『レイチェル』 ダフネ・デュ・モーリア ☆☆☆
『レベッカ』のダフネ・デュ・モーリアが書いた、『レベッカ』と同タイプの小説ということで入手した。女名前一文字のタイトルも同じだが、原題は「私の従姉妹レイチェル」である。読み終えて、まあ予想通りというか、エンタメとしては悪くはないけれども『レベッカ』と比べると遥かに劣る。『レベッカ』にあった輝かしいマジックはここにはなく、まあまあよく出来た、ロマンスをからめたサスペンス小説という感じだ。
名家の後妻として嫁いだヒロインが、完璧な美貌と知性を持ちながらボート事故で溺死した前妻・レベッカの影に怯えるというストーリーだった『レベッカ』に対し、この『レイチェル』は、不審な病死を遂げた叔父の妻レイチェルと出会い、疑惑を持ちつつも惹かれていくフィリップの物語である(本書の主人公は名無しではない)。正直、物語の展開は予想がつくし、いくら若いとはいえフィリップの未熟さと甘さに苛々する。また『レベッカ』のように物語の展開に緻密なひねりがない。
いいところとしては、浪漫主義的かつ耽美的な自然描写と、ゆったりした中に一抹の不安感を漂わせる心理描写だろうか。この二点に関しては確かに『レベッカ』の作者の面影がある。それから、レイチェルのキャラクターはなかなか不思議かつ微妙で面白かった。いかにもファム・ファタル的ではなく、わりと普通のしっかりした女性に思え、読者にもなかなか彼女のキャラが掴めない。そういう意味で読んでいて退屈はしなかった。が、やはり主人公フィリップのキャラクターが凡庸で大雑把なのが致命的である。『レベッカ』を期待して読んではいけない。
『レベッカ』のダフネ・デュ・モーリアが書いた、『レベッカ』と同タイプの小説ということで入手した。女名前一文字のタイトルも同じだが、原題は「私の従姉妹レイチェル」である。読み終えて、まあ予想通りというか、エンタメとしては悪くはないけれども『レベッカ』と比べると遥かに劣る。『レベッカ』にあった輝かしいマジックはここにはなく、まあまあよく出来た、ロマンスをからめたサスペンス小説という感じだ。
名家の後妻として嫁いだヒロインが、完璧な美貌と知性を持ちながらボート事故で溺死した前妻・レベッカの影に怯えるというストーリーだった『レベッカ』に対し、この『レイチェル』は、不審な病死を遂げた叔父の妻レイチェルと出会い、疑惑を持ちつつも惹かれていくフィリップの物語である(本書の主人公は名無しではない)。正直、物語の展開は予想がつくし、いくら若いとはいえフィリップの未熟さと甘さに苛々する。また『レベッカ』のように物語の展開に緻密なひねりがない。
いいところとしては、浪漫主義的かつ耽美的な自然描写と、ゆったりした中に一抹の不安感を漂わせる心理描写だろうか。この二点に関しては確かに『レベッカ』の作者の面影がある。それから、レイチェルのキャラクターはなかなか不思議かつ微妙で面白かった。いかにもファム・ファタル的ではなく、わりと普通のしっかりした女性に思え、読者にもなかなか彼女のキャラが掴めない。そういう意味で読んでいて退屈はしなかった。が、やはり主人公フィリップのキャラクターが凡庸で大雑把なのが致命的である。『レベッカ』を期待して読んではいけない。
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