メドレー日記 Ⅱ

by 笠羽晴夫 映画、音楽、美術、本などの個人メドレーです

不染鉄 展

2017-08-10 16:12:01 | 美術
不染鉄展 没後40年 幻の画家
東京ステーションギャラリー 7月1日(土)~8月27日(日)
 
不染鉄(1891-1976)という画家、これまでその名前も知らなかった。日本画を始めてまもなく伊豆大島・式根島に数年いたということから、田中一村みたいな?という想像をしたが、そうではないようで、戦前の作品の多くは朦朧体を使ったものもあり、ほのぼのとした風景、それも民家がたくさん並んでいるものが多い。このあたりは日本画の巨匠たちを見慣れていると、それらによくある「どうだ」という感がなく、押しつけがましくはないが、このまま?という感じがしていた。
  
そこへ一階下の第二会場で戦後の薬師寺東塔、富士山をはじめとする新しい画題のものになると、一気に不染ワールドともいうべきユニークでインパクトのある、しかも多様な作品群を見ることができる。
 
それらの中にも、多くの民家があり、それら一つ一つの背後に生命があることを感じながら入念に描き続けたことは一見して理解できる。
 
年譜によれば、村山槐多と親交があったようで、感じるところ多く、槐多の早死を悼んだようである。不染と槐多の画風を比べると、二人の不思議な縁を感じる。
 
画家の本名は不染哲治、珍しい姓である。

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中野信子「サイコパス」

2017-08-07 14:57:22 | 本と雑誌
サイコパス 中野信子 著  2016年11月 文春新書
 
タイトルにあるサイコパスは、あの「羊たちの沈黙」などに出てくるキャラクターの関連で目にしてきたが、著者がよく出てくる「英雄たちの選択」(NHK BS)でも時々このタイプへの言及があった。
 
著者によれば、もともとこのサイコパス(psychopathy)とは連続殺人犯などの反社会的な人格を説明するために開発された診断上の概念なのだそうで、だから本書でそのさまざまな側面と脳の各部との関連、先天的なものか後天的なものかなども含めたいくつかの統計的なデータから推定される相関などをもとに、これについて語られるが、科学的な因果関係について確定的なところはまだこれから、ということのようだ。
 
したがって著者も、人間のいろんな面、タイプに関して、納得するところが多い説明は可能だが、これがあまり確定的に扱われると、差別、虐待などに流れることはよく認識している。
 
世の中には、あとで考えてみればこういうタイプの人たちがいて、あの人はそういところがあるのかもしれない判断すれば、リスク回避もできるし、あまりくよくよしない、という受け止め方が今はせいぜいだろう。
 
TV出演からも想定されるように、説明はわかりやすい。
まあ私もここでうかつなことは言えない。サイコパスと思われる人たちも、世の中で役立つ仕事に向いていることもあり、著者も「好むと好まざるとにかかわらず、サイコパスとは共存してゆく道を模索するのが人類にとっては最善の選択である」と言っている。


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