カームラサンの奥之院興廃記

好きな音楽のこと、惹かれる短歌のことなどを、気の向くままに綴っていきます。

5月のこと。

2020-05-31 21:31:15 | Weblog

すこし見えてきたような気がしたのでメモ。。

慶應4年1月17日の小栗忠順の駿河台の屋敷を訪なひし者の記録。(『小栗日記』)

17日 寅 天気能
(中略)
一、大鳥啓助(圭介)来ル、逢申候
一、古屋昨(佐久)左衛門・松濤権之丞来ル、於中奥逢申候
一、由井図書来ル、於奥逢申候
(後略)

・・・

松濤権之丞は、池田使節団の一員としてフランスから帰国した後、富士見御宝蔵番格・騎兵差図役下役、同砲兵差図役並勤方を経て、小十人格・軍艦役並となり、慶応3年(1867年)11月には古屋佐久左衛門とともに海軍伝習所通弁掛になっている。やがて勝海舟配下の軍事方の一人になるが、小栗忠順さんとは慶応4年1月以前にどこかで接点があったのだろうか。

1月17日の小栗さんのところへの訪問記録から推察するに、小栗さんとおなじ抗戦派(幕府を守るためには江戸を火の海にして焼くことも已む無し)の大鳥さんが小栗さんを訪ね会談したことを知った恭順派の権之丞がその日のうちにと友人の古屋さんと連れ立って小栗さんを宥め恭順の意義を説明しに行ったのかもしれぬ。。


・・・

慶応4年閏4月6日(1868年5月27日)、小栗忠順さんは群馬県の処刑場で落命。奇しくも、同日、松濤権之丞は恭順工作で訪れた姉ヶ崎の撒兵隊宿所で説得中にピストルで撃たれ同時に左右から斬り掛かられ落命。
小栗さんの墓所。

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昨日の。

2020-05-30 06:18:55 | Weblog
昨日のブルーインパルス飛行、医療従事者の方にもパイロットの方にも敬意を表したい思いは自分にもあるしわかるけれども、昨日の飛行にははなはだ違和感を覚えてしまった。率直に言えば、やはり、発案者の考えがさっぱり理解できない。いろんなところでたくさんの国民にお金が足りていない今、たくさんのお金や危険までかけて戦闘機を飛ばすことの意味って何ですか。「寄り添う」ことの意味がわかっていないのかもしれない。想像力が足りていないのかもしれない。根幹が何かずれているなあと悲しく思ってしまった。。。


忘れちゃえ赤紙神風草むす屍 池田澄子(句集『たましいの話』)

前ヘススメ前ヘススミテ還ラザル 池田澄子(句集『たましいの話』)
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王者的。

2020-05-29 15:34:38 | Weblog
短歌アンソロジーと短歌入門書でオススメを挙げるとすれば、やはり、講談社学術文庫のこの二冊になるのかなという気がする。入門書はじつはこれの他にもオススメがある。しかしアンソロジーときては『現代の短歌』にまさるものはなかなかないかも知れない。時代的な傷はないわけではないが、やはり今でも絶対的な短歌アンソロジー王者と思う。
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幽霊。

2020-05-29 07:58:12 | Weblog

中学の頃から北杜夫氏の小説『幽霊』が好きだった。それはそもそも、その魅力的な語り口の冒頭の一節にことのほか惹かれて好きになったのは明らかだが、どういうわけか、そのなかの、学校の図書館の書庫での独逸語教授と主人公との会話やりとりの一節が妙に印象深く記憶の中にあるのが自分でも不思議だ。

「ヨゼフはありませんね。誰か借り出していってるのでしょう」と教授がいった。

(そして、教授は去る。書庫にひとり残った主人公はあらためて、その二、三カ月前にたまたまなにかの拍子に出席した独逸語研究会のプリントにあった文章冒頭の一行を思い浮かべるのだ。)

過去という泉は深い……

それは、あのリューベックの作家が十六年間にわたって紡ぎあげた巨大な叙事詩、ビラミッドにも似た作品の序曲、『地獄めぐり』の最初の一行であった。(後略)

