健診をしていると結構珍しくないのが、歯の表面にスポット状の白斑がある「エナメル質形成不全」です。通常は単発で出てくるので原因は不明です。この白斑部分はエナメル質の結晶が充分に出来ていないので、簡単に言うと歯の質が弱い。
原因が分かっているものとしては、乳歯のむし歯が重症の場合にその後の永久歯に出現することもあり、これはターナー歯と呼ばれています。また生後間もない間に全身的に重症な病気にかかった場合、ちょうどその時期に出来つつあった永久歯(前歯と6歳臼歯あたりが多い)の形成に問題が出ることがあります。この場合、複数の歯に左右対称に見られ、範囲も広くエナメル質が欠けていることもあります。エナメル質形成不全が歯間、歯の生え際、奥歯のかみ合わせ部にある場合は注意です。これらは元来むし歯になりやすい場所ですので、形成不全からむし歯に移行していくリスクは高くなります。
形成不全のところを「歯磨きしてもきれいになりません」といわれる場合がありますが、表面的な着色でありませんので解決はしません。歯磨きを意識する、フッ素を塗る、噛み合わせ部分であればシーラントを施すなど、初期むし歯と同様の対処で良いと思います。前歯に発生して審美的に問題の場合、当院では当面歯は削らずに、表面をレジン材でコーティングしてカモフラージュするという方法をとっています。
矯正(初期)治療中の10歳の患者さん。上の前歯に範囲の広い形成不全あり。乳歯の時期のむし歯が重症だったそうです。
上の前歯2本をレジン材でコーティングしました。ほんの10~15分位でできる割には効果的。