世界遺産と日本/世界の町並み w/IT

世界遺産と日本/世界の個性的な町並みをITを交えた筆致で紹介します。

ヴェルサイユ宮殿より広いフォーヌテヌブロウ宮殿にはナポレオンの手も加わっています(フランス)

2013-12-08 08:00:00 | 世界遺産
 東洋のヴェニスといわれる水郷地帯に水を配した庭園が数多く残されている町が蘇州でした。どの庭園も、建物と庭園、それに庭園に作られた池が複雑に入り組んで、回遊すると、その先にどんな景色が現れるのか予想しがたい楽しみがあります。一方、ヨーロッパの庭園は幾何学的に構成されていて、全体の構図がシンプルで、シンメトリーであることも多いものです。中国の庭園は、実際の広さより広く感じますが、ヨーロッパの庭園は、それよりずーっと広くても、さほど広く感じないのは、このシンプルさゆえかもしれません。フランスを代表する宮殿はヴェルサイユ宮殿ですが、そのヴェルサイユより広い宮殿がパリの南部にあるフォーンテヌブロー宮殿です。


 フォーヌテヌブロウ宮殿は、パリのリヨン駅からterで40分ほど乗ったフォーンテヌブロウ駅前から、あまり本数の多くないバスに乗り換えて10分くらいのところにあります。駅の周辺は、家が建て込んでいますが、宮殿の後方には広大な森が広がっていて、宮殿が広いのは地の利を生かしたように思います。バス通りに開いた門を入ると、コの字型に両翼がせり出した宮殿が圧倒的な物量で迫ります。しかしこれで驚いてはいけません。この建物の後方には、幾重にも重なった建物群が建っています。

 これらの建物は16世紀初頭にフランソワ1世にその基礎が作られ、その後のフランス王によって改築が続けられています。フランス革命によって王室が崩壊した後は、ご他聞にもれずナポレオンが権威の象徴として、ヴェルサイユ共々利用したようです。門を入って目に飛び込んできた広大な庭は、ナポレオンが失脚後に親衛隊に別れを告げた場所なのだそうです。

 
 
 
 宮殿内の見学は、コの字の右翼から入りますが、宮殿の主は正面の階段を上がって入城したのだと思います。この階段が凝っていて、中央部を避けて、左右に半円を描いて上り2階の正面で合流するものですが、その曲線が洒落ています。一方、右翼から入城した観光客は、オーディオガイドを頼りに広大な宮殿の一部と思われる部屋部屋を回ります。ベルサイユと似たような造りですが、こちらも負けず劣らず豪華な部屋や回廊、それに部屋を彩る調度が続きます。部屋からは、宮殿の後方に広がる広大な森や、その手前の池も見渡せます。



 宮殿の内部を見た後は、建物の後方に回って庭を散策することになります。緑の中にいくつも建っている宮殿の建物群を抜けると、細長い運河や大きな池が現れますが、ヴェルサイユの細長い運河に比べると小ぶりのように思います。森に向かって細長く伸びる運河の周りをめぐる馬車も走っていますが、景色の変化が乏しいのではないかと思います。むしろ、宮殿の建物に寄り添うように作られた池のほうが表情が豊かな感じがします。

 ヨーロッパ社会では、貴族が健在で、彼らから見ると、日本のようにすべての国民が平等であるのは奇妙に写るのだそうです。この身分制度があるから、伝統文化が保存できるのだとは、彼らの主張なのですが、なにゆえに貴いのかは理解できません。民主主義はヨーロッパ社会から広まりましたが、考えようによっては、最も民主主義名国の一つはわが国かもしれません。貴族は、伝統文化を保存したかもしれませんが、全員が中流の国民の大量消費に支えられて発展したIT技術は生まれなかったのではないのでしょうか。