昨日、ジュンク堂に出掛けた折りに偶々思いがけず出会って心をズバンズバン撃ち抜かれた本がケン・リュウ氏の『紙の動物園』(早川書房)。こういう柔軟で奥深くて滞空時間の長い作風を実は〈遥かなる高みの理想〉と考えて昔から密かに憧れて自分なりにもがいて来ましたが、ケン・リュウ氏がいとも易々とそれを実現していることに驚愕ならびに感嘆。凄い作家が出て来たものです。
休日。高田馬場のタイ料理屋でランチを食べて、池袋のジュンク堂へ久し振りに。3階の俳句・短歌コーナーに上がってご担当のTさんに「いつもお世話になってます」とご挨拶して軽く雑談、あとは地下1階売場から9階売場まで興味の向くまま脚の赴くまま徘徊。店内にはいつもきれいなクラシック音楽。今日は、偶々ある弦楽合奏曲に耳が反応。あれ、このゆったりした美しい曲、よく知っているけれどもタイトルなんだったっけ?と無性に知りたく思うも、〈たしか、ドヴォルジャークの弦楽セレナーデだったっけ?〉と楽譜コーナーに出掛けて件のセレナーデのスコア譜面見るとまったくちがう。そのほかいくつかのスコアを開くも該当せず、あれは何の曲だろうとの思いますます強まり、とうとうジュンク堂を出て、近所のYAMAHAへ。ちょうどお手透きのようだった音楽にお詳しい店員さんを前に1階店頭のピアノを軽く弾かせてもらって〈この曲のタイトルを知りたくて〉とお訊ねするも、〈たしかに、よく耳にすることのある有名な曲ですけど、なんというタイトルだかいますぐぱっと出てきません。すみません。たしかに、ドヴォルジャークっぽいですね。あとは、2階で譜面を見て探して頂くしか。。〉とのこと。2階楽譜売場に上がり、ドヴォルジャークのそれらしい譜面をぱらぱら立ち読み。地道に見ていくうちに発見。ドヴォルジャーク作曲〈ロマンティック小品集 作品75〉第1曲。うれしくなりました。喉の小骨がやっと取れた心境で、思わず小さく〈よっしゃ〉と呟いてしまいました。
今日の空。
今朝は、しごとに出掛ける前、モーツァルトのAve verum corpusの美しい音楽に耳澄ませつつ、横尾さん磯崎さん保坂さんの三名の対談本『アトリエ会議』をぱらぱら開いた。ただ話されているだけでなくて、ことばの一つ一つについて考えさせるすこぶる良本だった。
最近、自分を心底本当に愛せて初めて周りや国や世界のことも愛せるようになるのかもしれない、ということをしばしば思う。国の問題はひとりひとりの問題。作品をこんごいかに作っていくかにも大いに関わってくる大事な問題。
メモ。。
慶應4年1月17日の小栗忠順の駿河台の屋敷を訪なひし者の記録。(『小栗日記』)
17日 寅 天気能
(中略)
一、大鳥啓助(圭介)来ル、逢申候
一、古屋昨(佐久)左衛門・松濤権之丞来ル、於中奥逢申候
一、由井図書来ル、於奥逢申候
(後略)
画像は、駿河台の小栗屋敷のあった辺り。
日差しは夏に向かっているのだけれども、ここのところ蔓延している〈空気〉は痛みを伴うほど冷え冷えとしてことばも心も寒くて仕方がない。
今朝、詩人草野心平氏の作品『空間』のことを考えた。
☆☆☆☆
〈空間〉 草野心平
中原よ。
地球は冬で寒くて暗い。
ぢや。
さやうなら。
☆☆☆☆
寒くて暗い〈冬〉。今がそうなのかもしれないということ。
彼岸過ぐも涼しくあれば風船は夕べの火星のとなりに揺れて
火星から引つ越しセンタートラック到くその朝犬は欠伸してをり
トラックは〈国会議事堂〉脇過ぎるかつて官庁街だつたところも
火星からの〈橋〉が架かりてお台場に〈大渋滞〉できしは一昨年
こんなにも〈ひと〉は居なくなりてしまひぬ 議事堂の〈議員〉は居眠りばかり
今朝。昨日の強行採決ふくめて世の中の進みかたが本当におかしい。。〈理解しろ、理解してくれ、なぜわかってくれないのか〉といくら強弁したところで、元々わからないひとたちにはまったくわかってはもらえない。相手にこちらの思いがまったく伝わらない。。〈強行採決〉があたりまえ、という世の中が本当に恐ろしくてかなしい。
嘶ける〈軍馬〉のための夕映えを指先にあつめぬ かなしみとして