いーなごや極楽日記

極楽(名古屋市名東区)に住みながら、当分悟りの開けそうにない一家の毎日を綴ります。
専門である病理学の啓蒙活動も。

ニッサンGT-Rはインフィニティの布石か

2007年10月26日 | 自動車
 日産が東京モーターショーで正式発表したGT-Rがクルマ好きの間で話題になっています。480馬力、潜在的な最高速度は300km/h以上という量産市販車としてトップレベルの動力性能は日本のメーカーとして初めての試みであり、クルマ好きを唸らせるだけのものがあります。

 このポルシェ911ターボに匹敵する高性能車が半額の800万円、というのは相対的には大バーゲンであり、買える人はぜひ買って楽しんで欲しいと思います。環境と省エネだって?どうせ800万の2ドアクーペなんて数としては売れませんよ。それより見栄と安楽のために月に何千台のオーダーで売れるレクサスLSやドイツの高級車、それからもっと燃費の悪い大型RVの方がトータルではずっと問題でしょう。

 日産が復活のシンボルとしてこのGT-Rに掛ける意気込みは見事なもので、全国に特別なサービス拠点を指定し、高性能を維持できる体制まで整えてきたのは立派です。3年間は無料で性能維持をサポートするというこのサービスこそ、高価な代金にふさわしいものと思います。でも、これってGT-Rだけのためでしょうか?

 今までGT-Rはスカイラインの特別な高性能版、そして高価格版として称賛と羨望の眼差しを受けてきました。しかし今回は「ニッサンGT-R」でありスカイラインの名前がないのです。今度のGT-Rが日産全体の技術シンボルだということもあるでしょう。スカイラインは元々プリンス自動車から受け継いだ車種であり、日産本流の車種ではない、という差別感情はは大なり小なり社内にあったようですから、スカイラインの名前を外すことが必要だったのかも知れません。

 しかし、特殊な1車種のためにサービス網まで再構築するとか、サポート体制まで整えるというのはいかにも大袈裟です。思うに、このサービス網とサポート体制を発展させてインフィニティチャンネルを立ち上げようという目論見なのではないでしょうか。

 国内での販売台数が伸び悩む中、メーカー各社は利幅の大きい高級車販売チャンネルの構築を悲願としてきました。トヨタのレクサス、日産のインフィニティ、ホンダのアキュラはそれぞれ北米で成果を挙げてきました。この成功を日本でも、と最初にレクサス店を整備したのがトヨタです。

 レクサスは単にクルマを売るのではなく、高級な時間や空間を売るのだということで、都市の一等地に豪華な専用ショウルームが建設され、営業社員の身だしなみや立ち居振舞いまで留意されるという既存のディーラーとの違いが話題にもなりました。しかし肝心のクルマには特徴がなく、旗艦のLSが出るまでは販売に苦戦していたようです。例えば今までのアリストとあまり変わらないクルマが、レクサスGSとなると大幅に値段が高くなり、ハイブリッド以外はどこが違うのかわからない。雑誌ではドイツ車の方を誉めてあるけど、という感じです。

 これを見ていた日産としては、GT-Rの評判をインフィニティ立ち上げに生かさないはずがありません。恐らく、日本におけるインフィニティチャンネルは、レクサスとも、また北米のインフィニティとも違うアピールで消費者に迫るつもりなのでしょう。高級は高級でも、内装の高級ではなく高級な乗り味を。ゴルフのフォームをチェックするサービス(レクサス店にあるそうです)よりも、ドライビングフォームやアライメントをチェックするサービスを。

 こうしたレクサスとは別の切り口で販売チャンネルを立ち上げるなら、レクサスに満足していない消費者をかなり取り込めるように思います。一口に高級車と言っても、ベンツとキャディラックの方向がまるで違うように、レクサスとインフィニティで目指す所が違うのはむしろ当然なのです。そのインフィニティのシンボルとしてGT-Rはぴったりだと思いますが、どうでしょうか?

 これで(私の予想が正しければ、ですが)日産のインフィニティ戦略が少し見えてきた気がします。更に後出しになるホンダのアキュラは、どのような戦略で来るでしょうか?新生NS-Xが投入されると言われていますが、大いに楽しみです。願わくば、それまでに高級車を買えるような資産家になって、自分で確かめてみたいものですが。
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