そうして先生のもとへお持ちした譜面のなかで、先生が〈このピアノ曲はマーラーだね。〉と仰有ったものがあった。実はその頃、まだきちんとマーラーを聴いたことがなかったので、先生の言わんとされるところがさっぱり理解できなかった。いま思い返せば、交響曲第1番『巨人』第一楽章の有名な鳥の鳴き声の描写にたしかにそっくりな部分があったかもしれない。また先生は、多分に激励を込めてしばしば〈君の書く譜面はアカデミックでないんだけれど、不思議と面白いね。〉と仰有ってくださった。これは、私にとって大きな励ましとなった。(続く)
仕事から戻っていったん休んだ。夜中に目を覚まして徐ろに起き出し、ベートーヴェン第九演奏会とマーラー第八演奏会のラジオ放送録音を繰り返し再生して流しながら年末仕事片付けに取り掛かる。朝になったらまた仕事。
夢喰らふ貘の隣りにかなしみをむしやむしや喰らひやがる妖し その名を知らず
2024年1/18(木)国際文学館特別イベント:そうやって、私たちは生き永らえたのです ~ウクライナの避難者の声から言葉 の「今」を考える国際フォーラム
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戦争がもたらす破壊への脅威は、私たちが日々使っている言葉の意味を次第に変容させます。戦火を逃れる途中に人々が発した言葉は、その現実をリアルに表します。
このフォーラムでは、新刊証言集『戦争語彙集』を通じて紛争と「平和」の現在地を見つめ直します。朗読、音楽、対話、そして世代と地域を超えた考察からニュースの報道とは異なる戦争と言葉の深い結びつきを感じ、考え、次代を担う若者たちを含む皆と分かち合いたいと思います。
【日時】2024年1月18日(木)15:40~18:40(14:40開場)
【場所】早稲田大学国際会議場 井深大記念ホール
【使用言語】日本語、英語(同時通訳あり)
【料金】無料
【申し込み方法】事前予約制(定員になり次第、受け付けを終了)
▼申し込みフォームはこちら
https://shorturl.asia/tHCwy
▼ウェブページはこちら
https://www.waseda.jp/culture/wihl/other/5770
◇構成・出演◇
【第1部】(16:05-)著者、俳優、学生による朗読
朗読:オスタップ スリヴィンスキー(詩人、「戦争語彙集」著者)/紺野美沙子(俳優)/早稲田大学学生
演奏:溝口肇(チェリスト、作曲家)
モデレーター:ロバート キャンベル(早稲田大学特命教授、日本文学研究者)
【第2部】(17:00-)学生の対話
ウクライナほか留学生を含む早稲田大学学生
【第3部】(17:35-)著者との座談会
オスタップ スリヴィンスキー/小森宏美(早稲田大学教育・総合科学学術院教授〔ロシア・東欧近現代史〕)/堀江敏幸(早稲田大学文学学術院教授、作家)/ロバート キャンベル
主催:早稲田大学国際文学館、独立行政法人国際交流基金
協力:岩波書店
<お問い合わせ先>
早稲田大学国際文学館/Email:wihl-koubo@list.waseda.jp
時折思い出すこと。前夜徹夜されてお疲れで休まれていたらしいその日の河野裕子先生は、僕がその昼間過ぎにアポ無しでご自宅をお訪ねすると、〈あなたが、あの〉と玄関外に出てきてくださって、1時間ぐらい立ち話でいろいろお話ししてくださった。その中で、僕が〈先生、僕は先生の御歌集『ひるがほ』が大好きで何遍も読ませて頂いているんですが〉とリュックのポケットから『ひるがほ』の文庫本を取り出そうとすると、先生は苦笑いされて、〈そんなものは読まんでよろし〉と押し留めた。〈創作というからには人真似でないものを作らなかったら作る意味がありません。他人から貶されようが酷評されようが嘲笑されようが自分の個性をしっかり把握して信じて、自分なりに育てて伸ばしていくことが大事。他人の作品を後生大事に崇めていたら本当の創作なんぞできません。あなたは他人の作品なぞ読まんでよろし。〉と仰有ったのだった。
『地球讃歌』
わたくしは足滑らせて墜ちまして、霞む眼(まなこ)で地球見てゐる
地球からごつそりゐなくなる日まで米飯へフリカケただ積もりゆく
自転車は草地に引つくり返つたまま冥王星へ車輪回り続ける
隣りに座る荷物から波音洩れてくる 東急ハンズ製紙袋
谷啓氏の《ガチヨーン》無限リピートするプールサイドに石焼き芋のうた
わたくしのうへから春が落ちて来る。夏も。間もなく極月終はる。
甘辛き舌先の味確かめつつ地下鉄改札への階段くだりぬ
ウォール街にただの紙切れ降る夜は草地の上に鞄を捨てる
午後2時00分〜午後4時00分
N響「第9」演奏会
ベートーヴェン:交響曲第九番「合唱付き」
午後4時00分〜午後5時50分
N響演奏会 N響第2000回定期公演
マーラー:交響曲第八番「千人の交響曲」
そんな中、高校2年になると学校の芸術選択の音楽の授業では、先生が大学時代に作曲された高田敏子さんの詩によるピアノ伴奏歌曲の演奏録音を鑑賞したり、先生ご推奨の現代音楽レコードを鑑賞したり、と非常に興味深く楽しいものになってきた。その流れで、〈先生提示のコード進行に合わせてその場でメロディを作曲しなさい〉という課題が出て、友人たちが呻吟苦戦するなか、日頃から譜面を書く自己練習を積んでいた私はスラスラといとも容易にメロディを書くことが出来た。で、それをきっかけとして、お忙しい先生のもとへ家で書いた様々なピアノ曲やオーケストラ曲スケッチやらの二段譜や三段譜の譜面を持参して時々見ていただけるようになった。私が自己流で試行錯誤して書き付けた譜面を先生が目の間で実際にピアノで演奏してくださるのである。これは譜面とはどう書かれなければいけないのかを知り理解する上で非常に勉強になった。(続く)
昨晩は残業仕事があり、終わってから大慌てで支度してペダル漕ぎ漕ぎ東京芸術劇場へ向かった。お目当ては、これが多分今年の正真正銘聞き納めとなる、中央大学管弦楽団記念演奏会。チケットプレゼント企画に応募して運良く有り難くチケットを頂いていたのもあるが、中央大学管弦楽団といえば、学生さんのオーケストラながら何年か前のやはり12月にミューザ川崎で素晴らしいマーラー5番を聴かせて頂いた記憶が今だに鮮明。ホールに着くと、前半のチャイコフスキー眠りの森の美女ワルツとブラームス交響曲第一番が終わったところの休憩時間だった。急いで着席し、後半のチャイコフスキー交響曲第五番を堪能。管楽器の方々が物凄く巧くて、とりわけ第2楽章の冒頭主題を甘やかに凛々しく堂々と吹かれたホルンの方が出色。とにかく心が洗われて感動感激の一夜になりました。ありがとうございました。
今朝は透き通るような響きのオーケストラが胸奥で流れたので、取り敢えずメモしてみた。