「山猫」 ジュゼッペ・トマージ・ディ・ランペドゥーサ 作 小林惺 訳 (岩波文庫)
作者(1896-1957)の死後(1958)に刊行されたらしい。あのヴィスコンティ「山猫」(1963)の原作で、そうでなかったらその存在に気づかなかっただろう。
話は、ガリバルディが登場したイタリア統一の時代、シチリアの公爵が、時代の移り変わり、一族の衰退と世代交代を認識し、それを受け入れていく、というもの。その滅びの過程が、身の回りの細部を含め詳細に描いている。
こちらにあまり知識がないから、そういう細部は読み飛ばすしかないが、風俗小説としての面白さは、事情に通じた人、特にイタリアの人にはあるのだろう。
公爵、甥のタンクレディ、彼の婚約者で新興地主の娘アンジェリカ、この3人は映画でそれぞれバート・ランカスター、アラン・ドロン、クラウディア・カルディナーレが演じている。公爵はバート・ランカスターほど立派でないように読めたが、あとの二人は、まるでここから抜け出てきたようなものである。逆に順序は反対だが、この映画を作ってもらうために書いた、と作者には失礼だが、考えてしまう。
特にアンジェリカの、絶世の美貌、溌剌さ、粗野で下品なところ、これはクラウディア・カルディナーレ以外の誰も思い当たらないといってもいいだろう。
しばらく映画を見ていないが、近々また見てみたい。