メドレー日記 Ⅱ

by 笠羽晴夫 映画、音楽、美術、本などの個人メドレーです

オリエント急行の殺人(アガサ・クリスティー)

2019-03-07 09:06:54 | 本と雑誌
オリエント急行の殺人 ( Murder on the Orient Express )
アガサ・クリスティー  山本やよい訳(ハヤカワ文庫)
 
数年前からひまつぶしに、これまであまり手をつけていない分野の、たとえば評価の高いミステリをときどき読んでいる。今回は少し前の「そして誰もいなくなった」に続いて二つ目の作品。
 
1934年の作品で、舞台もほぼそのころ、東から西へ向かうオリエント急行の最上級の車両で殺人事件が起こる。殺された時刻はちょうど雪で列車が一時止まってしまったユーゴスラビア付近。
乗り合わせた鉄道会社の重役と医師、そして私立探偵ポアロが、12人の乗客の誰が犯人か、調べを進めていく。こういう閉じこめられた状況での話は上記の作品と同様である。
 
上流階級の人たちを中心に、様々な国籍の容疑者(?)たちが登場、そしてベルギー人で上流階級の世界、常識にくわしく、スノッブでもあるポアロの眼を通して書かれている面が多いから、上記作品よりは叙述が飽きない。
 
そして、1932年のリンドバーグ誘拐事件が背景というか、そこからエピソードを借りているというか、そういうところから話に広がりが出来ている。
 
さて作者が目指した通り、すべての供述、証拠品収集のあと、ポアロが全員を集めて整理と推理にかかる。誰でもない、でも誰かは無実でないという設定で、さてというわけである。
 
しかし、ここまできて、そんなにミステリに詳しくない私だが、これはひょっとしてあれかなという思いがめぐった(もちろんネタバレになるようなことは書かないが)。そしてそうだとすると、それをポアロがどうおさめるのか、そこで作者の人間性、作家としての性格が見えてくるだろうと想像した。
 
結果はほぼそのとおりだったが、エンターテイメントとして上級の作品であることは確かである。

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