福岡市の小児歯科・矯正歯科・障害者歯科 ふたつき子ども歯科 院長日記

小児(障害児を含みます)の包括的歯科医療を提供するふたつき子ども歯科。子育てや食のことも含んだ、院長ブログ。

発展途上国の歯科 その2

2006-06-30 | 国際交流

昨日、JICA歯学教育コース(6月28日のブログで書いています)の講義で九州大学歯学部に行ってきました。講義の内容はART(Atraumatic Restorative Treatment:非侵襲的歯科治療)についてです。ARTとは簡単にいうと、開発途上国などで歯科の設備等がほとんど整っていない環境で可能な予防的歯科処置です。基本的に、むし歯部分を取り除く器具(機械ではありません)と詰める材料のみでOKです。早く簡単にできるので、例えば小学校などに出かけて集団に行うのがむしろ一般的です。公衆衛生的発想です。正直言って日本も含めた歯科医院での通常の治療に比べて妥協的なものではあります。

むし歯が神経まで至って痛みが出ると、通常は神経を取る処置をして被せたり詰めたりしますね。ところがアフリカなどの話を聞くと、神経の処置のための器具が無い、多少のむし歯では歯科を訪れないなどの理由で、実際の歯科処置はほとんど抜歯だそうです。ですから、こちらから出かけていって、歯科教育をしたり小さい虫歯のうちに処置をしてあげることで、歯の寿命を少しでも長くしたいというレベルです。

今年のコースメンバーはアジア、アフリカ、南米の9カ国から10名が来日していました。各人各国でのARTについての教育について尋ねたのですが、すべての国で学生の時点で教育を受けているとのこと。日本では教科書的にも実際的にもARTの教育はありませんし、現役歯科医もほとんど知らないと思いますので、その旨話したところ、皆驚いていました。日本は歯科医院での治療・予防が基本の国ですので当然とも思いますが、公衆衛生という意味では日本はかなりの低レベルかも知れません。

私が何でARTの講義などをするようになったか? それはまたいずれ。

ARTではこのような器具のみでむし歯部分を取り除きます。

詰めるのはフジ9というある種の歯科用セメント(日本製)。

 

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エナメル質形成不全の話

2006-06-29 | 口の中の問題

健診をしていると結構珍しくないのが、歯の表面にスポット状の白斑がある「エナメル質形成不全」です。通常は単発で出てくるので原因は不明です。この白斑部分はエナメル質の結晶が充分に出来ていないので、簡単に言うと歯の質が弱い。

原因が分かっているものとしては、乳歯のむし歯が重症の場合にその後の永久歯に出現することもあり、これはターナー歯と呼ばれています。また生後間もない間に全身的に重症な病気にかかった場合、ちょうどその時期に出来つつあった永久歯(前歯と6歳臼歯あたりが多い)の形成に問題が出ることがあります。この場合、複数の歯に左右対称に見られ、範囲も広くエナメル質が欠けていることもあります。エナメル質形成不全が歯間、歯の生え際、奥歯のかみ合わせ部にある場合は注意です。これらは元来むし歯になりやすい場所ですので、形成不全からむし歯に移行していくリスクは高くなります。

形成不全のところを「歯磨きしてもきれいになりません」といわれる場合がありますが、表面的な着色でありませんので解決はしません。歯磨きを意識する、フッ素を塗る、噛み合わせ部分であればシーラントを施すなど、初期むし歯と同様の対処で良いと思います。前歯に発生して審美的に問題の場合、当院では当面歯は削らずに、表面をレジン材でコーティングしてカモフラージュするという方法をとっています。

矯正(初期)治療中の10歳の患者さん。上の前歯に範囲の広い形成不全あり。乳歯の時期のむし歯が重症だったそうです。

上の前歯2本をレジン材でコーティングしました。ほんの10~15分位でできる割には効果的。

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発展途上国の歯科 その1

2006-06-28 | 国際交流

九州大学歯学部では国際協力機構(JICA)の協力のもと開発途上国の歯科医師10数名を毎年約4か月間招いて、歯科教育を行う「JICA歯学教育コース」を18年間ほど続けて来ています(http://www.dent.kyushu-u.ac.jp/gallary/jica2005d.htm)。私も昨年まではコースマネージャーのような役割で6~7年関わって来ました。途上国といっても様々ですが、以前はアジアや東ヨーロッパ、最近は南米やアフリカからの歯科医師が各国1名ずつ選ばれて来日しています。

