく見えます。

 
 その他に世界遺産には登録されていませんが、町中に数多くの教会が建っています。その中で、ノートルダム教会は、バロック様式で建てられており、正面の彫刻も、内部のステンドグラスも、なかなか美しいのですが余ガイドブックには載っていないようです。


 さらに、旧市街の入り口にはいくつかの城門があります。凱旋門のようなアキテーヌ門や大きな鐘をつるした鐘楼の形のものもあります。美術館や博物館も充実していて、何気なく入館したアキテーヌ博物館は見ごたえ十分で予想外の時間を過ごしました。

 
 ガイドブックには載っていなくて意外なのは、ローマの円形闘技場の遺跡が残されています。これは、旧市街を一周するミニトレインでそばを通って知ったのですが、そこだけが回りの風景とは段差があります。ボルドーが古代ローマに支配されていた3世紀頃の遺跡で、円形闘技場の壁の一部が残っています。

 ボルドーといえば世界的なワインの銘柄の一つで、代表的な赤ワインの産地であるサンテミリオン地区は世界遺産にも登録されています。ワインの醸造は、長年のノウハウの集積の賜物でしょうが、世界的なワインの産地の一つアメリカ西海岸では、IT産業で有名なシリコンバレーの技術者とのタイアップでワイン製造のロボットが売り出されているそうです。材料のぶどうと酵母とを容器に入れると、あとはパソコンが温度管理などを自動的に行って醗酵を制御するそうです。醗酵が終了すれば、オークの樽に入れて寝かせれば、自家製の美味しいワインに仕上がるとのことです。熟練の職人の後継者不足が進んでいる現在、技術の継承にはコンピュータの助けも必要になってきているのかもしれません。