政府がついに「ホワイトカラー・エグゼンプション」法案の提出を見送りました。国民に理解が得られておらず時期尚早ということですが当然です。
かねてより自民党の支持基盤である経団連などの経営者団体は賃金の大幅抑制を狙っており、先代の奥田会長は外国人単純労働者の雇用拡大にご執心でしたし、御手洗会長は日本人労働者の賃下げを目的として、この法案を支持してきたものと思われます。しかし一般国民からは「残業代ゼロ法案」と解釈されて反発が強く、身内の経営者からも反対意見が出るに至って、少なくとも今回は見送りとなったようです。
元々、1986年に制定された派遣業法も、経営側の強い要望で成立したものです。「アウトソーシング」などと名前はスマートですが、企業としては生産調整を労働者にしわ寄せしやすい制度であり、労働者は不安定な雇用にさらされるものです。しかもこの制度を悪用して、派遣労働者を「生産請負」という名目で低賃金の下に雇用し続けたのが御手洗さん率いるキャノンだったのですから、彼が一般労働者の立場など理解していないのは明らかです。
参院選で自民党が大勝すればまた課題になると見られる「ホワイトカラー・エグゼンプション」法ですが、もし制定されればどのような影響があるでしょうか?
同制度の導入理由としては、労働時間の枠を撤廃することで「多様な働き方が実現できる」とされています。この「多様」が曲者ですね。経営者から見れば、今より低賃金で長時間労働させることができる、という理由で法律改正を急ぐのでしょうから。
「連合」などの労働団体はなべて同法案に反対しており、「多様」という一語が労働者のための「多様」ではなく、専ら経営者のための「多様」であることを意味しています。労働者が苦しむだけの「残業代ゼロ法案」であるという指摘は当たっています。
確かに、キャノンのように技術開発が中心の企業では、この制度の恩恵を受けるエンジニアもいると思います。技術開発は「1日8時間」とか「1時間いくら」という時間単位での管理にそぐわない印象があるからです。個人の能力差も大きいでしょう。例えばソフトウェア開発では、クビにならない程度のプログラマと優秀なプログラマの間で数十倍以上の能力差があるとか聞いたことがあります。基礎研究などではもっと差が大きいでしょう。ただしこれを評価するのは至難だと思います。
経営者の方で引き止めたいほどのトップクラスの社員の場合、法律がどうなろうと待遇が悪くなることは考えられません。キャノンのトップエンジニアなら、世界中どこのハイテク企業でも欲しがりますから、さすがの御手洗さんも賃金を下げようなどとは思わないでしょう。労働者から見れば、このようなトップクラスの社員が法案の対象となるべきですが、そのような少数の社員のためにわざわざ法律を改正するのではないでしょう。
問題は同法案が、トップクラスでない圧倒的多数の労働者まで対象にしていることです。同法の対象となるのは、「管理職の少し手前」と言われており、具体的には年収や部下の有無などで線引きをすることになりそうです。しかし、経団連の案では「年収400万円以上」となっており、新入社員以外はほとんどの正社員が含まれる数字です。また部下についても、パートを部下と見なすのかどうかが議論されています。
労働者にも納得できる線引きができないまま法案が成立してしまうと、「年収400万円でパート5人を管理するファミレスの店長」「年収400万円で学生アルバイトを採用する権限のある売り場主任」などが対象に含まれてしまい、決して高収入と言えない一般の社員が残業代なしの長時間労働を強いられる羽目になります。
少なくない企業で「サービス残業」や「偽装請負」が指摘され続けているのを見ればわかるように、こうした大多数の労働者は経営者に比べると立場がずっと弱く、同法案の成立により健康面や家庭面の深刻な問題を抱えることになると懸念されます。
少なくとも経団連の主張通りでは、「多様な働き方を選択できる法律」ならぬ「国民総奴隷労働法」や「過労死推進法」「家庭崩壊法」「育児禁止法」になりかねません。これからも推移を見守りたいと思います。
