何十年も経ったけれども、小学生の頃、家でドリル問題集を開いた瞬間に唐突に降りて来て胸の奥で流れ出したヴァイオリンコンチェルトのことは、不思議と今でもその音楽の響きやメロディをありありと覚えている。出だしはハイドンの交響曲第100番『軍隊』ト長調の第2楽章アレグレット(2/2拍子)の冒頭二小節と一緒で、その後の展開が異なる音楽だった。じつはその小学生当時、ハイドンの『軍隊』シンフォニーを知らず、後日たまたま『軍隊』シンフォニーを聞いて〈あのヴァイオリンコンチェルトとそっくりだ〉とびっくりした。しばらく忘れていたのだけれども、最近、そのヴァイオリンコンチェルトのことがしきりに思い出される。いまでも不思議でならない。
(譜例比較)ハイドン『軍隊』第2楽章とヴァイオリンコンチェルト。