檸檬(れもん)
梶井基次郎 著 新潮文庫
梶井基次郎 (1901-1922) の主要作品を集めた短編小説集で、もっとも有名な「檸檬」がその名前になっている。
これも以前アップした荒川洋治「文庫の読書」でとり上げられている(新潮文庫ではないが)ので、読んでみた。もっとも「檸檬」だけは読んだ記憶がある。梶井個人でなく複数の作家のアンソロジイだったのかもしれない。そうだとするとかなり以前ということになるが。
再読してみると檸檬は確かによくできたものだが、若くていろんなもの、当時の教養といってもいいものが頭の中をぐるぐるめぐっているインテリの想念を描いたといった感じで、ちょっと辟易するところもあった。
そこへいくと荒川が一つだけ取り上げている「城のある町にて」がえがいている対象と文章の魅力で心に残った。死んだ妹のことを思いながら姉のいる三重県松坂を訪ねたときの風景、家族や土地の人たちとのまじわりが力まずに描かれていて、文章もいい。
その他では「Kの昇天」が月による自分の影を追って昇天する男を描き、つくりものすぎるところはあるけれど、なかなかという感があった。私としてはここから思いうかぶのがベートーヴェンの「月光」第三楽章で、それもあるかもしれない。
梶井基次郎 著 新潮文庫
梶井基次郎 (1901-1922) の主要作品を集めた短編小説集で、もっとも有名な「檸檬」がその名前になっている。
これも以前アップした荒川洋治「文庫の読書」でとり上げられている(新潮文庫ではないが)ので、読んでみた。もっとも「檸檬」だけは読んだ記憶がある。梶井個人でなく複数の作家のアンソロジイだったのかもしれない。そうだとするとかなり以前ということになるが。
再読してみると檸檬は確かによくできたものだが、若くていろんなもの、当時の教養といってもいいものが頭の中をぐるぐるめぐっているインテリの想念を描いたといった感じで、ちょっと辟易するところもあった。
そこへいくと荒川が一つだけ取り上げている「城のある町にて」がえがいている対象と文章の魅力で心に残った。死んだ妹のことを思いながら姉のいる三重県松坂を訪ねたときの風景、家族や土地の人たちとのまじわりが力まずに描かれていて、文章もいい。
その他では「Kの昇天」が月による自分の影を追って昇天する男を描き、つくりものすぎるところはあるけれど、なかなかという感があった。私としてはここから思いうかぶのがベートーヴェンの「月光」第三楽章で、それもあるかもしれない。