「なぜフランスでは子どもが増えるのか フランス女性のライフスタイル」( 中島さおり 著 2010年5月 講談社現代新書 )
著者は1961年生まれ、フランス人の夫とパリ近郊で暮らしている。前に書いた本が、フランスの少子化対策、その成功についてよく参照されたようで、そのあとを受けて書いたものであるが、この本の中で書いているように、必ずしも少子化対策が必要と考えているようではなく、日本における想定質問に答える形でフランスにおける背景事情を探り解説して、この本になったようだ。
読む方としてもそのほうが面白い。フランスでも主に普仏戦争以来、戦争のたびに人口減少が政治的にも心配され、対策はいろいろとられたのだが、家庭、男女間の問題(結婚外、結婚後とも)に政治が口を出すことが極端に嫌われるということもあり、直接的に効いた対策があったわけではないようである。
まず男女のあらゆる場面における「ミクシテ」つまり一緒に、パートナー重視という文化、女性が働くことの当然、そういうなかで結婚していようが、未婚であろうが、子供を産んでも、つまり母となっても女性であることに(仕事をし常に男を意識することに)、なんら痛痒を感じない社会のシステムが、結果として出来てきた、ということが大きいようだ。
また子供を持っても、3歳から無料保育、公立で高校、大学も無料ということで、日本以上の学歴社会であるフランスでも、一応大人になるまで経済的にはそんなに困らないとのことである。
それでもその裏にも著者は目配りを忘れていないから、経済的に恵まれている人たちの住んでいる地域でないと学校のレベルは低く、日本のような学習塾がないので、そのままになってしまうことが多いなどの指摘、バカロレアに関する細かい話など、これらを読むと、フランスに生まれるのも大変だ、と思われてくる。
これを読んでおくと、フランスの映画を見て、特に出てくる女性については、少し理解しやすくなるだろう。