此処で出てくる「リューベックの作家」といい、「ヨゼフ」といい、いったい誰のなんという作品のことを話題にしているのか、多分最初に『幽霊』を読んだ中学生の私にはわからなかったにちがいない。当時は北さんの文体の醸す雰囲気だけを味わって読んでいたからそれでよかった。後になってようやく、リューベックの作家が文豪トーマス・マンのことで、ヨゼフが『ヨセフとその兄弟』のことと理解するようになった。読書の進化(深化)とはそんなものかもしれない。

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国語。

2020-05-27 13:01:15 | Weblog

たまたま見たTwitter記事に、

フォロワーの多い垢やバズを経験した垢ならば絶対に知っている””文章を読めない者に限ってわざわざこちらに聴こえるようにリプや引用から喧嘩を売って来る現象””ですが、尾木ママの「国語が苦手だといじめっ子になりやすい」で既に仕組みは解明されていると個人的には思っていますよ……

というものがあった。〈はじめに言葉ありき〉ではないけれども、ひとりひとりの国語力が磨かれることからさまざまな優しさにむすびついて世の中を温かく明るくするのではないかと感じる。想像力も言葉なくしては豊かになり得ない。国語を疎かにしたらいくら英語がしゃべれるようになっても意味がない。大きな声のひとたちがしばしば言いがちな〈英語教育がいちばん大事〉は英語教育onlyとすれば実は大きな勘違いであり誤りであり、やはり、教育でいちばん大事に考えられるべきは〈国語教育〉だと思う。悲しいかな、〈国語教育〉を軽視する国に明るい未来は来ないにちがいない。そういう意味で、いまのこの国の教育の進めかた、方向性に危惧を覚えてしまう。国語の軽視はとにかく絶対にしてはならない。

 

 

洟垂るる机辺に鼻紙高く積む 夕光(ゆふかげ)の風に招待状の気配 

山中に道迷ひたる吾(あ)は精霊のはるけき灯り見たる心地す 

霧深き山中にありて一歩づつ道は下つてゆくものと識(し)る 

ガス灯は城壁に長き影を曳(ひ)く 検問所係官は欠伸(あくび)を三回 

検問所を抜けて暗き石畳踏む 宿屋は三丁先の右側 

扉(と)をやさしく敲(たた)けば宿の灯り点(つ)く 扉裏(とうら)の鍵の外さるる音 

階段の上なる部屋に案内(あない)されぬ 音忍ばせて息を殺して 

まだ暗き朝の石畳来て宿の扉(と)を誰か敲く音 主人の話し声 

すつかり明けて階下(した)に行けば宿主人は番台にしづかに紙を見てをり 

主人の手元の紙には《国境封鎖》とあり 朝早き使者より来たる知らせと
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こころ愉しまず。

2020-05-26 06:03:59 | Weblog

オムニバス風にたくさんの夢を見ていた気がする。寝覚め間際に見た最後の夢は、どういうわけかラジオ番組ディレクターとしてメイン・パーソナリティのタレント氏に同行し夜の何らかのいわくつきの山に登るというとんでもない番組企画での山行。場所が場所なだけにということか、長身で健脚なタレント氏の歩行スピードがとにかく速くて、置いていかれまいとこちらは始終小走り。タレント氏も自分もこの番組企画にはさっぱり納得できていないが、それでも〈仕事〉ゆえ、という状況。こころ愉しまず。そういう夢だった。

そういえば。 昨日の朝、いつものように触れた仕事場の冷たいはずの井戸水がどういうわけか温泉のように生温かかったことが今もどうしても気にかかる。なにもなければよいのだけれども。 

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水ひひき。

2020-05-25 01:20:14 | Weblog

橋の上ゆ胡瓜なくれは(投ぐれば)水ひひき(響き)すなはち見ゆる禿(かむろ)の頭  芥川龍之介


橋の上から胡瓜を川面に投げたら水音がして河童の禿の頭が見えた、という一首。〈水ひひき〉には、どことなく松尾芭蕉の有名な〈古池や蛙とびこむ水の音〉にも通じる、ポチャンと乾いた〈水の音〉がしずもりのなかに立って響いている感じがある。芥川龍之介辞世の一首。

