作詞家の星野哲郎がこの世を去った。私の持ち歌が星野哲郎作詞の「おんなの宿」しかないせいか、昔からの知り合いを失ったような気がしてならない。作曲が船村徹で、昭和39年に世に出た大下八郎のヒット曲である。久世光彦が『月がとっても青いから』で、そこに登場する男女のイメージを描写している。「男は角刈りか、安ポマードの匂いのするリーゼントで、女は着物をだらしなく着崩した飲み屋の女がいい。いずれ、裏通りの、そのまた日陰を拾って歩く男と女である」。世の中にあって、それ相応の評価を受ける人たちは一握りである。大半は市井の片隅で生き、そして死んでゆくのである。それが庶民の実像ではなかろうか。そして、いくら境遇的に恵まれていなくても、激しく燃焼させる瞬間はあるのだ。それは名誉や損得勘定から出てくるのではない。「おんなの宿」の三番目の歌詞に「もえて火となれ 灰になれ 添えぬ恋なら さだめなら」というのがあるが、その情念の激しさが人の心を打つのである。エリート面をした民主党政権が、海保職員を守ろうとする国民の声に耳を傾けようとしないのは、そうした庶民のエネルギーを甘く見ているからだろう。しかし、星野哲郎が愛してやまなかった庶民を侮れば、その報いを受けることになるのは、いうまでもなく民主党政権なのである。
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