カームラサンの奥之院興廃記

好きな音楽のこと、惹かれる短歌のことなどを、気の向くままに綴っていきます。

関野さん、西村さんの一首。

2024-08-31 07:53:20 | Weblog
歌誌『塔』八月号より。

何事もなかったように春は来て氷見ののどぐろ胃の腑に落とす/関野裕之

週末のたびに夏日となる五月 網戸のなき避難所のかなしも/西村玲美

一月一日の能登半島地震では富山県氷見市辺りも大分揺れたらしい。被災地復興のために政治家が粉骨砕身努力しない国になり果てて、裏金みそぎ、統一教会みそぎのための総裁選での候補者パフォーマンスとしての被災地巡りをこれ見よがしにする政治家たちを見せられて、なんという輩たちをお偉い為政者に選んでいるんだろう、と自らの愚かさを呪いたくなり、せめて旨い氷見ののどぐろを肴にやけ酒一杯をぐびとあおりたしなどと思ってしまう不良国民である。この国はいつになったらまともになれるのだろう。いや、まともな国に私たちがしていかなければならないのかもしれない。あらためてそう思う。関野作品からあらぬ方向に勝手に思弁を進めてしまったが、関野作品が鋭く着眼されたように〈何事もなかったように〉では済まされない問題が山積していることはたしかであろう。西村作品は、能登半島地震の被災県に暮らされている当事者視線から詠まれたもの。状況の逼迫切実さがひしひしと伝わってくるような一首。
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片山先生。

2024-08-31 07:38:07 | Weblog
今晩7:25からNHKFM『クラシックの迷宮』の司会片山先生が、交響曲のないブルックナー生誕200年祭を司式なさるとのこと。すごく面白そうで楽しみ。


これから仕事。
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梶原さん、岡部さんの一首。

2024-08-30 23:59:42 | Weblog
歌誌『塔』八月号より。

ガードレール跳び越えてゆく遁走の馬にひととき村はかがやく/梶原さい子

普段の村は、作中主体からすると、退屈な時間が流れて静まり返ってひっそりとしていたのかもしれない。そこへ唐突に馬が遁走する事件発生。途端に止まっていた村の時間が一気に動き出し、もろもろの景物が俄然輝きを放ち始めた。自転車の駐在さんとか、村の青年団とか、さまざまな人達の物語が想像されて面白い。また、結句〈村はかがやく〉の語り口からは何となく、前登志夫の有名な一首〈夕闇にまぎれて村に近づけば盗賊のごとくわれは華やぐ〉の結句〈われは華やぐ〉を思い出した。村の佇まいの描出が巧い。

運命の楽音のなかそのひとはこなた窺う猛禽の眼に/岡部史

作曲家である作中主体の胸奥に、運命の楽音が降りて来ている場面を想像した。運命の楽音にまつわる作品を書き残した作曲家には、非常に有名なところではベートーヴェン、チャイコフスキー、マーラー、ショスタコーヴィチなどがいる。〈こなた〉には未知未聴の楽曲の全貌があって、その全貌を聴き取り書き留めるために、作曲家は体を絶妙に脱力リラックスしつつ、一方で全神経を研ぎ澄まして胸奥に耳を傾け続ける。結句〈猛禽の眼に〉がよく利いている。オーケストラの映像が具体的に見えているわけではないが、すべての楽器のパートの旋律の姿がくっきりはっきり聴き分けられ知覚されている。そんな場面かもしれない。
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空統領。

2024-08-30 12:05:54 | Weblog

ここ数日なんだか体調がよくなかった。椅子に座って作業をしていたが、外の台風雨が急にざあっと降り出して、いつの間にか意識を失っていた。目を閉じていることは自分でもわかった。とつぜん額に新たな眼が開かれて身体が強烈な光に引っ張られるように移動してゆくのがわかった。そして、〈あの雲の上の青いテント群は、空統領(そらとうりょう)の宮殿です。〉という声がしてあらためて目を開けると、そこは眩い光の世界だった。

