昨日は、大正時代に兵庫県立農学校で使われた『實業讀本』を哨戒しましたが、今日は、同校で使用された『實業修身訓』の教科書を紹介します。
文学博士澤柳政太郎著、東京同文館版で、明治44年(1911)発行、大正6年修訂の教科書です。地元の旧家のご先祖が使用された教科書で、書き込みがいっぱいしてあります。ノートのメモも貼り付けてあり、勉強熱心な方だったことが伝わってきます。
修身の教科書といえば、精神論かと思ってしまいがちですが、巻頭に教育勅語と戊申詔書が掲載されています。目次を見てみると、偉人伝や精神論ではなく、心理学や道徳理論などの項目が目につきます。実際に読んでみると、精神発達論、知識、情緒、情操などについての科学的な解説が続き、傍線、書き込みで埋まっています。きっと、新鮮な思いをもって勉強されたんでしょう。
明治維新から約半世紀が過ぎ、日清、日露の大戦争に勝った日本は一等国の仲間入りをしたとはいえ、経済力はまだ三等国のレベルにあり、世界は白人が支配し、黄色人種は劣等と見られていました。そうした時代にあって、實業人が備えておかなければならない道徳性とその役割、意義を学べるようになっている教科書だと思いました。
目次は次の通りです。精神の発達、知の修養、情の陶冶、意の鍛錬、我を知れ、良心の作用、克己の価値、幸福と人生、人格の完成、本務の目、徳と品性、理想的生活、道徳に根本の新旧なし、運命と努力、道徳と経済、道徳と法律、時代の要求する人物、国家の富強品位、世界に於ける帝国の位置、多事多難の前途、国民道徳の特色、道徳の力。
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