 

そして。

 

永井陽子さんの有名な短歌作品〈あはれしづかな東洋の春ガリレオの望遠鏡にはなびらながれ〉のことも。ガリレオ・ガリレイは天体観測に望遠鏡を導入し、天動説が世の絶対的な通説のなかで地動説へ言及した人として有名。ガリレオの遺品の望遠鏡を手に世の中を覗いてみたら、本当のあれこれがまざまざと見えてくるかもしれぬ。

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犬。

2020-05-24 03:33:18 | Weblog


 〈町〉へのただ一つの入り口の検問所脇の側溝に秋のある夕方、薄汚れた犬が死んでいたことがあった。その事実は、大きめのぶかぶかな毛糸靴下を履いて就寝しようとしていたメゲネル検問所長のもとにすぐに伝えられ、裁判所へも速やかに報告されたが、酒精で脂ぎった不夜城のごときお歴々の集う〈町〉の裁判所は案の定その犬が〈町〉に入ろうとしていたのか〈町〉から出ようとしていたのかを朝までおいてはおかれぬ大問題とし、検問所長に事実を直ちに判事の前で詳細に説明せよと出頭命令を下したので、犬の第一発見者たる検問所三等係官オルサブローはその夜のうちに寝室兼書斎代わりの家の物置から検問所に呼び出され、検問所事務棟の木製扉脇の壁に自転車を立て掛けた。検問所事務棟は各壁に其々の窓の大きく取られた石造りの三階建てで、一階の当直室の灯りと、三階の所長室の灯りが、煌々と外に洩れていた。
 制服のオルサブローは幾分俯きながら木製扉の前に立ち、「こんばんは。当直お疲れさまです。オルサブローです。」と軽く三回ほどノックをした。すると、しずかに扉が開いて、検問官の制服に身を包んだやや小柄な少女が顔を出した。それと一緒に外へハーブティーのよい香りがこぼれてきた。「オルサブローさん、たいへんなことになって。とにかく中へお入りくださいな。」彼女は、その夜の深夜当直の三等係官アスフィータだった。オルサブローは、アスフィータに軽く微笑みながら「アスフィータさん、君にもいろいろと心配をかけて済まない。それで、所長はもう部屋に来られているのですか?」と尋ねた。「はい、つい先程部屋に入られました。所長ったら、『〈町〉の裁判所の能天気な奴らと来たらまったく』とぶつぶつこぼしていましたよ。」アスフィータが所長の口真似をすると、オルサブローは思わず吹き出し、アスフィータもくすりと笑った。「ありがとう。では、所長のところへ行ってきます。」オルサブローは、当直室奥の階段を急いで駆け上がって行った。
 その翌朝のことである。〈町〉を取り囲むように広がる森の中にこじんまりと佇む修道院では、たいへん豪勢で荘重なオルガンがひとしきり鳴り響いて朝の礼拝が行われたところだった。オルガンが止むと、小柄で初老の修道士がひとり聖堂の扉を開けて出て来た。彼は明るんだ辺りを見渡して優しく微笑んだ。聖堂の前の木々にはたくさんの小鳥たちが思い思いに枝へ留まって歌をうたっており、そばの薮には狸や兎などの獣たちが息を潜めて音楽に身を委ねている気配があった。彼はしづかに「そうだな、昨日のシンフォニーの続きを書こう。」とひとりごちて、ゆっくりと聖堂の隣の質素な小屋へ入っていった。窓際に机と椅子があり、やや広めの机の上には数本のペンと整然と書き込まれた譜面と、隅にまっさらな五線紙の束が載っていた。修道士は、フンフン、フンフンと軽く鼻唄を洩らしつつ 、椅子にゆっくりと腰を下ろし、机のペンを取り上げた。
