歌誌『塔』八月号より。
何事もなかったように春は来て氷見ののどぐろ胃の腑に落とす/関野裕之
週末のたびに夏日となる五月 網戸のなき避難所のかなしも/西村玲美
一月一日の能登半島地震では富山県氷見市辺りも大分揺れたらしい。被災地復興のために政治家が粉骨砕身努力しない国になり果てて、裏金みそぎ、統一教会みそぎのための総裁選での候補者パフォーマンスとしての被災地巡りをこれ見よがしにする政治家たちを見せられて、なんという輩たちをお偉い為政者に選んでいるんだろう、と自らの愚かさを呪いたくなり、せめて旨い氷見ののどぐろを肴にやけ酒一杯をぐびとあおりたしなどと思ってしまう不良国民である。この国はいつになったらまともになれるのだろう。いや、まともな国に私たちがしていかなければならないのかもしれない。あらためてそう思う。関野作品からあらぬ方向に勝手に思弁を進めてしまったが、関野作品が鋭く着眼されたように〈何事もなかったように〉では済まされない問題が山積していることはたしかであろう。西村作品は、能登半島地震の被災県に暮らされている当事者視線から詠まれたもの。状況の逼迫切実さがひしひしと伝わってくるような一首。
何事もなかったように春は来て氷見ののどぐろ胃の腑に落とす/関野裕之
週末のたびに夏日となる五月 網戸のなき避難所のかなしも/西村玲美
一月一日の能登半島地震では富山県氷見市辺りも大分揺れたらしい。被災地復興のために政治家が粉骨砕身努力しない国になり果てて、裏金みそぎ、統一教会みそぎのための総裁選での候補者パフォーマンスとしての被災地巡りをこれ見よがしにする政治家たちを見せられて、なんという輩たちをお偉い為政者に選んでいるんだろう、と自らの愚かさを呪いたくなり、せめて旨い氷見ののどぐろを肴にやけ酒一杯をぐびとあおりたしなどと思ってしまう不良国民である。この国はいつになったらまともになれるのだろう。いや、まともな国に私たちがしていかなければならないのかもしれない。あらためてそう思う。関野作品からあらぬ方向に勝手に思弁を進めてしまったが、関野作品が鋭く着眼されたように〈何事もなかったように〉では済まされない問題が山積していることはたしかであろう。西村作品は、能登半島地震の被災県に暮らされている当事者視線から詠まれたもの。状況の逼迫切実さがひしひしと伝わってくるような一首。