福島第一原発の現状がどうなっているかについて、ようやくまともな記事が出てきた。今日のasahi.comによると、一号機から三号機の建屋外に流れ出た放射能の量は、原子炉内にあった総量の一割りに満たない可能性があるという。これからが本当の意味での危機を迎えるということだ。そんな楽観できる状況ではないのである。このまま炉心に冷却水を循環させる継続冷却システムが働かなければ、格納容器が壊れて内部に残る放射能が放出されることになり、それこそ米国が考えていたように、80キロ圏内からの避難という事態だって想定されるのではないか。政府や東電の発表は、最善を尽くしているかのように言っているが、根本的な解決策が講じられなければ、そうした事態だってありうるのだ。炉内を100度以下に安定させることが、危機状態から抜け出す前提なのである。背筋がぞっとしたのは、専門家の意見として「注水や放水による現在の冷却では過熱を防ぐので精いっぱい」と書いてあったことだ。たとえどうなろうとも、日本の国民は冷静に対処するわけだから、政府は真実を語るべきだろう。そして、手の施しようがないのであれば、国民の命を守ることを優先させるべきなのである。政府も避難指示位は出せるはずだから。
風評被害を拡大させているのは、やっぱり民主党政権だった。政府は夏の節電対策として、西日本への家族旅行を推奨しているというのだから、何を考えているのだろう。東北地方というのは、松尾芭蕉を例に出すまでもなく、旅行のメッカである。福島県の会津地方などは、それで食べているのである。そうでなくても、東日本大震災で交通網がストップしたり、福島第一原発による風評被害で、観光客はガタ減りである。今年に入って、対前年比で95㌫減になっているのが現状だ。そこに追い打ちをかけるかのように、観光地としての東日本を切り捨てるかのような発言は、許されてよいわけがない。現政権に統治能力が無く、無政府状態なのが今の日本ではなかろうか。直接被害にあわなかった地域でも、原発のトラブルが長引くにつれて、観光面でも深刻になってきている。とくに、会津においては、一番稼ぎ時だった4月の中旬から6月の始めまでの団体客は、ほとんどキャンセルされてしまい、唯一望みを託しているのが個人客や家族旅行なのである。政府がいい加減なことを言うことで、さらに観光客の減少に拍車がかかってしまうのである。本来であれば、東日本に観光客が足を運ぶように宣伝すべきではないか。東日本の住民は天災だけでなく、民主党政権の人災による被害者でもある。
未曾有の危機によって日本という国家が根底から揺らいでいる。しかし、それでもなお国民が一致しているのは、天皇陛下がおられるからである。大東亜戦争で降伏への道を選択された昭和天皇は、内心ではご退位されることを決意されていたという。それを断念されたのは、連綿と続いてきた皇統の歴史を、保守せんがためであられた。だからこそ、戦後復興の先頭にお立ちになられたのであり、国民が敗戦のどん底から立ち上がり、復興を成し遂げることができたのは、昭和天皇を中心にして、国民が結束したからなのである。葦津珍彦は『昭和史を生きてー神国の民の心』で、昭和天皇の偉大さに触れ、陛下自らが詠まれた2首の歌を紹介している。「冬枯のさびしき庭の松ひと木色かへぬをぞかがみとはせむ」「潮風のあらきにたふる浜松のををしきさまにならへ人々」。昭和天皇は私心をお捨てになられて、どこまでも国民と共に歩まれることをお望みになられたのである。それは今の天皇陛下も同じであられる。今回の大震災や原発事故の避難民のところにお出かけになられ、その痛みや苦労を分かち合おうとされるお姿に、熱いものがこみあげてくるのは、私だけではないだろう。いかなる困難に直面しようとも、皇室が存続している限り、日本人は挫けることがないのである。