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漸く。

2024-08-28 08:31:56 | Weblog
昨日は、朝方近くに漸く懸案の原稿が書き上がり、ご担当の方へ送信して、そのまま仕事へ。今月末まで有効の映画鑑賞大幅割引チケットがあって無駄にしたくなく、仕事終わりに絶対に映画『箱男』を見に行こうと昼間思うも、結局、原稿書きで二日間よく眠れていなかったため、体調問題から断念。
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千名さん、谷口さんの一首。

2024-08-26 06:45:58 | Weblog
歌誌『塔』八月号より。

てのひらをぢつと見つめて感慨もないので夕飯までに帰らう/千名民時
 石川啄木の有名な一首〈はたらけど/はたらけど猶(なほ)わが生活(くらし)楽にならざり/ぢつと手を見る〉を踏まえた作品ながら、〈感慨もないので夕飯までに帰らう〉という展開はまさしく千名ワールド。この捻り具合が読み手には堪らなく魅力的。

草庭にひつそりと立つ一本の耳の良い木を誰も知らない/谷口純子
 河野裕子先生の有名な一首〈捨てばちになりてしまへず 眸のしづかな耳のよい木がわが庭にあり〉を踏まえた一首。塔誌の校正をしてくださる皆様が永田先生のお宅に集まられたときのエピソードかもしれない。作中主体は、庭にひっそりと立っているあの木がそうだ、と知っているも、話題を振ってみたら誰も知らないことに愕然としてしまったということかもしれない。河野裕子先生がご逝去されてから十四年の歳月が経ったことを、作中主体はあらためてひっそりと寂しい思いとともに噛み締めているのかもしれない。
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とにかく。

2024-08-26 06:35:59 | Weblog
昨日は、仕事の後、尻まくって懸案の原稿書きを進めた。朝近くまでやって、結局、残り半分ほどがまだ書けていないので、今晩も続きをやるつもり。とにかく締切までにきちんとせねばならぬ。

今日もこれから仕事。
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真島の生理学。

2024-08-25 06:49:06 | Weblog

今朝、英語学や応用言語学が専門の兄から来たメールに 、兄が若い頃、当時の勤務校の同僚先生から勧められ、四半世紀に亘って読み続けているという一書『真島の生理学』のことが書かれていた。〈ノートを取りながら読み進めますが、一度に数行しか進まない時がほとんどで、未だに読破はできていませんが、四半世紀をとっくに過ぎても私の手元にあります。〉と兄は書いていて、私はその真島先生のこともそのご著書のこともまったく知らなかったので、周章てて調べてみた。


記事メモ:『真島生理学』のこと。
https://www.eiken.co.jp/modern_media/backnumber/miscellaneous/1526/


今日もこれから仕事。

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150歳。

2024-08-24 05:52:25 | Weblog
昨日は、瀬戸内の島に眠っている父方曾祖母150歳の誕生日だった。母親の方の実家が代々医者の家だったことから看護婦助産婦の勉強をして資格を取って、若い頃は尼崎紡績の医務室に婦長として働き、晩年は島で助産婦をしていたらしい。

今日もこれから仕事。
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年老いた山崎長徳が。

2024-08-22 19:53:57 | Weblog
年老いた山崎長徳が、青山長正に嫁いだ娘の産んだ三番目の男児長鏡を、外孫ながら山崎家へ養子として迎え、自分の跡継ぎにしようと考え出したのは、嫡男山崎阿波長郷が貞姫(理松院。宇喜多秀家と加賀藩初代藩主・ 前田利家の娘・豪姫との間に生まれた姫)を嫁に迎え、間もなく狗丸という跡継ぎ男児にも恵まれて、長徳隠居後の山崎家もいよいよ隆盛安泰かと思われた矢先、長郷、狗丸が相次いで病没し、二人の葬儀の際に菩提寺住職が長徳にひそと耳打ちをしたことにあった。〈まことに申し上げにくいことでございますが山崎のお家はいま大層呪われているようでございます。大聖寺城主山口玄蕃父子を大聖寺城攻めの際にお討ちになったとき、山口玄蕃父子が山崎家子々孫々を未来永劫栄えさすまじという誓いを遺されたようでございます。このままではお家は先細り衰退するばかりでございましょう。〉〈そのような戯言を言うでないぞ。ではどうしたらよいのじゃ。〉〈山崎でないお家から長徳さまがご養子をお迎えになることが必要かもしれませぬ。〉
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