 その頃、オルサブローは森の中を時折後ろを振り返りながら息を切らせて駆けていた。先刻まだ辺りの薄暗い中、検問所事務棟を出て、自転車を押しながら家路についたが、〈町〉への入り口の門に差し掛かったところで、〈町〉の方から出てきた〈黒い影〉が突然前に立ち塞がった。オルサブローはえもいわれぬ寒さを覚えて咄嗟に傍らの自転車に跨がり、〈町〉とも検問所事務棟とも反対の森の方へとペダルをぐんぐん漕ぎ出した。〈黒い影〉はひたひたと追ってきた。オルサブローは途中で自転車を乗り捨て、森の中を駆けて逃げた。〈黒い影〉も馴れた足取りで森のなかに入ってきた。複雑に絡み合った大きな木の根はオルサブローの足元に縦横無尽に伸びてともすると彼を躓かせその場に押し留めようとしたが、その度に彼は腕を振って体勢を立て直し根を飛び越えていった。幸い〈黒い影〉との差はそれほど詰まってはこないようだった。そうしながら彼の胸のなかでは、こうして逃げている状況がやはり今一つよくわからぬままではあった。薄暗い森のなかを駆けながらオルサブローは後ろをまた振り返り、根を飛び越えて前方に視線を戻した。木々の間の遥か先の方が明るんでいるのが見えた。
 その頃、アスフィータは、「今日は能天気ども相手に疲れたよ。いつもお疲れさん。ありがとう。君も気をつけて帰るんだぞ。」と三階から下りてきたメゲネル所長を見送り、所長室のハーブティーのカップを片付けに三階に上がった。所長は、オルサブローの話を聞いてから裁判所へ出掛け、また、検問所へ戻ってなにやら書類をずっと作っていた。アスフィータは、灯りのついたままの所長室に入ると、整然と片付けられた机上を眺めて、カップをお盆に載せ、ドアに戻って軽く一礼をして、灯りを消し部屋を出た。階段をしずかに降りて一階に戻り、アスフィータは、窓の外が白々と明るみ出しているのを見て、ふううと小さく息を吐(つ)いた。
 森のなかでは、オルサブローは、先に見える明るみを目指して駆けていた。明るみはすぐそこだった。「よし」と歯を食い縛り、ぽんとからだを明るみの方に投げ出すと、それまでずっとあった後ろの〈黒い影〉の気配がすううと消えるのを感じた。オルサブローは倒れたまま何度も激しく息を吐いた。そこは、森の修道院の聖堂の前だった。聖堂の隣の小屋の扉が小さく開いて、老修道士が顔を出した。オルサブローはよろよろと立ち上がった。「おやおや、何かに追われてきたのじゃな。」と修道士はオルサブローに語り掛けた。そして、素早く辺りを見回して耳を澄ませ、「取り敢えず君を追ってきたものたちはいなくなったようじゃ。何もないが、まずはこちらの小屋で少し休んでいかれたらどうかな。じつはいま天の神と対話しながらひっそりとシンフォニーを書いていてね。本当にここには自慢じゃないが何もないんだがね。多少、君の話し相手ぐらいはできるだろう。」と小屋の扉を大きく開いて、オルサブローに優しく微笑みかけながら手招いた。オルサブローは、息を吐きながら「修道士さま、突然に申し訳ありません。ご親切にありがとうございます。」と、修道士の方へ歩みを進め、小屋に足を踏み入れた。修道士はポットからカップにハーブティーを淹れ、オルサブローに勧めた。

〈続く〉

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吉田健一先生の。

2020-05-22 18:35:17 | Weblog


吉田健一先生の評論を読みながら、頭の奥でロマンチックなピアノ協奏曲が鳴り始めた。吉田健一先生の文章には読み手の心にふわっと寄り添う独特の優しさとウイットがある。こうした世情だから尚更それが心に染みるのかもしれない。

 

それにしても、〈彼ら〉はどうして次から次へと国民ひとりひとりの普通の生活や未来を脅かし大いに悪影響を与え問題となる法案を出してくるのだろう。#スーパーシティ法案に抗議します

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バロック風。

2020-05-21 07:39:05 | Weblog
どんよりして寒い天候のせいか、今朝は目が覚めると、胸の奥で寂しげなバロック風序曲が鳴ったので、取り敢えずメモ。
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