例年5月~9月の時期に行っており、コースの最初の時期に「カントリーレポート」と題して、各国の歯科事情を主にレポートしてもらいます。ここで国による違いが興味深いわけですが、わたくし達的には日本との違いがある種面白い。途上国の歯科医師不足ということで、人口/歯科医師数の数字がよく出てきますが、歯科医師過剰の日本では歯科医師ひとりに対して約1500人、これがザンビアのような歯科大学が無い国では、歯科医師は他国で教育を受けたUターン組ですので、歯科医師ひとりに対して100万人とかいう、とてつもない単位です。例えば福岡市には歯医者がひとりかふたりという計算です。いっぽうで南米ウルグアイあたりはいくつも歯科大学があって、人口比は日本と大差ありません。

日本はむし歯の洪水の時代に治療パワーとして歯科医師を増やす方策をとったわけですが、それでとりあえず治療率は上がりました。ではウルグアイの人はむし歯が少ないとかよく治療をされているということはない。なぜか? 国民一般の経済状態が良くないため医療費を支払えない、健康保険制度が整っていないなどの理由で、歯医者はいても患者さんが来ないそうです。結局ウルグアイ人の口の中は健康にはなっていないという次第。

2004年のJICAコースメンバー。大濠公園にて。ウルグアイのグロリアさんはカラオケとダンスが好きだったな~~。

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歯科健診~舌小帯について

2006-06-27 | 口の中の問題

舌小帯とは舌の裏側に付いているスジです。ここの問題は、スジが短い、または舌の先の部分まで付いていて舌の動きが制限される場合です。動きが制限されると何が起こるか? それは発音の問題です。このスジは上唇小帯と違って、生後数か月はいい方向に変化しますが、その後は変化ないということです。

写真のように舌を前に出そうとすると、真ん中がくびれてハート型になりますのでその程度で重症度が判断できます。上唇小帯と違って舌小帯が短い子どもは少ないのですが、自然の改善があまり期待できないので、発音に影響が出ている場合は舌小帯伸展手術を受けることをお勧めします。治療の時期としては発音がある程度獲得される前が望ましいのですが、年齢が低いと外来での外科的治療法は難しいので、完璧ではありませんが出血が少なく短時間でできるレーザー治療を行う場合もあります。

このように舌小帯が短いと舌が充分に上にあがらず、サ行、タ行、ラ行などの発音に影響が出やすい。

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歯科健診~上唇小帯について

2006-06-26 | 歯並び、矯正の話

健診(特に乳幼児健診)で軟組織(歯肉、唇、口の中の粘膜)の問題として割とよくチェックされるのが上の前歯間まんなかにあるスジ、「上唇小帯」の太さや位置です。上唇小帯が太くて歯の間あたりまでつながっているような状態が続くと、将来的にまん中部分がすきっ歯になりやすい状況となります。その場合、小帯を切る(正確には伸ばす)小手術が奨められます。

1歳6か月健診では、上唇小帯の位置は結構そのような状態です。ところが3歳児健診、学校健診と年齢が上がるに従って、小帯は次第に上にあがって行き、実際に小帯が原因ですきっ歯になっている子どもは非常に少なくなります。正確には、歯の生えている上顎の骨の高さの成長によって、小帯が取り残されるという仕組みです。以前は低年齢で予防的に手術を奨める歯科医もある程度いたようですが、自然に問題ない範囲になる場合がほとんどですので、最近では上の永久犬歯が生えてくる10歳頃まで待って判断するのが普通です。

