いーなごや極楽日記

極楽(名古屋市名東区)に住みながら、当分悟りの開けそうにない一家の毎日を綴ります。
専門である病理学の啓蒙活動も。

医師資格の更新について

2007年10月01日 | 医療、健康

 5年に一度の専門医資格更新の書類が郵送されて来ました。一般の方は医師の資格が取った切りの更新なしだと理解しておられるでしょうが、実質的には既に更新制です。

 ほとんどの医師は自分の専門分野の学会に属しており、その学会が認める専門医資格を取得します。資格を取るためには(学会によって少しずつ違いますが)、学会の認定した病院での診療経験や学会の実施する試験に合格することが必要であり、また資格を取得してからも診療経験や学会での研修を積み重ねて行かないと更新できません。もし専門医資格を更新できないと、病院で責任のある地位にいることができません。従って、専門分野については医師資格は更新制です。

 これを知らずか無視してか、マスコミが「医師資格の更新制導入を」などと言っているのは、許認可権を各学会から取り上げて独占管理したい厚生労働省の誘導に乗ったものだと思いますが、実態を見ていませんね。もし厚生労働省が医師の資格更新を直轄事業として始めたとしても、複雑に専門化した全分野の診療実績や技能を判定することなどできませんから、現状の学会による更新を追認するだけでしょう。事務手続きとコストが増大するだけで、実質は今と変わらない、と予想します。

 問題は学会などに気軽に参加できない地方の多忙な医師の場合で、もし資格更新のための要件が過度な負担になるようなら、またも医師の地方から都会へのシフトが進むでしょう。新聞関係者は、「医師の資格更新など他人事だから、どうせなら厳しく」などと気軽に考える前に、政策の変化により何が起きるかぐらいは予想して記事を書いて欲しいものです。

 マスコミは先を見ていません。彼らがヒステリックな駐車違反撲滅キャンペーンで警察に余分な負担を掛け、結果として交通事故死を増やした過去や、排卵誘発剤の不適切な使用と適正使用をごっちゃにして産科の業務を増大させ、医療崩壊への道筋を付けた経緯を見ていると、(今や官公庁以上の保護産業である)大手マスコミの中にいると、周りがすっかり見えなくなってしまうのかも知れないと悲観を抱かざるを得ません。しかしながら、屋上屋を重ねる「医師免許更新制」が地方の医療事情をより悪化させるものであろうことは声を大きくして言っておきたいと思います。
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