ジェフリー・アーチャー「死もまた我等なり」(The sins of the father) 上下 戸田裕之 訳 新潮文庫
クリフトン年代記シリーズ第2部である。第3部も本国で出版されたらしい。
前作「時のみぞ知る」で二つの典型的な家系が交錯し、その二人の若者は親友であり、しかも一筋縄ではいかない運命を持たされていることが、提示された。本作はその後二人が別れ、一方の妹との困難な結びつき、第2次世界大戦を潜り抜けた後の問題、と盛りだくさんな展開である。
描きかたは前作同様に主要な登場人物を中心に1~2年の話を組み合わせるという形になっており、読者からすると章が変わるごとに時間は前後することが多い。
前作ではこれが新鮮だったが、こう長く続くと読む方のリズムとしては違和感も感じる。これが映画の原案であれば、うまく編集されるだろうが。
また終盤で扱われる問題、これはイギリスの貴族事情にうといこちらとしては、またおそらく事情に通じていてもかなりちがう価値観の社会に住んでいるものとしては、そんなものかなというページが長すぎる。しかも決着は次回になるようだ。
アーチャー作品の面白さ、そして感動からいえば、年代記シリーズの前の「遥かなる未踏峰」の方が上である。