子どもが小さい時期に云々いう歯医者がいても、特に心配いりません。ただし、2歳半ころまでは上の前歯はむし歯になりやすい時期で、ここの仕上げ磨きは重要です。小帯はまだ歯に近い部分に付いていますので、ここに歯ブラシがあまり当らないように工夫が必要ですね。

この患者さんは6歳で、上はまだ乳歯ですが真ん中に隙間があります。永久歯もこのようになるかな?と思わせる数少ない例です。2歳で上唇小帯の状況がこのようでしたら、むしろあたり前。

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乳歯の数~癒合歯(ゆごうし)について

2006-06-24 | 歯並び、矯正の話

乳幼児の歯科健診でむし歯以外の事柄で時々チェックされるのが、写真のような癒合歯です。元来ある乳歯2本が発生・形成過程でくっついたもので、いちばん発生確率が高いのが下の前歯2本(1番目と2番目)がくっついたものです。永久歯ではこのような歯は非常に少ないのですが、乳歯ではそこまで珍しいものではありません。親としては後の永久歯も同じような形?とか、永久歯の数は大丈夫?とか、永久歯への影響が心配になるところです。

癒合歯は通常前歯にしか発生しません。歯数が少なくなる傾向の1表現形ですので、よりくっついた形で、反対側の歯と比べて大きめの歯になるパターンもあります。またさらに進んだ形では、完全に1本の歯が無くなる「先天欠如」という形になります。永久歯数への影響ですが、発生場所によって違います。下の1番目&2番目の癒合歯では、後の永久歯が通常通り揃っている確率8割、下の2番目&3番目の癒合歯ではそれが2割(2番目の永久歯が欠如する確率8割)。上の1番目&2番目癒合歯ではほぼすべて2番目の永久歯が欠如します。

癒合歯があった場合の時期的対応は

1. 癒合している境目からむし歯が発生しやすいので、歯磨きに気をつけるとともに、歯科で積極的な予防を行ってもらう(シーラント、フッ素など)。

2. 5歳近くなったら、X線で永久歯数を確認してもらう。

3. 癒合歯は幅が大きいことが多く、永久歯との生え変わりが自然に行かないことがあるので、状況によってはその時期に歯科での乳歯抜歯が必要になる。

このパターンでは通常永久歯数は揃っているが、生え変わりの問題が出てくることもよくある。癒合歯の裏側から永久歯が出てきている。

 

2番目&3番目の乳歯が癒合していると、後の2番目の永久歯が無いことが多い。

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ピアット(イタリアン)再び

2006-06-23 | おすすめの店

先日、子ども会育成会の会議の後、他の委員と久しぶりにピアットに立ち寄りました。夜の8時30分というのに、「これってランチタイム?」というくらい明るすぎる均一な照明です。心の中で「相変わらずやな~、もうちょっとどげんかならんとかいな」と思いながら、ビール、前菜、白ワイン、パスタなどをオーダーしました。一応いくつか写真に撮ったのですが、実際食べてみないことには何てことないですね。イタリアンワインに偏った食事でしたので、次回は種々の食メニューをトライする予定です。

豚タンの煮込みスライス。あまり煮込まないほうが歯ごたえはあるかも。豚タン自体があっさりしているんですかね?

 