かねてより自民党の支持基盤である経団連などの経営者団体は賃金の大幅抑制を狙っており、先代の奥田会長は外国人単純労働者の雇用拡大にご執心でしたし、御手洗会長は日本人労働者の賃下げを目的として、この法案を支持してきたものと思われます。しかし一般国民からは「残業代ゼロ法案」と解釈されて反発が強く、身内の経営者からも反対意見が出るに至って、少なくとも今回は見送りとなったようです。
元々、1986年に制定された派遣業法も、経営側の強い要望で成立したものです。「アウトソーシング」などと名前はスマートですが、企業としては生産調整を労働者にしわ寄せしやすい制度であり、労働者は不安定な雇用にさらされるものです。しかもこの制度を悪用して、派遣労働者を「生産請負」という名目で低賃金の下に雇用し続けたのが御手洗さん率いるキャノンだったのですから、彼が一般労働者の立場など理解していないのは明らかです。
参院選で自民党が大勝すればまた課題になると見られる「ホワイトカラー・エグゼンプション」法ですが、もし制定されればどのような影響があるでしょうか?
同制度の導入理由としては、労働時間の枠を撤廃することで「多様な働き方が実現できる」とされています。この「多様」が曲者ですね。経営者から見れば、今より低賃金で長時間労働させることができる、という理由で法律改正を急ぐのでしょうから。
「連合」などの労働団体はなべて同法案に反対しており、「多様」という一語が労働者のための「多様」ではなく、専ら経営者のための「多様」であることを意味しています。労働者が苦しむだけの「残業代ゼロ法案」であるという指摘は当たっています。
確かに、キャノンのように技術開発が中心の企業では、この制度の恩恵を受けるエンジニアもいると思います。技術開発は「1日8時間」とか「1時間いくら」という時間単位での管理にそぐわない印象があるからです。個人の能力差も大きいでしょう。例えばソフトウェア開発では、クビにならない程度のプログラマと優秀なプログラマの間で数十倍以上の能力差があるとか聞いたことがあります。基礎研究などではもっと差が大きいでしょう。ただしこれを評価するのは至難だと思います。
経営者の方で引き止めたいほどのトップクラスの社員の場合、法律がどうなろうと待遇が悪くなることは考えられません。キャノンのトップエンジニアなら、世界中どこのハイテク企業でも欲しがりますから、さすがの御手洗さんも賃金を下げようなどとは思わないでしょう。労働者から見れば、このようなトップクラスの社員が法案の対象となるべきですが、そのような少数の社員のためにわざわざ法律を改正するのではないでしょう。
問題は同法案が、トップクラスでない圧倒的多数の労働者まで対象にしていることです。同法の対象となるのは、「管理職の少し手前」と言われており、具体的には年収や部下の有無などで線引きをすることになりそうです。しかし、経団連の案では「年収400万円以上」となっており、新入社員以外はほとんどの正社員が含まれる数字です。また部下についても、パートを部下と見なすのかどうかが議論されています。
労働者にも納得できる線引きができないまま法案が成立してしまうと、「年収400万円でパート5人を管理するファミレスの店長」「年収400万円で学生アルバイトを採用する権限のある売り場主任」などが対象に含まれてしまい、決して高収入と言えない一般の社員が残業代なしの長時間労働を強いられる羽目になります。
少なくない企業で「サービス残業」や「偽装請負」が指摘され続けているのを見ればわかるように、こうした大多数の労働者は経営者に比べると立場がずっと弱く、同法案の成立により健康面や家庭面の深刻な問題を抱えることになると懸念されます。
少なくとも経団連の主張通りでは、「多様な働き方を選択できる法律」ならぬ「国民総奴隷労働法」や「過労死推進法」「家庭崩壊法」「育児禁止法」になりかねません。これからも推移を見守りたいと思います。