いーなごや極楽日記

極楽(名古屋市名東区)に住みながら、当分悟りの開けそうにない一家の毎日を綴ります。
専門である病理学の啓蒙活動も。

トム・ソーヤーの冒険

2008年03月06日 | 極楽日記(読書、各種鑑賞)

 "Harry Potter"の2冊を読んだ後の通勤の友は、誰でも知っているアメリカ文学の祖、Mark Twainの有名な2作品をバンドルしたものになりました。これは珍しく新品で買ったもので、2冊分だから安いかと思ったのですが、よく考えてみれば死後100年近いMark Twainの著作権は切れているので、オンラインで読むなら無料でした。ただ、地下鉄ではネット使えませんからね。

 1作目の"Tom Sawyer"を読み始めるとすぐにわかりますが、"Harry Potter"と違ってこれは子供向けに書かれたものではないということです。豊富な語彙からして子供がストレスなく読むのは無理でしょう。イベントに次ぐイベントで映画を見ているような"Harry Potter"に比べると、南部の田舎町を舞台にしたストーリーは実にゆっくりしたテンポで進みます。ストーリーそのものは単純であり、その間に埋め尽くされた作者の饒舌、皮肉、人生哲学や言葉遊びを味わいながらゆっくりと読み進めるべき本なので、簡略化や映像化をすると味もアクも抜けてしまって単なる子供向きの冒険物語になってしまうのでしょうね。日本では長らく児童文学として理解されてきたのは、その辺に原因がありそうです。

 Mark Twainについては"Tom Sawyer", "Huckleberry Finn"の他に短編集の完訳本を読んだことはあるのですが、まだ小学校高学年から中学校にかけての頃だったので、前述のような(翻訳者も苦労したであろう)ストーリーそのものに関係のない言い回しは読み飛ばしていたように思います。二大代表作よりむしろ、「ハドリバーグの街を腐敗させた男(邦題)」などの短編の方が作者らしい権威への批判意識などがよく読み取れたと思います。今になってみれば、あの短編を書く人がストレートな児童文学など書くはずがなかったなと実感します。

 そんなこともあって、"Harry Potter"よりは読むのに時間が掛かりそうです。内容よりもむしろ困るのは字が小さいことで、2冊分を圧縮してあるので仕方ないのですが、揺れる電車の中では少し苦しいところです。
コメント
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