定番のカルパッチョです。見た目は普通、味はいけます。

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むし歯菌の母子感染の話題

2006-06-22 | カリオロジー
先日、アメリカ小児歯科学会シンポジウムでのフッ素の話を書きましたが、今度はむし歯菌の感染の話です。
むし歯菌の母子感染については、最近の乳幼児をお持ちの保護者の方は結構ご存知のようです。これは1993年にCaufield が「感染の窓」という言葉を使って乳幼児の虫歯菌獲得時期を研究報告したのが元祖です。それ以来十数年になるわけで、このことについてはその後様々な研究がされて来ています。
むし歯菌の蔓延度は国や地域によっても違うと思いますが、ある程度乳歯が出てくると虫歯菌もやって来る。日本人のデータでは10本歯が出ている子どもの20%、12本歯が出ている子どもの40%で虫歯菌が検出されるそうです。10~12本というのは丁度1歳6か月健診の頃にあたります。また北欧のデータでは、虫歯菌が2歳までに検出される子どもはそれ以降に感染している子どもと比較すると、4歳になった時のむし歯数(むし歯の出来ている面の数で比較しています)は3倍程であるという報告があります。すなわち、感染が早いほど虫歯菌の定着量が多くなるということを数字で実証しています。
「感染の窓」が開くのが概ね1歳半から2歳半くらいの時期で、その後一旦「窓」は閉じると云われています(その後第2、第3の窓はあるのか?というのは謎ですが、とにかく最初の窓が大きい)。ここで虫歯菌が、主として母親から感染し乳幼児の口の中に定着すると云われていますので、その時期には甘味に偏ったおやつのダラダラ食べを控える、母親の虫歯菌を減らす(母親の歯磨き、歯のクリーニング、フッ素塗布、キシリトール使用など)ことで感染量を少なくし感染を遅れさせることが、楽な将来につながります。
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福岡市中央区大名1丁目 あすかや(居酒屋)

2006-06-21 | おすすめの店

警固四つ角から大正通りを赤坂門方面に歩いていきます。100m弱だと思います。コンビにの少し手前右手に「あすかや」の看板があります。ここは、おかみさんと板さんの二人で営業されています。2500円で晩酌セット(おまかせコース)があるのですが、この日替わりメニューが気が利いています。

若干騒ぎすぎのおかみさんと、若くて静かな板さんコンビです。彼は本当にまだ若いのですが、多分すばらしいセンスの人です。ニラ玉ひとつ頼んでも、色合いと味が違う。つい、「どんなしたらこうなると~?」と訊きたくなるくらいです。仕事帰りのサラリーマンの多いどこにでもあるような小さな居酒屋。でもちょっと違うんだなーこれが。とりあえず生ビール付晩酌コースを頼んでみたら。

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最近のフッ素の話題、アメリカ編その1

2006-06-19 | フッ素について

2005年11月に、アメリカ小児歯科学会が「小児および青少年の口腔疾患予防」に関するシンポジウムを開催しました。そのまとめが学会誌に掲載されましたので、順次紹介したいと思います。まずはむし歯予防としてのフッ素の使い方に関するガイドラインです。内容がそのまま日本に当てはまるわけではありませんが、フッ素先進国の話は参考になると思います。

フッ素のむし歯予防効果はフッ素イオンが何らかの形で歯に触れて歯の質を強くする局所効果と、フッ素錠剤などを毎日服用することで形成途中(永久歯は生まれてすぐ頃からエナメル質形成が始まります)のエナメル質が強くなる全身効果に分けられます。以前は、全身効果があるということで、特に水道水中にフッ素を入れていない地域ではフッ素錠剤などを処方されており、妊婦でも、胎内のこどもの歯(乳歯)が丈夫になるということで同様に処方されていた時期もあったそうです。最近、この全身効果は信頼性が低いことが分かってきています。

したがって、むし歯リスクが高くない小児では、基本として1日2回のフッ素入り歯みがき使用と、歯科医院での定期的な(高濃度)フッ素塗布でOKと述べています。ニューヨーク大学で小児歯科をやっていた時の話ですが、水道水にフッ素が入っており高いむし歯予防効果がありますので、小児でも半年に1回の健診とフッ素塗布がスタンダードでした。日本の場合、そこらへんのベースがありませんので、3~4か月おきの健診+フッ素が平均的です。リスクが高い人は、歯科医院でのフッ素塗布回数を増やすことに加えて、フッ素うがいや家庭でのフッ素ジェルの使用を奨めています。この辺は当院も同様のポリシーで予防計画を立てています。

アメリカではフッ素を歯の栄養剤のごとく考えているように思います。様々な手段で摂れば摂るほどいいみたいに考えている人が結構多いので、「リスクの高くない人は程々でいいよ」と、リスクに応じて過不足ないようなフッ素の使い方をさせなさいと述べてあります。

 

アメリカでのフッ素入り歯みがきの元祖はCrest(P&G)で1955年発売、それを追ってColgate だそうです。

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